東京都では新型コロナウイルスの一日の感染者が3日連続で過去最多を更新し、全国では初めて1万人を超えるなど、感染拡大が顕著となっている。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は30日、緊急事態宣言の対象に埼玉・千葉・神奈川の首都圏3県と大阪を加え、まん延防止等重点措置を北海道、石川、京都、兵庫、福岡に適用することを決定した。期間はどちらとも来月2日から31日までで、すでに緊急事態宣言が発出されている東京、沖縄の22日までの期間も延長される。
秋に行われる衆院選の対策について、菅総理は以前「ワクチン一本勝負」といった趣旨の発言をしていたが、感染者が再び急増している今どのような意見が出ているのか。テレビ朝日政治部・与党担当の相沢祐樹記者が伝える。
Q.ワクチンの普及が進まず感染者数が増える現状に、自民党内でどんな意見が出ている?
確かに感染者数はかなり増えているが、重症者や死者の数は一時期から見ると減ってきている。この背景には高齢者へのワクチン接種が進んでいることがあり、単に感染者の数だけではなく、重症者数や死者数という指標で見るべきだという声が上がっている。自民党幹部は、「感染者が増えても騒ぐのではなく、インフルエンザみたいな扱いにするのも検討しないといけない」というふうに話している。
イギリスの場合、一日に5万人の感染者が出ているが、死者は抑えられていて、ナイトクラブではたくさんの人がマスクを外して騒いでいるのが見られる。日本もワクチンを進めて早く経済を回した方がいいという意見が出ているが、現状ワクチンが全世代に行き届いている状況ではない。とにかくワクチンを早く打つことが打開策、切り札であるという認識に変わりはない。
Q.ワクチン以外の選挙対策は何か考えられている?
経済対策を打ち出すべきだという声も出始めていて、これがワクチン以外の選挙対策になると思う。もちろんまだ具体的な中身はわからないが、例えば、コロナの影響で業績が低迷した企業にお金を支給したり、あとは困窮世帯への1人あたり10万円の現金給付なども考えられる。去年は、国民一人ひとりに10万円が配られたが、今年に入って麻生財務大臣は「一律10万円はやるつもりはない」と話していて、再び実現するかはわからない。
Q.二階氏や麻生大臣の言動がしばしば反発を呼んでいるが、そういった点について自民党内ではどんな声が上がっている?
麻生さんは東京都議選の応援に行った際に、過労で療養中の小池都知事について「自分で蒔いた種だ」と発言して物議を醸した。党内では、この発言が自民党の事実上の敗北の一因になったという声もあがっている。
二階さんについては、愉快に思っていない中堅若手もいるのではないかと思う。ある中堅議員は「二階幹事長は長くポストに就きすぎだ。早く辞めろ」と語気を強めているが、表立って批判の声をあげているわけではない。批判を表立ってすれば、自民党の公認候補を外されるのではないかと心配している議員もいるのではないか。
2人とも批判はあれど、実績や就いているポストを考えると、表立って「ポストから引きずり下ろそう」という空気にはなっていないのが現状だと思う。
Q.菅総理がトップであることに不安を感じる自民党員はいても、“ポスト菅”がいないという現状は今後も変わらない?
岸田さんと石破さんは、次回の総裁選出馬に関して態度を明らかにしていない。主要派閥や党幹部が菅総理の支持を明確にしている情勢を考えると、出馬は難しいかもしれない。ただ、野田聖子さんが次の総裁選への出馬の意向を示している。総裁選に出馬するには20人の推薦人が必要。野田さんはこれまでも何度も意欲を示しているが、その20人が集まらず出馬を断念している。今回も20人集まらない可能性がある。
Q.ほかに“ポスト菅”に名乗りをあげている人はいる?
もう1人、ここにきて名前が浮上しているのが、高市早苗さん。本人が表明したわけではないが、永田町には高市さんが出馬の意向を示すのではないかという噂がある。高市さんは、野田さん同様に派閥に入っていないし、これまた推薦人の20人が集まるかはわからない。高市さん本人は周囲に「政策はきっちり考えているが、今、一緒にやってくれる人がいない」と語っている。
ただ、高市さんを推そうとしている人がいるのも事実のようだ。自民党から保守層が離れているのではないかとも指摘されるなか、高市さんという保守カラーの強い存在を示すことで、幅広い選択肢を見せたい考えがあるのかもしれない。菅総理は、安倍前総理とは違って憲法改正などへ思いが強くは感じられず、自民党の保守カラーは影を潜めている印象だ。安倍内閣を支持していた人が、秋までにある総選挙でまた自民党に入れてもらえるように、高市さんを総裁候補としてアピールする狙いがあるかもしれない。