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 子役時代の神木隆之介が主演した『妖怪大戦争』(平成17年)が、約16年の時を経て『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(8月13日公開)として令和の世にリボーン。主演は神木から稀代の名子役・寺田心にバトンタッチしたが、メガフォンは変わらず。監督生活30年の節目を迎えた鬼才・三池崇史監督が続投した。平成から令和にかけて時代を彩る子役を演出してきた三池監督が、子役・寺田心と元子役・神木隆之介のトップランナーたるゆえんを語る。

三池崇史監督が感じるトップランナーの共通点

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 日本国内の有名妖怪はもちろんのこと、世界のモンスターやまさかの大魔神も入り乱れた妖怪大戦争が勃発。そんな妖怪バトルに巻き込まれる怖がりの少年・渡辺ケイを寺田が熱演する。三池監督曰く、子役の寺田心は「運命的子役」であり「最高の詐欺師」でもあるという。「いつの時代も、その時代を象徴する子役のエースが存在する。寺田心は人気子役になるべくしてなった運命的子供。彼は非常に素直で前向きで本当にいい子。それが俳優・寺田心の一番の特徴であり、皆が応援したくなる理由。役柄を通してそれを醸し出すことが出来るわけだから、ある意味で最高の詐欺師なのかもしれない」と分析する。

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 年齢や性別に関わらず、俳優には「面倒くさい人」と「面倒くさくない人」の2パターンのタイプがいるそうだ。おしなべてトップを走る俳優は「プライベートは抜きにしても、仕事をする上では面倒くさくない人が多い。現場でカメラアングルを見て監督が意図するものをすぐに察する勘の良さもあるし、議論もしない。諦めが早いんです。不毛な議論をする時間があるならば、監督の意図を吸収して演技で跳ね返して、いいものを作ろうとする」と一線で活躍する俳優の類似点を指摘。寺田も「面倒くさくない人」の部類に入るといい「少しの説明でこちらの意図を理解し、いい演技を披露。どうやれば僕ら大人が喜ぶのかを心得ている。かといって嫌味にはならない。なかなかの迫力の持ち主」と絶賛する。

 平成版で主演を務めた神木隆之介も「面倒くさくない人」だが、人気俳優に成長した現在は三池監督曰く「妖怪化」が加速しているらしい。「お芝居好きで頑張り屋という根っこは子役時代から変わらないけれど、彼は究極のオタクでもある。オタクである以上、理解者を求めるわけではないが、同じ思考を持つオタクと出会うと一瞬にして意気投合する。僕らが見ている俳優・神木隆之介は彼の中にある何十個もの人格の一つにしか過ぎず、彼と接していると僕らが知っている以上の見たことのない人格が同時に蠢いているような気配すら感じる。もはや妖怪化してきていると思うし、その正体は掴みがたい。その掴みがたく複雑な人間性が俳優・神木隆之介の魅力だと思う」。子役時代から神木を知っているだけに独特な人間評だ。

「本能的に新しいもの、新しいジャンル、新しい人材を求めて挑戦しようとする節もある」

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 複雑な人間であるのは三池監督も同じだろう。オリジナルビデオ『レディハンター/殺しのプレリュード』(1991)での監督デビュー以降、縦横無尽にジャンルを行き来。バイオレンスもあれば、人間ドラマもあり、時代劇やミュージカルもある。さらには子供向け番組までも手掛けている。その“作家性”は日本国内よりも海外で高く評価されているのだが、三池監督は「作家性こそ映画に不必要なもの」というのだから不思議だ。

 「僕は『多作監督』と言われるけれど、監督として過ごしている時間を考えたら監督作が100本を超えるのは当たり前。ほかの人が働かな過ぎるだけ(笑)。ほかの人が撮らないから僕が撮っている。映画監督である以上、撮るものはなんだっていいわけです」と監督デビュー当初からの変わらぬスタンスを貫いている。その思考は映画監督デビュー前の助監督時代に染みついたものだ。「約10年の助監督経験を通してわかったのは、色んなことを言いながらみんな作品を撮るけれど、中身はさほど変わらないということ。世間では個人の思いが入りすぎている作品を純粋な映画だと高く評価するけれど、『自分らしさ』を作品に込めようとする人を僕は信用しない。作家性なんていらない。映画を自分の人生の道具に使ったって上手くいくわけがないからです」と断言する。

 『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の寺田しかり、三池監督は人気子役と組むことが多い。女児向け特撮番組「ガールズ×戦士シリーズ」には約5年も関わっている。現在還暦とは思えぬ若々しい作風の秘密もここにありそうだ。

 「瞬発力はかつてよりも鈍ったと思うこともあるけれど、肉体的な衰えがあるならばマインドでカバーして取り戻すしかない。これまでのキャリアで培ってきたものは経験値である一方で、不要な垢。その垢を落すために本能的に新しいもの、新しいジャンル、新しい人材を求めて挑戦しようとする節もある」と自己分析しながら「年齢だけで見ると若い人が仰ぎ見るようなベテランの領域なのかもしれないけれど、目線はずっと低いままでいたいと思う。いまだに『心さん、凄いですね!』と新鮮に感動できるし、大人の僕が失ったものを持っている子供たちと一緒にモノ作りをすることは、ある意味で共存。僕が子供主演の映画を手掛ける理由はそこにあるのかもしれない」。若き才能と組むことで自らのクリエイティビティを衰えさせず、高めていく。フレッシュな才能とのコラボで三池監督の演出手腕も増々磨きがかかるわけだ

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『妖怪大戦争 ガーディアンズ』8月13日(金)全国ロードショー!

寺田心

杉咲花 猪股怜生 安藤サクラ / 神木隆之介

大倉孝二 三浦貴大 大島優子 赤楚衛二 SUMIRE

北村一輝松嶋菜々子

岡村隆史 遠藤憲一 石橋蓮司柄本明

大森南朋大沢たかお

監督:三池崇史

製作総指揮:角川歴彦、荒俣宏 脚本:渡辺雄介 音楽:遠藤浩二

制作プロダクション:OLM 配給:東宝、KADOKAWA

取材・文:石井隼人

写真:You Ishii

(c)2021『妖怪大戦争』ガーディアンズ

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