1986年に公開された小中和哉監督による伝説のSF青春ラブストーリー『星空のむこうの国』が、35年の年月を経て、小中監督自らが再びメガホンを取って蘇る。パラレルワールドに迷い込んだ高校生・昭雄の恋を描く同作品。令和版の昭雄を演じるのは、映画『蜜蜂と遠雷』で天才ピアニスト役を演じ、日本アカデミー賞・新人俳優賞を始め、数々の新人賞を総なめにした若手実力派・鈴鹿央士。自身初となるというファンタジーの世界観をどう演じたのか、現場での思い出や見どころを聞いた。
『ハリー・ポッター』好きの鈴鹿央士、初ファンタジーに喜び
――本日はよろしくお願いいたします。『星空のむこうの国』は1986年の作品で、もちろん鈴鹿さんは生まれていませんでしたが、作品は観たことはありましたか。
鈴鹿央士(以下:鈴鹿):お話をいただいて初めて観ました。調べてみると「幻の映画」とか「伝説」と書かれていて、当時衝撃を与えたという作品だとわかったので、これは自分の趣味としても観ておくべきだと思いました。
――ご覧になっていかがでしたか。
鈴鹿:いい意味で手作り感のある作品でした。昭雄が駅のホームにいるシーンがあるんですが、駅にいる人たちがみんな昭雄のことをちらちらと見ているんですよ。どう考えてもエキストラさんの動きではなくて、ガチでその場にいる人たちを映しているような雰囲気。そういうのって最近の映画ではないですよね。なんかいい味だなあって思いました。
――当時の様子がよくわかりますね(笑)。昔の昭雄の演技を、ご自身の演技に反映することはありましたか。
鈴鹿:今回は、当時のものとは別物の『星空のむこうの国』で、鈴鹿央士としての昭雄をやりましょう、当時のものを意識しないで大丈夫だと言われていたので、純粋に一つの作品として楽しみました。
――鈴鹿さんは「昭雄役は難しい」というコメントをしていますよね。
鈴鹿:ファンタジーに出演するのが初めてだったんです。物語を成立させないといけない立場なので、映画を観てくれる人が自然に物語を肯定できて、人物がすっと心に入るようにするにはどうすればいいか、難しい部分でした。
――どうやってアプローチしたのでしょうか。
鈴鹿:昭雄が無責任な男に見えてしまわないように、昭雄が成長していく姿が見る人に伝わるような演じ方を考えました。
――ファンタジーへの出演が初めてということですが、もともと興味はありましたか。
鈴鹿:昔から『ハリー・ポッター』が好きなんです。僕、ハリー・ポッターに似ているって言われるんですよ。学生時代は眼鏡をかけていて、登校すると友達から「おはよう。お、ハリー・ポッターやん」って言われて「やかましいわ」と返すみたいなやりとりをしていました。だから、ファンタジーはもともと好きです。
――確かに、そういわれるとハリー・ポッターに見えてきました(笑)。ファンタジーを演じる中で難しいと思う部分はありましたか。
鈴鹿:CGが入るシーンはグリーンバックで撮ります。本来のシーンとは見ているもの、気温、におい、空気など全く違うので、演じ方が難しかったですね。逆に、完成作品を観たときには、こんなに綺麗に仕上がっているのかという感動があって面白かったです。
――ずばり、ファンタジーを演じる秘訣はなんでしょうか。
鈴鹿:物語を信じることと想像力でしょうか。僕はまだまだ未熟ですが、そこはこれから鍛えていきます。
――これから劇場に足を運ぶ人に、メッセージをお願いします。
鈴鹿:まずは気軽に観に行ってほしいですね。35年前にこういう映画があったという昔の日本映画に興味を持つきっかけにもなったらうれしいですし。この作品は、独特の世界観を持っているので、人それぞれで違う感想になると思います。だからこその映画だし、自由にいろんな感情を抱いてほしいです。
「やってみたいのは家族の物語。等身大の自分で演じてみたい」
――今後やってみたい役柄や作品などについてもお伺いしたいです。
鈴鹿:家族の作品をやりたいなって思っています。弟なのか、お兄ちゃんかわからないけど。暖かい、ゆっくりと時間が流れるような映画がいいですね。
――なぜ、家族の作品に興味があるんですか。
鈴鹿:家族が好きだから、ですね。家族って大切だよね。家族っていいなって、2時間で思ってもらえるのってすごくステキなことですよね。傲慢かもしれないけど、そういう作品に関われたらうれしいです。
――ステキです。ちなみに、誰と家族になってみたいですか。
鈴鹿:MEGUMIさんにお母さんになってほしいです。『おっさんずラブ』でご一緒したときに、すごく面白くて魅力的な人だったので、ぜひ家族として共演してみたいですね。
――わ~、いいですね。MEGUMIさんとの親子役、実現してほしいです。映画の公開を楽しみにしています! ありがとうございます。
『星空のむこうの国』は7月16日(金)より東京のシネ・リーブル池袋ほか全国で公開。
取材・文:氏家裕子
写真:野原誠治