「ワクチン接種後の発熱に関して、不安を感じる方は多い。ですが、発熱は体に害を及ぼす物ではありません。免疫制度は高い温度の方が活性化されるので、体が免疫をフルパワーにしたい時は意図的に体温を高くします」
Twitterでコロナワクチンに関する情報を発信する男性。オーストラリア出身の医師、レニックさんだ。オーストラリアで総合診療医として経験を積んだのち、2020年に日本に渡り、日本の医師国家試験も合格した「バイリンガル医師」。
日本とオーストラリアではどちらが大変なのか。
「ダントツ日本です。別の言語で医師国家試験を受験するのはすごくハードルが高いです。医師国家試験の前にまず日本語能力試験の一級を取ることと、さらに医師が使うような単語などの日本語能力調査を通らないといけない。日本語能力調査の中でカルテを漢字で書く場面もありました」。
日本の医師国家試験を受ける前に乗り越えなければならなかったのが日本語の壁だった。若い頃に日本への留学経験はあったものの、日本で医師として患者と向き合うためには日本語を深く理解する必要があった。
「『五十嵐さん』は最初に本当にびっくりしました。『ごじゅうあらし』と思っていたら『いがらし』さん。どこが『い』なんだろうって。確かに五つのいからきているのはわかりますけど、すごく難しいなと思いました。日本語の抑揚は外国人にとって実は難しくて、教科書でも中々習えないので、例えば『目が痛い』『手が痛い』『胃が痛い』。『胃』だけが別の発音なんですね。目と胃が少しだけ抑揚が違います。医者としてもちろんそのようなフレーズを毎日使っている中で、あとは椅子の『席』と出る『咳』の発音の違いもあったり。『席はありますか』『咳はありますか』。いまだに発音が一番のチャレンジです」。
オーストラリアで医師として働き、さらに3人の子どもの世話をしながら合間をぬってコツコツと勉強を続けたという。
「1年間くらい少しずつ1日2～3時間の積み重ねで、“チリツモ”でなんとか医学用語や日本語を勉強することができました」
なんとか難関試験をクリアしたものの、働き始めた日本で待っていたのは新型コロナウイルスの感染拡大だった。
「実はその時に医師国家試験の真っただ中で、正直あんまりニュースも見ていなくて、コロナもぼんやりと『いま感染流行ってるな』という意識くらいでしたけど。当時の2020年1月くらいはまだ日本では大きく感染はなかったですけど、ただ今振り返って、感染者数が少ないオーストラリアから比較的多い日本に来たということは、私にとってはいいことだと思います」
発熱外来で勤務し、感染の疑いがある患者と向き合う中で感じたことなどをTwitterで発信するレニックさん。その背景には、レニックさんが感じる日本ならではの医師と患者の距離感があるという。
「特にオーストラリアなどだと、かかりつけ医の役割がとても重要で。患者が例えばコロナワクチンについて何か疑問を感じた時に『インターネットでこういう情報読みましたけどそれ本当なの？』という質問を気軽に聞ける人がいますけど、日本だとそんなに親しいかかりつけ医がいない人も多くて。そうすると、さらに医者からの直接の情報が聞けない人も多いので、日本の中で医師のSNSはすごく重要だと思います」
レニックさんは最後、ワクチンは極めて安全とした上で、若い世代が接種する重要性を訴えました。
「若い人が打たなければコロナはいつまでも収束しないと思います。この1年間半で皆さんはすごくつらい思いをしていると思います。いろんなことを我慢して、一刻も早く2019年のような普通の人生に戻りたいという方も多いと思いますけど、1日も早く私たちの普通の生活を取り戻すためには社会の中でみんながワクチンを打つことが欠かせないことです。ワクチンを大幅に社会の中で打たないと、いつまでもコロナの第5波、6波、7波、ずーっと緊急事態が続くと思います。せっかくコロナウイルスを止められる武器がありますので、それを使って早くコロナウイルスの収束を目指しましょう」
