京都府立医科大学などの研究チームが発表した、座っている時間と死亡率に関する調査。日中の座っている時間が2時間増えるごとに、死亡率が15%増加するという結果が報告された。
その因果関係について、京都府立医科大学の小山晃英講師に聞いた。
「座っているというのは、“体を使っていない”“立っていない”“歩いていない”という状況なので、足または骨格の動き方、筋肉というものが使われていない状態。座ることによって圧負荷がかかるので、座っている部分の血管がぺたんと閉じてしまって血流を阻害する。なので、座っていることは“血流の阻害”“筋肉を動かさない”、この2つが体に大きく影響を与えると思う」
今回の研究は、調査対象者を一定期間観察し、病気の要因と発症の関連を調べるコホート研究という手法を採用。6万人を超える日本人を平均7.7年間追跡した、J-MICC STUDYというコホート研究を行う団体の研究データから、座っている時間と死亡率の関係性を分析した。
座っている時間が増えるごとに死亡率が増加すると聞くと、原因として思い浮かぶのは単純な運動不足。そこで今回の調査では、余暇時間の運動量ごとのデータもまとめられた。
グラフを見ると、一番運動量の少ないQ1のグループで高血圧、糖尿病の死亡率が高くなっている。しかし、Q2からQ4まで、運動量が多くなってもあまりグラフに差が出ていないことがわかる。つまり、運動量を増やしても、座っている時間による死亡率の減少効果は薄い可能性があるということだ。
「一番伝えたいメッセージとしては、今回の結果は運動を否定するものではない。体の痛みとかがない限りは、運動するというのは健康増進にはとてもプラスになる。一方で、運動しているから座位時間が伸びても大丈夫というわけではなくて、運動の効果を座位時間の影響が上回ってしまう、強く出てしまうということが今回の結果でも明らかになっているし、これまでの海外の論文でも明らかになっている。運動することと座っている時間は別と考えていただいて、もちろん運動は運動で推奨する。座っている時間をいかに減らしていくのか、または座っている時間の工夫だ」
そもそも、他の国に比べて座っている時間が長いと報告されている日本。在宅勤務が増えたコロナ禍における状況について3万人を対象に調査を行ったところ、デスクワークや営業職で座っている時間が2時間以上伸びたという人が非常に増えているという。仕事と向き合う時間を減らすことは難しい人が、リスクを減らすためにできることはないのだろうか。
「スタンディングデスクの導入。これは私も使っているのですが、立ちたい時に立って座りたい時に座るというデスク。上げ下げができるのは、ひとつ有効な手段かなと思う。はたまた負荷がかかるという意味では、こんなダンベルとか、ベルト付きのやつを足に付けて上げ下げしてもらうとか。そうすると座っている最中でも筋肉等を使うような刺激になるので、そのような工夫を取り入れていただきたいと思う」
さらに、もう少し手軽な方法についても聞いてみた。
「まだエビデンスが確立されているわけではないので、(座位時間を)中断したらOKですとは言い切れない。ただ、仮に座位時間が長くても、こまめに中断していると健康への悪影響が減っているというような報告もいくつか出てきているので、まだ完璧なエビデンスはないが、まず最初に注目して取り入れてもいいのではないか」
この記事の画像一覧





