テレビでも新たなテロップ、直ちに身を守るための行動を… 甚大な被害もたらす「線状降水帯」への対応進む
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 気象庁は先週から、同じ地域に長時間にわたって大雨をもたらす「線状降水帯」の発生や動きのリアルタイム発信をスタートさせた。こうした情報を我々はどのように活用すればいいのか。テレビ朝日社会部の川崎豊記者に話を聞いた。

・【映像】命を守る「線状降水帯の情報」活用法は?

■「取材していて恐ろしくなるような雨量が続く」

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 気象の世界でも2000年ごろから使われ始めた比較的新しい用語で、実は英語圏でも「Senjo-kousuitai」と表記されている。テレビ朝日のライブラリーで調べてみたところ、最初に「線状降水帯」でヒットしてきたのは2012年のニュースだった。各地で甚大な被害をもたらすものなので、これをどう捉えるのかが喫緊の課題になっていた。

 一方、予測が非常に難しく、どこに現れるかわからないということもあり、専門家の間でも明確な定義が定まっていなかった。気象庁では次々と発生する雨雲が長さ50~300km、幅20~50km程度の規模で列をなしてほぼ同じところにかかり続け、強い雨が伴うものを線状降水帯と呼んでいた。

■「テレビでも新しいテロップが出るように」

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 気象庁は今まで、大雨の後に「この大雨は実は線状降水帯によってもたらされたものだった」と発表をしてきたが、今回、そこから一歩進んで、「今まさに線状降水帯が発生しています」とリアルタイムで伝えられるようにした。

 具体的には、(1)解析雨量で3時間の積算雨量が100mm以上の面積が500平方キロ以上であること、(2)その形状が線状であること、(3)気象庁のHPでみられるキキクルという危険度分布が基準を超えたことなどの条件に当てはまったときに「顕著な大雨に関する情報」という情報を出し、「XX地方では線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています」というような文言を使って警戒を呼び掛けることになっている。

 この情報は気象庁のHPでも見られ、視覚的にわかりやすくするため、レーダー画面に楕円で線状降水帯に該当する部分が囲まれるようになる。気象庁のHP自体、2月にリニューアルしていて、住んでいる地域に合わせて表示させる情報もカスタマイズできるようになっている。また、テレビ朝日でも「線状降水帯による非常に激しい雨 XX地方(県) 気象庁」というようなテロップが出ることになる。

■「情報が出た時点で、災害発生の危険が高まっている状況」

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 一方、気象庁では「大雨警報」「特別警報」「氾濫危険情報」などたくさんの情報を発信しているが、この「顕著な大雨に関する情報」は5段階ある警戒レベルの中でもレベル4相当以上に当たる。警戒レベル4は自治体が避難指示を発令する目安である一方、すでにかなりの量の雨が降ってしまっているという状況であることも予想され、逃げるのは難しいのではないかとの懸念も専門家からは出ていた。

 このシステムを開発した防災科研の清水慎吾研究統括は「最後の避難スイッチを押す情報にしてほしい」と話していた。避難所に向かうのが危険な状態も考えられ、例えば1階にいるのであれば2階に、家の裏に山があれば少しでも離れた部屋に、隣により頑丈な家があればそちらに移るなど、適切な身を守るための行動を直ちにとってほしい。

■「発生の要因も少しずつ明らかに」

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 今回、線状降水帯の発生をリアルタイムで発信することになったが、予測についても急ピッチで研究が行われていて、発生の要因も少しずつ明らかになってきている。

 地上から1000mほどの大気の下層に大量の水蒸気が入ることが発生要因のひとつであることが分かってきたため、これを観測する試みが行われている。人工衛星では大雨に時の地上付近の水蒸気を正確にはなかなか観測できないため、地上側から観測する「水蒸気ライダー」の展開が九州、さらに関東でも始まっている。また各地のアメダス等に新たに湿度計を設置したり、気象庁の観測船が九州の西側の東シナ海に展開し、水蒸気の観測などを行っている。

 九州の一部自治体では、これらのリアルタイムのデータを雨の予想に活かし、2時間前に線状降水帯の発生を予測する取り組みが始まっている。気象庁では、来年2022年内に、半日前に出せるような線状降水帯の予報を目指している。(ABEMA倍速ニュース」より)

命を守る「線状降水帯の情報」活用法は?
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