ワクチン接種で目指す集団免疫の獲得…「他の人が打つからいいでしょ」の“フリーライダー”を増やさないためには
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 “ワクチン先進国”のアメリカで、新型コロナウイルスのワクチン接種のペースが想定よりも鈍化しているという。7月4日の独立記念日までに成人の7割が接種を終えるとの目標に届かなかったことを受け、バイデン大統領は「いま私がこうして話している間にも、何百万もの国民が接種を受けておらず無防備な状態だ。きちんと接種を受けたアメリカ人は高い防御力を得た」と国民に訴えた。

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 一定の割合以上の人が免疫を持つことで、感染拡大を防ぐ“集団免疫”を獲得する意味もあるワクチン接種。しかしまれに起きる副反応などへの懸念から、接種に慎重な姿勢を示す人は日本国内にも少なくない。

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 こうした状況を受け、『ニューズウィーク日本版』に『コロナワクチン効果の「ただ乗り問題」にご用心』と題するコラムを寄稿したのが、米国出身のお笑いタレント・パックンだ。

 「“ただ乗り”は英語で“フリーライダー”という。例えば乗客のうち1人、2人が運賃を払っていなかったとしても、あとの全員が払っているから電車は走ることができる。教室で1人、2人の生徒が掃除をサボっていても、あとの生徒がやってくれるから、綺麗な環境で教育が受けられる。しかし、同じことを全員がしたらどうなるだろうか。この、“誰かが払ってくれるから、誰かがやってくれるから自分はいいでしょ”、というのを税金や公的サービスに当てはめた“フリーライダー”の問題がアメリカではよく議論される。これがコロナワクチンの接種についても言えるのではないか、ということだ。

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 たしかに緊急事態の中で急いで開発されたワクチンなので、10年後、20年後のリスクがゼロだとは誰も断言はできない。そして8割くらいの方が打つことで、2割の打っていない人も集団免疫に守られることになる。だったら私は打たない、みんなが打てば大丈夫じゃんと。これも一つの判断かもしれない。しかし有事に前線で戦っている方がいる中で、家にいて何もやってない方はやはり批判に曝されると思うし、不安だからといって、みんなが打たなくなれば、また緊急事態宣言が発出されることになるかもしれないし、子どもたちがキャンプに行けないという状況も続くかも知れない。

 もし国民全員が“ワクチンの効果や副反応も含めて全て検証できるまで10年待とう”と思うのであれば、それも仕方ない。ただ、それまでの間は緊急事態宣言の中で暮らすことになる。しかしそれは望まないという方がほとんどだと思うし、それならリスクを負ってみんなを守るという選択肢を僕は選ぶ。もし打たないという選択肢を選ぶなら、代わりに感染予防を徹底するような生き方を続けていただきたい」。

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 慶應義塾大学特別招聘教授でKADOKAWA社長の夏野剛氏は「日本では新しいものに対する陰謀論みたいなものが流行りやすいし、メディアもHPVワクチンの接種率を下げてしまったことを未だに反省していない。フリーライダーというのは、1割か2割の人しかなれないわけで、もしインフルエンサーがフリーライダーになった結果、5割がそうなってしまったらどうなるのか。それがわからない人はメディアに出る仕事をやめて、一人でやっていてほしい。新型コロナウイルスについては副作用の発生率や死亡率がそんなに高くないということは統計的に分かっているわけで、そこに対して否定的な意見を言うような人は、少なくとも人々の支持やサポートを受けて成り立つような仕事はやめるべきだと思う」と厳しく指摘した。

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 医療ジャーナリストで広島大学医学部客員准教授の市川衛氏は「ワクチンというのは、打つことで現在よりも健康になるわけではない一方、副反応のリスクがゼロではないということで、通常の医療行為に比べて“損失回避”が起きやすい。これは何かを得るより何かを失うかもしれないことの方を強く感じる人間の特質でもある。だから心配するということ事態を恥じる必要は全くない。それでも社会のためには打たないといけないということであれば、そうした心配をどうやって受け入れてもらい、自分も打とうと思ってもらえるか、その工夫をしていく必要がある。

 パックンさんや夏野さんにお伝えしたいのは、不安をお持ちの方に“打ちなさい”と説得すると、もっと打ちたくなくなるという研究結果があるということだ。じっくり考えていいし、その間に知識を得られたり、副反応のデータが出てきたりすることで、“これなら大丈夫そうだな”と思えるようになるかもしれない。そうなってから打つということでも、僕は間に合うんじゃないないかと考えている」と話した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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