先月29日、大手広告会社の電通が東京・港区にある本社ビル売却の検討を明らかにした。売却先は明らかされていないが、売却額は数千億円規模になるとみられている。売却で得られた資金は今後の事業に充てるという。また、売却後は賃貸契約を結び、本社は移転しない方針を示している。
こうした自社ビルの売却を巡る動きは他の企業でも起こっている。去年12月、大手レコード会社のエイベックスは東京・港区南青山の本社ビル売却を発表。この売却で、新型コロナウイルスの影響によって悪化した業績の立て直しにつなげる狙いがあるとみられている。
エイベックスは売却後も同ビルを賃貸し、本社を置くとしていたが、先月、港区三田のオフィスへの移転を発表。エイベックスは今後の社員の働き方について「オフィスワークとリモートワークのほか、サテライトオフィス活用の検討も進め、これまで以上に業務に応じた最適な働き方を推進し、社員一人一人がパフォーマンスを最大化できる環境を整えていく」としている。
また旅行会社のHISでも先月、東京都内のビルに入った本社の不動産を売却すると発表。手元資金を確保し、財政基盤の安定化を狙っているといった見方もある。
新型コロナウイルスの影響もあり「時間や場所を選ばない働き方」が当たり前になったいま、一連の動きに対し、ネット上でも「コロナ禍の今では、明日は我が身と思わないといけない」「テレワークや働き方改革が謳われる昨今、好立地な立派なビルに皆が集まって仕事をするということにどれだけの価値があるのかが問われている様な気がする」など、さまざまな意見が出ている。
相次ぐ大企業の本社ビル売却について、ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した新規事業&イノベーションのコンサルタントとして活躍する建築家・サリー楓氏は「コロナ禍で今年は広告・イベント業界で苦しい状況が続いている。一時的に不動産を売却してキャッシュを得ることで、事業の転換や新しい事業のための資金として確保するといった動きだと思う」とコメント。その上で、同じ値段で買い戻せないリスクに言及する。
「一度売ってしまうと、後々また同じ値段で買い戻せるかはわからない。それなりのリスクがあるので、大きな決断だ。一方で、コロナ禍によってリモートワークが推進されて、遠隔で勤務できるテレワークやワーケーションなど、新しい働き方にも注目が集まっている。働き方が変わったことで『オフィスの面積はそれほど要らない』と決断した会社もあるだろう」
また、サリー氏は本社ビル売却を決めた電通グループについて「働き方の変化を期にオフィスを整理することはポジティブな側面もある。売却したうちの何割を本社ビルとして借りるのか、今までと比較してどれくらいの規模に圧縮されるのかに着目している」と話す。電通では新型コロナウイルスの影響や働き方改革のため、去年2月から社員のリモートワークを開始。現在では社員の出社率を2割以下に抑えているが、本社ビル売却がどのような変化をもたらすのか。企業の動きに注目が集まっている。
(ABEMA『ABEMAヒルズ』より)
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