ノルウェー議会が可決した“ある法案”に、ネット上でさまざまな意見が寄せられている。
【映像】“美の基準”が若者のいじめや拒食症に? ノルウェーの街を歩く人々
イギリスの公共放送「BBC」によると、ノルウェー議会は先月、インフルエンサーや企業がSNSに広告や商業目的で加工を施した画像を投稿する際に、加工済みと示すラベル付けを義務化した。施行時期は未定だが、今後は身体の形や大きさ、肌などが修正された投稿はラベル付けが必須になるという。
大差で可決された“加工写真”へのラベル付け法案。法改正の背景には何があるのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、ノルウェー在住の日本人・吉川貴晃さんを取材した。
「SNSなどを通じて、非現実的なレベルまで引き上げられたボディプレッシャーから『若者を保護する必要がある』と以前から言われていた。ようやくそれが今回の法律改正によって効力を持っていくだろうと、歓迎されている印象がある」(吉川貴晃さん・以下同)
一方で、本当に法律で若者へのボディプレッシャーが解決できるのか、疑問の声もある。
「もともと解決したかったボディプレッシャーの問題が本当に今回の法律改正で解決できるか、効力に対して疑問の声はあった。ラベルを付けられたところで、それを見た人が本当に『私はボディプレッシャーを感じなくていいんだ』と思えるか。法律改正の実力がどれくらいあるか、今後注目されていくだろう」
SNSに投稿される、非現実的なまでに「完璧な体」。いわゆる“細い体”に価値を見出してしまい、若者が『自分もそうなりたい』と思っているうちに拒食症に陥る危険もある。これが「規制の必要性を訴えかける声につながっている」と吉川さんは話す。
「この問題は新型コロナの前からあった。若者の人口の大半が当たり前のようにInstagramを使うようになって、顕在化してきた印象がある。『今こういうスタイルがいいよ』や『こういうのどう?』といったインフルエンサーたちの投稿を見るうちに、徐々に影響を受けて『この子みたいになりたい!』と思うフォロワーが出てくる。そういった形でどんどん“美のスタンダード”が作られているように思う」
SNSを通じて日常的に作られる“美のスタンダード”に、ノルウェーではインフルエンサーをはじめとした人々も警鐘を鳴らしている。影響力を持った人がSNSでありのままの自分を受け入れる大切さを訴えるなど、新しい動きが出ているという。
「素朴への回帰や再評価は、ノルウェーで意識してやっている人がいる。『あなたの身体は素晴らしいものなんだよ』『ありのままを受け入れようよ』と具体的な声を上げる人が出てきて、加工していない自分を好きになるきっかけ作りをしている。そこは日本で日々ネットを使う人たちも参考にしてみるといいのではないかと思う」
SNSに対するノルウェーの動きについて、IT起業家の関口舞氏は「ノルウェーの姿勢や啓蒙活動は評価できる」とした上で、「現実的にはあまり意味がないだろう」と指摘する。
「今は加工が当たり前の時代になっていて、逆に素の写真をそのままアップする方が珍しい。加工済みのラベルや加工なしを謳(うた)った投稿を見て『私は私のままでいい』とは思う人がどれだけいるのか」(関口舞氏・以下同)
ネット上では「日本でも義務付けて」「誰も損しないよね?」といった意見も寄せられているが、関口氏は他者との比較よりも、加工前の自分と加工後の自分の比較に着目する。
「加工アプリで綺麗にした後の自分を見て『現実をこれに寄せたい』と思った結果、無理なダイエットなどに走りがちになる。自撮りの加工は規制できないので、ダイエットや整形手術でアップデートした自分をさらにアプリで加工して、加工した自分と素の自分を比較し続ける“無限ループ”になってしまう」
詐欺や悪用、ディープフェイクといったリスクもある加工技術。何をどのように規制するべきか、今後考えていく必要がありそうだ。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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