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 1995年にデビューし、キャリア25年以上になる藤木直人が映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』(6月25日公開)で俳優人生初めてのロボット役に挑戦している。

 舞台は90年代要素が散りばめられた1995年。科学者の宗一郎(山﨑賢人)は人生を賭けた研究の完成を目前に、罠に嵌められ冷凍睡眠されてしまう。彼が再び目を覚ますと、そこに広がっていたのは30年後の2025年の世界。宗一郎は藤木演じる人間そっくりなロボットの力を借り、未来を変えるため動き出していくーー。

 インタビューに応じた藤木は、今回の出演への思いを包み隠さず吐露。しかしその実直さからは真摯な人柄が滲み出ており、長年第一線で活躍し続けている理由がよくわかる。デビュー当時のエピソードには思わず微笑ましい気持ちになるだろう。

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俳優人生初のロボット役に当初は戸惑いも

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――本作への出演が決まった時の率直な気持ちを教えてください。

藤木:人間以外の役でオファーが来るなんて思っていなかったのでびっくりしました。当たり前ですが、これまで人間役しかやったことがなかったので。

――オファーをもらってから出演すると決意するまで迷いはなかったのでしょうか?

藤木:最初話を聞いたときは驚きました。やっぱりロボットと言っても色んな種類があるし、役へのアプローチも難しいだろうなと思って。

――でも最終的にはオファーを受けられたんですね。

藤木:賢人くんとは前にもお仕事をさせていただいて、それで今回も一緒にやりたいなと思ったのが理由です。それと僕が演じるロボットはどうやら人間っぽい設定だとマネージャーから伝え聞いて、それならアプローチできそうかなと思い、監督に会いに行きました。そしたらその場にロボットパフォーマーの方が2人いらっしゃって、「これがロボットの動きです」って見せてくれたんです(笑)。だから、自分なりにどんなロボットにしようかなとイメージをしつつ、監督とのディスカッションも交えて挑戦していくことを決意しました。

――映画ではどの動作も一定のペースが保たれ、良い意味で人間味を感じない演技に驚きました。そういった動きはロボットパフォーマーの方から教わったのでしょうか?

藤木:いえ、教わってないです(笑)。役作りは自分なりにロボットの動くメカニズムを想像して、演技に活かしていく感じでした。例えば人間だったらお辞儀をする際、あらゆる関節が動くけど、ロボットだったら動作も一定じゃないですか? そういうのは色々考えながらやっていました。

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――現場での共演者の方とのエピソードも気になります。

藤木:今回は映画ということでドラマよりも待ち時間が多くて、そこで賢人くんが鉄の棒を振っていたのが印象的でした。どうやら次の作品のために体を鍛えているらしくて、僕はそれを見て「これって科学者にはいらない筋肉じゃん?」なんてつっこんでました(笑)。ちなみにその鉄の棒を持たせてもらったらめちゃくちゃ重かったです。

――逆に映画のなかでは藤木さんがものすごく軽々と山﨑さんを持ち上げるシーンがありましたよね?

藤木:物語自体はSFなんですが、実は撮り方に関してはすごくアナログで。あのシーンも賢人くんがクレーンに乗りながら彼自身にもちょっと浮いてもらうみたいな撮り方でしたね。ハリウッドとかでよくあるような、グリーンバックを使って撮影みたいなのはほとんどなかったです。

――そうだったんですか! 他にも近未来的なシーンがいくつか出てくるのでアナログな

撮り方をしていたのは意外でした。

藤木:ちなみに僕の背中がパカッと開くシーンは、本当に開けてないですよ(笑)。 当たり前ですけどあれは後でCGを入れて、現場では普通に撮っていました。近未来的な景色も後から入れる感じだったので、全部が繋がった映像を見た時は「お、S Fっぽい」って感動しました。

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――藤木さんにとって今回の映画はどのような作品になりましたか?

藤木:初めてのロボット役だったので正直、公開になるのが怖い思いもあります。

――逆に観客の反応が楽しみな気持ちはありますか?

藤木:いやいやいや…不安しかないです。ただ、オファーを引き受けた以上、やり遂げなきゃプロじゃないと思うので、みんなの足を引っ張らないように全力でやらせていただいたつもりです。でも、一生懸命やっただけじゃ作品の評価に繋がらないし、いかにお客さんの期待に応えられるかが俳優として大事じゃないですか。そういう意味ではこの作品に限らず、常に悩みながら役と向き合っています。

1995年に戻るなら「中身だけ入れ替わって僕が当時の役を演じたい」

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――物語のように1995年に戻ったらどんなことをしてみたいですか?

藤木:1995年って僕がデビューした年なんですよ。もうすぐデビューしてから30年になるんだと考えるとちょっとゾッとします。なんせ本当に何も知らずにこの世界に飛び込んだので…。だから、もし1995年に行けるんだとしたら、中身だけ入れ替わって僕が当時の役を演じたいかな。外見はおっさんになっているので、中身だけ入れ替わりたいです(笑)。

――視聴者的には藤木さんはずっとかっこ良さをキープしているイメージですが…?

藤木:いやいや(笑)。僕がMCを務めている『おしゃれイズム』も今年で16年になり、何回か登場しているゲストの方も多いんです。それで過去の映像が流れるとMCの変わりっぷりに愕然としちゃいますもん。まあ上田(晋也)さんが1番変わったなとは思うけど、自分も全然違くて「うわぁ~」となります(笑)。

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――では1995年に戻って当時の自分に声を掛けるなら?

藤木:いや~どう声を掛けたって変わらないですよ(笑)。だって当時だって色んな人からのアドバイスをもらっていたと思うけど、わからない時ってわからないじゃないですか? そういうのって何年後かに「こういうことだったんだ」って理解できるものだし。振り返るとデビュー当時の自分の無知さ加減が本当に恥ずかしいです。でも、何も知らなかったからこそこの世界に飛び込めたのも事実なんですよね。

――映画では2025年も描かれていますが、4年先の未来ではどうなっていたいですか?

藤木:とりあえずこの仕事をまだ続けられていたら良いな(笑)。あと、大人になると年を重ねるスパンが短く感じるけど、自分の子供たちにとっての4年間ってすごく大きいと思うんです。4年後となると1番下の子でも小3、1番上の子なんて大学1年だし、そう考えると見たいような、見たくないような…(笑)。とりあえず平和な藤木家でいてほしいです。

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取材・文:近藤加奈子

写真:藤木裕之

映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』徹底検証スペシャル
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