環境汚染や大量廃棄など、アパレル業界が大きな課題に直面している。服の製造によって排出されるCO2の量や、製造の過程で必要な大量の水。さらに、ファストファッションの台頭で、服が使い捨てされる大量廃棄の問題もある。毎年世界中のアパレル業界から出るゴミの量は9200万トンに上り、日本だけでも、毎日大型トラックおよそ130台分の衣服がゴミとして廃棄されている(データ出典:国連貿易開発会議より)。
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環境を守るために、私たちは日々何をどのように意識して服を選ぶべきなのだろうか。そんな中、注目を集めているのが「サステナブルファッション」だ。サステナブルファッションは、生産から廃棄までのプロセスにおいて、地球環境や労働者に配慮し、持続可能な世界を目指す取り組み(Sustainable Development Goals ※SDGs)の1つだ。この取り組みについて、ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家と共に議論を行った。
■ SDGsで変わる? 注目集まる「サステナブルファッション」
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は、環境に配慮するのであれば「新しいものを買わないで同じ服を着続ければいい」と話す。
「自分が着れなくなったら他人にあげる。逆に他人から着れなくなった服をもらう。それで十分回せる。環境を考えるなら、そうするべき。環境を守ると言いながら、服を買ったり売ったりするのは、なぜなのだろうと思っている」
一般社団法人ユニステップスの共同代表で環境省のアンバサダーも務めている、鎌田安里紗氏も「環境にやさしい服として売られていても、まず作るときに何かしらの負荷はかかっている」と語る。
「その負荷がどのくらいのものなのか。自然環境だけでなく、労働環境といったさまざまな問題が把握しきれていない。この不透明さが業界の一番の課題だと思う。ファッション産業は非常にサプライチェーンが長く、複雑だ。皆さんが今着ている服も、原材料をどのような人が育てているのか。どのような環境で働いているか。これらはなかなか買う段階では見えない。その不透明さを改善していくことが、まずは重要だと思う」
一方で、事業再生コンサルタントの河合拓氏は「もう人が毎シーズン服を買い替える時代ではない」と述べる。
「例えば車でも、買い替えるときに新車を二次流通させる市場がある。ところが服は二次流通市場がない。だから、商社やアパレル会社が売りっぱなしになっていて、とにかく売る。結果、廃棄問題が生まれる。だったら、生産量を半分にして、商社から買って再プレスすればいいのに。日本の補修技術は世界一だから再プレスして売ればいい。だから私は二次流通市場を提唱している」
河合氏の説明を聞いたひろゆき氏は「僕は今フランスのパリに住んでいるが、うちの近所だと昔のシャネルのスーツなどは、中古品が補修されていて、10万円くらいで買える市場ができている」とコメント。その上で「フランスでは昔からのいい製品を直して売っている中古服屋があるのに、日本はなぜ消滅したのか」と疑問を投げかけた。
河合氏は「あまり大きい声では言えない」と前置きし、「売った数で出世が決まるような会社があるからだ」と回答。
「結局そういう会社が中間流通にいると、さきほどの話のように『とにかく売れ』といった発想になる。結局、調達量を半分にした瞬間、中間流通や工場が回らなくなるなどの問題が出てきてしまう」
世界では、ケリング・グループやシャネル、ナイキなどのトップブランドが環境負荷軽減に向けた「ファッション協定」を発表。2050年までにCO2の排出量をゼロにする目標を掲げている。
いまや多くのブランドが環境に配慮した取り組みや、労働者の環境改善を打ち出しているが、注意すべきは「グリーンウォッシュ」だ。グリーンウォッシュとは、うわべだけのエコを謳うマーケティングで、例えば「リサイクル素材使用」と銘打ちながらも、リサイクル素材はプロダクト全体のほんの一部しか使われていなかったり、「自然素材をたっぷり配合」と表記しておきながら、オーガニック比率や全原料の詳細は非公開といった手法である。
実際、アパレル業界にグリーンウォッシングを行うブランドはどれくらいあるのだろうか。河合氏は「正確には把握できない」とした上で、業者同士の“蜜月の関係”に言及。
「生産工程では、服の切れ端のようなものを検査する。本来は検査に出して、成分を調べる。ただ、ずっと細かくやっていると、ビジネスとしてスピードが遅くなってしまう。あるいはその検査に引っかかった場合、供給業者などが大きなダメージを受ける。癒着まではいかないが、現実的には検査業者と供給業者がわりと甘くなってしまっている。例えば、過去に偽のカシミアが売りに出された問題もあった。実態は、服を売るための“蜜月の関係”がある」
国際的にも環境の負荷が指摘されているファッション業界。考える問題はまだまだたくさんありそうだ。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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