王国・ブラジルにとって、追加された“10分”は勝負を決めるために十分な時間だった。
6月24日に行われた南米選手権「コパ・アメリカ2021」グループ第4節ブラジルvsコロンビアでは、異例ともいえるアディショナルタイム10分が試合の勝敗を分けることになった。
すでにグループステージ突破を決めている前回大会王者のブラジルは、試合開始10分で大会における初失点を喫する。右サイドからのクロスボールを、ルイス・ディアスにバイシクルシュートで叩き込まれた。
今大会のベストゴールに選出されてもおかしくないスーペル・ゴラッソを許したことで、ブラジルは目を覚ます。すると77分にロベルト・フィルミーノのゴールで同点に追いついたのだ。振り返ると、すでにこの場面が伏線だったのかもしれない──。
ゴールが生まれる前のシーンで、ネイマールが出したパスが主審に当たったことで、コロンビアの選手たちは一瞬足が止まってしまった。納得がいかない形での失点に選手たちは主審に詰め寄り、VARでゴールが認められた後もさらに抗議を続けた。
フィルミーノのゴールが生まれてからコロンビアの抗議を終えるまで、およそ6分もの間試合が止まっていた。そして迎えた90分、アシスタントレフェリーが掲げたアディショナルタイムを示すボードに記された数字は“10”。異例の長さに実況も思わず「え!?10分??」という驚きの声をあげた。
迎えた99分、右コーナーキックからエースのネイマールがピンポイントであげたボールに、ニアサイドでカゼミロがヘディングで合わせ逆転に成功。この得点が決勝点となり102分に終了のホイッスルが吹かれ、ブラジルが開幕から3連勝でグループ首位をキープした。
結果論ではあるが、アディショナルタイムの“10分”は、ブラジルにとって逆転ゴールを生み出すために十分な時間だったことになる。相手の隙を見逃さず、しっかりと勝ち切るブラジルはさすがの試合巧者であり、連覇に向けて死角は見当たらない。
文・渡邉知晃