「自分がいた日本を見て『なんでお酒なの?』と」 酒類提供に規制のない韓国、現地記者が見たそれぞれの課題
番組をみる »

 韓国政府は、国内で新型コロナウイルスの新規感染者が急増していることを受けて、会食の人数制限など防疫レベルを最高に引き上げた。

【映像】ソウル街中の様子

 韓国で10日に発表された新規感染者は1378人で、3日連続で過去最多を更新。ソウルなど首都圏で若者を中心とした夜の街感染などが特に目立つため、韓国政府はこれらの地域を対象に12日から2週間、防疫レベルを最高レベルに引き上げた。夜6時以降の3人以上での会食などの集まりが禁止されるほか、大規模イベントや観客を入れてのスポーツ競技も禁止される。

 韓国の感染状況について、ANNソウル支局の井上敦支局長が伝える。

Q.ここまで急拡大した理由は?

 理由がはっきりしていないのが不気味なところ。今まで韓国で拡大する時は、新興宗教のクラスターだったり違法なデモが行われたりなど、だいたい理由があった。今はそれがないので怖いなと感じる。

「自分がいた日本を見て『なんでお酒なの?』と」 酒類提供に規制のない韓国、現地記者が見たそれぞれの課題

 韓国内の変異株の割合は約4割で、そのうち感染力が強いと言われているデルタ株は12%程度。まだデルタ株が主流とは言えず、ここにさらにデルタ株の感染拡大が乗ってくるともっと人数が増えるのではないかということが懸念されている。また、最近は若者の感染が非常に増えていて、20代と30代で全体の45%。半分近くが若者になっている。

Q.韓国政府はどんな対応をとっている?

 日本だと政府が専門家の意見を聞いて、検討して~というのが長いと思うが、韓国は判断はかなり早い。人数が出たらすぐに決断し、12日からの2週間は4段階ある防疫レベルを一気に最高に。これまでは、飲食店は夜10時以降の店内営業ができない、5人以上の会食などは禁止、集会も4人まで、というのが基本の対策だった。これをさらに強化して、夜6時以降の会食などの集まりは2人まで、夜10時以降の電車やバスの減便といったことをする。

 興味深いのは、韓国ではデモやイベントがやたら多いが、これを1人までに制限したこと。要は、実態としてはできないようにした。あと、日本でも飲食店が閉店した後にも道や公園などで飲酒する人がいて問題になっているが、ソウルでも多かったので、公園や漢江沿いでの夜10時以降の飲酒を禁止した。夜の街対策としては、韓国も接待を伴う飲食店があり、そういった店はすでに営業できなくなっているが、違法に地下で営業する店を摘発するために、警察の特別チームが回ったりもしている。

「自分がいた日本を見て『なんでお酒なの?』と」 酒類提供に規制のない韓国、現地記者が見たそれぞれの課題

Q.韓国ではお酒に対する厳しい取り締まりはある?

 これが、ない。お店が夜10時までの営業だとか、今後は会食は2人までだとか、そういう制限はあるものの、お酒自体についての決まりはない。日本の方からすると「えっ、ないの?」と驚くかもしれないが、私からすると、自分がいた日本を見て「なんでお酒なの?」という気がしている。

 日本のニュースで「酒、酒」とやっているが、本当にお酒のせいでそんなに感染が拡大したのか?というのが、具体的なデータも示されておらず、どうなのかなと。飲酒をすることでと暴れたり声が大きくなるという指摘も一部にあるが、一緒にご飯を食べていたら、お酒を飲んでいても飲んでいなくても一緒なのではないか。「お酒を飲んでいない=真面目にやっている」という精神論に偏っているところがあるのではないかなと、外にいる日本人の私からは思ってしまう。

 「もしお酒を禁止されたらどうする?」と韓国人スタッフに聞いたところ、「それは無理じゃないですか」と。これは自分が飲みたいからだというところもあるかもしれないが、韓国では企業が強い。財閥系の企業もあるので、お酒が売れなくなることに対しての政府への反発も強いし、10時以降は営業できないという厳しい措置がすでにとられているので、その中でさらにお酒も禁止したら飲食店からの反発が強まり、(禁止は)できないと思う。

Q.韓国国内での反発はある?

 むしろ、厳しく対応しないと「ちゃんとやってないじゃないか」という反発のほうが大きいかもしれない。国民性として、健康や命に対する意識が高く、何かが起こった時は「早くやれ」「早く、早く」という気質がある。早くやって早く終わらせる、これをやらないと逆に責められることになる。

Q.韓国のワクチン接種の状況は?

 少なくとも1回ワクチンを摂取した人のグラフを見ると、日本は右肩上がりで今3000万人ほど、韓国は今1500万人ぐらいになっている。数としては半分だが、そもそも国民の数も半分くらいなので、割合としては日韓で同じぐらい。接種開始時期もほぼ一緒なので、状況は似ていると思う。

「自分がいた日本を見て『なんでお酒なの?』と」 酒類提供に規制のない韓国、現地記者が見たそれぞれの課題

 日本はワクチンの確保は問題なかったが、初期の頃は打ち手が少なく、打ち手が揃ってくるとグーッとグラフが上がっていく。一報、韓国のグラフはギザギザしているのが興味深いところで、これはワクチンの確保が遅くなってしまった一方、打ち手は軍隊や研修医も使えるので潤沢だ。ワクチンが入ってきたら、先ほどの「早く!早く!」の文化で徹底的に打つので、全部なくなると止まってしまう。また、海外から入ってきたら打つということで、階段状になっている。ここが両国の国民性や考え方の違いを表している部分でもあり、普段韓国の人とつき合っている時にも、さまざまな場面で同じような印象を持つところ。

 ただ、韓国のグラフを見ると6月中盤から階段が踊り場になっていて、ついにワクチンが底をついてしまったことを表している。1回目の接種率を上げるために2回目の分も1回目に回してきていたが、ここに来てついに在庫がなくなってしまい、5200万人いるこの国で今月4日に接種できたのは650人だった。それぐらいワクチンが足りない。やはり、この確保がままならないところが国民からの批判の的になっていて、政権は頭の痛いところだ。

Q.では、早期に抑え込めるのか。今後の見通しは?

 先ほど紹介した、「デモは1人まで」というのがキーになると思っている。韓国はデモやイベントが本当に多くて、年中街中でデモをやっている。例えば、先々週末は8000人の労組デモをやっている。4人より多い集会は禁止とされる中にもかかわらず、8000人が集まった。貧富の格差であるとか保守と革新のイデオロギーの対立など、社会的な問題があるためにデモが多いのだろうとは思うが、禁止されたデモもいつも開催されてしまう。

 去年、第2波の引き金になったのは8月15日の終戦の日。韓国では日本の植民地支配からの解放を祝う日だが、この日に違法なデモが乱発し、クラスターが発生して第2波が起こってしまった。今年ももうすぐその日がやってくるが、私の感覚ではまた違法なデモが市内各地で散発するのではないかと思う。

 いくら政府が厳しい対策をとっても、早く決断をしても、大事なことは人々がその決まりをちゃんと守れるかにかかっている。もうひとつは遅れているワクチンを確保して、国民に接種することができるか。この2つが今後の収束の鍵になると思う。

ABEMA/『倍速ニュース』より)

官僚からはため息 西村大臣発言に波紋
官僚からはため息 西村大臣発言に波紋