五輪直前、東京湾の“水質問題”に専門家「他人事じゃないと認識して」海外メディアも懸念
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「トライアスロン会場に下水が漏れる可能性がある」

【映像】表層に広がる汚水…東京湾を水中カメラで撮影した動画(4分ごろ~)

 オリンピック開幕直前の20日、オーストラリアのメディア『news.com.au』が報じた、東京湾の水質問題。記事では、東京で7月27日から雨が予想され、下水が東京湾に漏れることで、悪臭や大腸菌のレベルが高まるなどの懸念を伝えている。

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 事実、2019年に開催されたオープンウォータースイミング大会では、選手から「トイレのにおいがする」などの声が上がっていた。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、長年東京湾の水質改善に取り組んできた港区の榎本区議にその背景を聞いた。

「東京の下水道整備は世界の中でもロンドンやパリ、ニューヨークに並んで(処理が)早い。だが、合流式下水道といって、雨の水と生活排水を一緒に下水処理場に運んで、そこで処理をして排水する。トイレの数が何千倍にもなって、処理する水が多くなったのに、排水管や下水管は太くなっていない。(ゲリラ豪雨などで)あまりにも水が大量にきてしまうと、しょうがないから『これは塩素だけ混ぜて殺菌して海に流しちゃえ』としているのが現状だ」

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 榎本区議が撮影した、汚水が排出された現場の様子は衝撃的な事実として多くの人の目に留まった。現場から競技会場までは直線距離でおよそ2キロメートルあるが、潮の流れが穏やかな場合でも「30分程度で到達する」という。ただ「汚い東京湾」になるのは「あくまでも大雨が降った場合である」と、毎日のように東京湾を見てきた榎本区議は主張する。

「晴れている日は無臭無色透明です。晴れている日は何の問題もない。ただ雨天時はどうしてもキャパシティを越えてしまう。海水は重いので、表層だけ1メートルくらいを汚水が流れる。それは『フェンスでブロックします』と言って、浄化は一切やっていない。『フェンスでウイルスや菌はブロックできない』と指摘する学者もいれば、『ある程度フェンスでブロックできる』と話す人もいる」

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 果たして東京湾は、選手たちが安全に力を出し切れる会場なのだろうか。榎本区議はアメリカやドイツ、フランス、韓国といった海外メディアから取材もあったという。

「晴れている日に実際に船で連れて行ったが、晴れている日は『なんだ臭いしないじゃん』という反応だった。これが雨天時の特異な現象だと理解してもらったうえで、『あとは我々が努力しているんだよ、看過しているわけじゃない。長年にわたって取り組んでいるし、次世代になっちゃうかもしれないけれど、必ず実現しますよ』と海外メディアには説明している」

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 実際に競技に参加する選手たちはどのように受け止めているのだろうか。

「選手は二通りですね。競技として捉えている仲がいい選手だと、ナチュラリストじゃないので、そこが汚かろうが、なにしようが、泳いで一位を取ることに重きを置いている。水質のコンディションによって、どうしたこうしたは言わない。大会は、運営の前日の数値をもって開催の可否を決める。プレ大会で一度中止があったように、(汚水の)数値が高ければ中止になる。前日の数値で、当日どうなるかわからない」

 榎本区議は、今回の東京オリンピックをきっかけに大きく報じられたこの問題を「他人事ではないと認識してほしい」と訴える。

「海の環境問題は、実は自分の生活と直結しているという認識をみんなに持ってもらえたらうれしい。『他人事じゃないんだ』と、みんなに認識してもらいたい。国会議事堂で菅総理が(トイレを)ジャーってやると2時間で東京湾に到達しますから(笑)」

(『ABEMAヒルズ』より)

【映像】本当に大丈夫? 五輪直前、東京湾の“水質問題”
【映像】本当に大丈夫? 五輪直前、東京湾の“水質問題”
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