2021年7月11日――。この日はアルゼンチン、そしてリオネル・メッシにとって特別な1日となった。
6月14日からブラジルで開幕した「コパ・アメリカ2021」は、7月11日に“サッカーの聖地”マラカナン・スタジアムでアルゼンチンvsブラジルの決勝戦が行われた。決勝のみ観客を入れることが認められ、ブラジル、そしてブラジル在住のアルゼンチンのサポーターの姿が見られた。
【映像】「メッシが空を舞い、ネイマールが泣いた」コパ・アメリカ決勝の模様
試合は決勝戦らしく、クオリティの高さ、球際の激しさが随所に見られる試合となった。スコアが動いたのは22分、アルゼンチンのロドリゴ・デ・パウルがブラジル守備陣の背後を狙った1本の縦パスを、左サイドバックのレナン・ロディが処理をミスしてしまう。
これを見逃さなかったのが百戦錬磨のベテラン、アンヘル・ディ・マリアだった。完璧なトラップから最後は前に出てきたGKエデルソンの動きを見極めて華麗なループシュート。アルゼンチンが1点をリードして前半を折り返した。
後半に入ると、1点を追いかけるブラジルが攻勢に出る。52分に右サイドを抜け出したリシャルリソンがゴールネットを揺らすが、これはオフサイドの判定でノーゴールに。54分にドリブルでキープしたネイマールからのスルーパスにリシャルリソンがフリーで抜け出し、シュートを放つ。だが、アルゼンチンはGKエミリアーノ・マルティネスが好セーブでゴールを割らせない。
81分、ネイマールがドリブルでディフェンス2人の間を抜けようとしたところを、ニコラス・オタメンディがたまらずファールで止める。勝利への強い執念見せたアルゼンチンがブラジルの猛攻を最後まで凌ぎ切った。
そして、歓喜の瞬間が訪れた――。
時計の針が95分を回ろうとした時、主審のホイッスルが吹かれ、試合終了。この瞬間、アルゼンチンは28年ぶりとなる悲願のタイトルを獲得した。キャプテンのメッシにとっては5度目の国際大会の決勝でようやく手にした、アルゼンチン代表での初タイトルだった。
試合終了のホイッスルが吹かれた瞬間、アルゼンチンの選手たちは皆、迷うことなく一目散にメッシの元に駆け寄り、抱きついた。メッシの目から涙が溢れて止まらない。そんな10番をチームメートは高く、高く、胴上げした。ブラジルの空にメッシが舞った。
彼が愛されていたこと、そしてアルゼンチンのメンバーが母国のタイトルのためにだけではなく、“メッシのために”戦っていたことがうかえる象徴的なシーンだった。
世界最高の選手がまた一つ、大きなタイトルを獲得した。
文・渡邉知晃