まさしく1人舞台だった。コパ・アメリカの最終戦に臨んだアルゼンチン代表はリオネル・メッシが4得点全てに絡む圧巻の活躍で4-1でボリビア代表を一蹴した。
記念すべき日を自分の左足で祝った。アルゼンチン代表として148試合目の出場となったメッシは、ハビエル・マスケラーノの持つ通算147試合を抜いて、歴代最多出場記録を樹立した。
1点目が生まれたのは6分、ペナルティーエリアの手前でパスを受けたメッシが、振り向き様に浮き球でDFラインの背後に落とす。これをアレハンドロ・ゴメスがボレーで叩き込んだ。
ABEMAで解説を担当した粕谷秀樹氏が「メッシに3人引きつけられているので誰かが空いてしまう」と話したように、ボリビア守備陣はメッシにシュートを打たせないように3人がかりでコースをふさいでいた。
だが、普通の人には見えないようなコースがメッシには見えていた。目の前にいるDFとDFの間にある、わずか30センチほどの隙間を狙ってパス。針の穴を通すという表現がピッタリと合うようなスーパーアシストだった。
33分にメッシがPKを決めて2-0とすると、その10分後には再びメッシのゴールで3点目。GKとの1対1で冷静にワンタッチでループを狙ったメッシの技術も見事だったが、1対1を作り出したのは“ボールがないところでの動き”にも注目したい。
パスが出てくる3秒前まで、メッシはボリビアのDFライン付近をゆったりと“お散歩”していた。ボリビアのDFも近くにいたが、まだ警戒モードにはなっていない。だが、セルヒオ・アグエロがパスを受けて前を向いた瞬間、突然スイッチが入った。
メッシはボール方向にステップを踏んで、ボリビアのDFに「足元でパスを受けようとしている」と思わせてから一気に方向転換。ゴール方向に向かって走り出し、DFのマークを鮮やかに振り切った。
65分にはメッシがドリブルで運んで相手を引きつけてからサイドに出したパスを起点にして、ラウタロ・マルティネスが4点目。90分フル出場するとともに、4ゴール全てに絡んだメッシの働きは、まさしく“無双”だった。
文・北健一郎