コロナ禍で当たり前になったマスクについて、とある研究結果が発表された。
北海道大学大学院などの研究グループがマスク装着によって顔の魅力に及ぼす効果を検証したところ、もともとの魅力が高い人がマスクを装着すると「見た目の魅力は低下」し、逆にもともとの魅力が低い人は「魅力が向上して見える」ことが判明したという。
要因として、マスクをつけることで左右のバランスや肌の状態が隠れるため、もとの魅力が高い人は隠すことがマイナスに、もとの魅力が低い人は隠すことがプラスに働くという。また、以前はマスクをつけることに不健康な印象があったが、コロナ禍で当たり前になり、そうしたイメージが消失したことも影響しているということだ。
この研究結果に対して、明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「人の顔の魅力は主観。これはあくまでも実験により、参加者個人の印象評定で高い人・低い人を分けたんだと思う。ただ、今はマスクをつけるのが当たり前になっていて、不健康なイメージは本当になくなった。顔の一部とまでは言わないが、マスクが自然になったのはその通りだと思う」と話す。
また、マスクで隠れている部分について、人は無意識に想像してしまうものだと指摘。その想像の中では、人々の経験や記憶にある、自分にとって魅力的に思う“かっこいい”“美人”といったイメージが反映されやすいという。藤井氏は「今回の研究結果の一部で、いわゆる“マスク美人”の存在が裏付けられたとも考えられる」とした。
ちなみに心理学上、魅力的な顔とされるのは世界中の人の“平均の顔”だという。「鼻が高い・低い、肌の色、目の大きさ、口の大きさ。それらが平均に近づけば近づくほど、一般的には魅力的に感じられたり、‘‘整っている’’と受け取られると考えられている。その理由の一つとしては、不快と感じられる顔のパーツの影響が薄められることに加えて、自分に似た部分があると認識されやすくなり、愛着や親しみを持ちやすいことが指摘されている。もちろん人の好みはバラバラなので、平均と比べたら偏ったパーツを持っている人を魅力的に感じる人もいるが、それは少数派といえる」。
では、マスクが当たり前になったことで、逆に「もう外せない」という人も出てくるのだろうか。藤井氏は「女性はメイクが簡易になっている場合があるだろうし、男性もヒゲの手入れなどマスクがない時ほど整えていなかったりする。心理学でいわゆる醜形恐怖といって、自分の見た目についての自信が過度になく不安や恐怖を抱えてしまう場合はあるが、一般的なレベルで言えば、ちょっとマスクを取るのが嫌だと思っても、それは最初だけかなという気もする。一度取ってしまって何日間か過ごせば、そんなに抵抗感がなくなっていくのは人の心理としては当然の流れかなと思う。慣れるまでの個人差はあれど、多くの人は環境にその都度馴化していく」と述べた。
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