日本人数学者が“カリブの楽園”でマジックショー? “コロンブス勲章”を初受章
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 青い空に青い海――“カリブの楽園”と呼ばれるドミニカ共和国。日本から1万キロ以上離れたこの地で、一人の日本人が偉大な賞を受章した。

【映像】長髪&バンダナ姿で教壇に立つ数学者・秋山仁さん(授業の様子)

 先月、ドミニカ共和国において学問や芸術など、さまざまな分野における多大な貢献が認められた人に授与される「クリストファー・コロンブス勲章」を東京理科大学の特任副学長・秋山仁さんが日本人として初めて受章した。

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、受章まもない秋山さんを取材。「驚愕してると同時に、とても光栄であり、かつ少し真面目に頑張らなきゃいけないなと思ってます」と、受章への驚きと意気込みを語った。

 長い髪にバンダナ姿で“異色の数学者”として、日本のテレビ番組でもおなじみだった秋山さん。現在は黒髪にイメージチェンジしている。秋山さんの専門は「グラフ理論」や「離散幾何学」だが、算数や数学の楽しさと有用性を伝えるために、敷居を下げ、約30年前から世界各地の子どもたちや先生に普及活動を行ってきた。

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 秋山さんは、2017年に駐ドミニカ共和国日本国大使から「ドミニカで数学を盛んにしてほしい」という依頼を受け快諾。ドミニカへ渡った。

「快諾して『すぐ行きます』と言いました。ドミニカも、算数や数学というと、多くの子どもが小難しい計算や技能といった風に思っていた。それを『そういうものじゃないんだよ。とってもこんなに面白くて、こんなに役に立つんだよ』と、ちょっとずつ話す。ドミニカのいろいろな場所に行って講演をしました」

 算数や数学の面白さを伝えるために、現地のスタッフらと共にドミニカ各地をキャラバンでまわった秋山さん。子どもたちや先生に向けて授業を行う中、ドミニカという国ならではの難しさも感じたという。

「日本と違って、ドミニカでは算数や数学はどうでもいい科目なんです。向こうのメインは野球やサッカー、サルサ、踊り、歌などの芸術がとてもポピュラーで、まずその意識を変えていこうと思いました。算数や数学は、世の中や人のためにとても役に立つものだと。啓発活動と言いますか、それがけっこう大変でした」

 経済協力開発機構(OECD)が行った調査によると、調査を行った72カ国中、ドミニカ共和国は15歳以下の生活満足度が1位だったのに対し、3年ごとに実施されるOECDの学力調査では、数学的リテラシーが2回連続で最下位だった。

 「あくまで勉強は片手間」。そんな子供たちの意識を変えるところから、秋山さんは着手した。

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「テレビに出て『こんなに数学って面白いんだぞ』と演じてやりました。数学の理論に裏付けされたマジックをたくさん子どもたちにプレゼントした。そうすると、子どもたちが『わーっ!』と喜んでくれる。『どうして? どうして?』と、聞く耳を立ててくるから、そのときに『こういう理由だよ』と説明する。『作曲には数学の概念が必要なんだよ』や『野球でホームランを打つためにはこうやって振らなきゃいけないよ』とか。彼らが関心をもっていることをテーマに『実は背後に数学がたくさんあるんだ』と教える戦略も使いました」

 ドミニカのテレビ番組に出演して授業を行ったり、マジックショーを開催したりと子どもたちが勉強に興味を持ってくれるところから始めた秋山さん。去年にはドミニカの首都、サントドミンゴに数学体験館を設立した。そこで働く職員たちも、秋山さんたちが教育に携わっているという。

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 こうした取り組みの結果、ドミニカの子どもたちが数学や算数に対し、より理解を持つようになったと評価され、今回のクリストファー・コロンブス勲章の受章につながった。

「自主性、自発的に学ばせるためには、彼らが『なぜ? どうして?』といった好奇心を抱かせることが重要でした。自分の好奇心から始まって、自発的に不思議を解明しようとする。不思議が解明できて、それがいろいろなことに応用できたり、発展したりすると、それが子どもたちにとって、喜びにつながる。そして『もっと面白いものが何かないかな?』ときょろきょろ探す。それが大切なんです」

 世界中をまわり、子どもたちに勉強を教えてきた秋山さんは、日本の教育の現状について「非常に優秀な国」とした上で社会の構造全体の課題を指摘する。

「応用力や柔軟性があまり育まれていないと思う。それは、社会の構造全体と関係してくる。数学や物理、サイエンス、それからテクノロジー、こういう力が落ちてくると、日本はそういうもので優位に立っていた国なのに、それがだんだん低下している。結果として日本が低迷してきてしまう」

 そして、これからの教育には不易流行、いつまでも変わらないものの中に新しい変化を取り入れていくことが重要だという。

「時代の流れと共に変革すべきは変革して、継続すべきことは断固継続すべき。教育においては流行と不易、決して変えてはいけない不易と、そのときの社会や人間の流れを見ながら変えなくてはいけないこともあると思っております」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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