5日のモニタリング会議で「自宅療養者のフォローアップ体制をしっかりと拡充していく。医療機関、保健所とともに緊急移行体制を進めていく」と発言した 東京都の小池知事。
一方、立憲民主党の逢坂誠二衆院議員は「都内で一人暮らしをしている私の知り合いの息子さんは8月3日にPCR陽性が判明し、発熱状態。しかし(3日に保健所から来たメールでは)“いま人手不足なので電話連絡は後になる”と。いま5日の午後2時だが、保健所からはまだ連絡がこない」と明かしている。
■「はっきり申し上げて、非常に厳しい状況だ」
「“第5波”と呼ばれている今回の波の中でも圧倒的に大きく、これまでの1年間、それなり体制を構築してきたつもりだが、それらを吹き飛ばすくらいだ。我々の努力をあざ笑うかのような非常に大きな波に、ちょっと絶望的な気持ちでいる」。
そう話すのは、東京都北区保健所長の前田秀雄氏だ。
「今の体制は平常時に比べて5~6倍にも膨れ上がっている。区の事務職や保健師の増援、派遣会社や近隣の大学からの応援も得ているし、他の部門も統合して、ワンフロアで一つの保健所のようになっているが、それでも追いつかず、騒然とした状況だ。朝から晩まで、切れ目なく陽性者の届出の連絡が来ていて、今日(5日)も夕方くらいにまた一段と届出が来ていて、職員が夜を徹して連絡を取っている。
そもそも保健所の中心的な役割は、病院にバトンタッチした後で感染を拡大させないため、その方がどこで感染したのか、周りに感染した人はいないのかという積極的疫学調査を行って濃厚接触者を特定し、必要に応じて検査を行うというというものだ。職場に伺ってパーテションがあったのか、皆さんがちゃんとマスクを着けていたのか、ロッカールームで密になるような場面はなかったのかなどをきめ細かく判断する作業を行ってきた。しかしこれだけ患者が増えて来ると、まずは確実に医療を提供することの優先度が高くなり、現場に赴くということはとてもできない。今は聞き取りをもとに、“濃厚接触者として検診を受けてください”という形にせざるを得なくなっている。
また、届出のあった患者の状態を確認し、入院なのか宿泊なのか、自宅にいても大丈夫なのかを確認するが、病院やホテルであればケアのバトンタッチができるものの、待機や自宅療養になった場合、経過観察は保健所が中心になって行わなければならないので、他の業務については少しずつ縮小せざるを得ない。今のように患者が前週の1.5~2倍と増えてきて、そのほとんどが自宅療養となると、もう保健所としては仕事が回らなくなってくる。そういう中で、保健所からなかなか連絡がこないというような事態も出てきてしまうと思う。はっきり申し上げて、非常に厳しい状況だ」。
そんな中、政府は「中等症患者は原則自宅療養」とした方針について、与野党からの反発の声を受け「中等症は原則入院」と“軌道修正”を図っている。
前田氏は「これだけ患者数が増えれば軽症の方には自宅にいていただいて、重症になりやすい方を優先して確実に入院させるというのは当たり前のこと。ただ4日の菅首相の発言は舌足らずで、言い方がうまく伝わりにくい言い方をしてしまったのだと思う」との見方を示す。
「実際、少し息苦しいくらいの方は自宅という状況になってきていて、自宅療養者がかなり増えてきている。ただ発病当初は症状が軽かったのが、数日経って突然重症化するということがあるのが新型コロナウイルスの感染症の大きな特徴だ。その時に状態を迅速に把握し、場合によってはすぐに入院してもらわなければならない。経過観察の方が増えてくれば、それが難しくなっている。私どものところでは患者さんを診断した医療機関に引き続きオンライン診療等で対応をしていただくとか、訪問看護ステーション等から訪問し看護していただけるよう、様々な協力をいただいている。それでも突然の発症に対しては24時間切れ目なく誰かが見ていなければならず、地域全体で対応しても限界がある」。
■「濃厚接触者かもしれないと思った方はすぐ受診を」
濃厚接触者として検査・自宅での健康観察の経験のあるテレビ朝日の平石直之アナウンサーは「行動を2日前まで全て遡る。子どもであれば“学校に行きましたよね?塾では誰とどのように接しましたか?先生とはどのくらいの距離でしたか?ダンスのレッスンはどのようなフロアでやっていましたか?”などと電話で聞いていき、濃厚接触者の確認のある人をしらみつぶしに探していく。
濃厚接触者となった私の場合も、身長・体重からBMIを割り出し、重症化リスクを見て、LINEなどを通じた経過観察を2週間行った。これをひとりひとりに対してやっている。しかし、これらは前田さんたち保健所が決めた基準ではなく、国が決めた基準に沿った対応だ。従来型よりも感染力が強いと言われるデルタ株が広がっている以上、基準についても変えていかなければ、保健所がつらく当たられるばかりではないか」と懸念を示す。
前田氏は「去年の“検査を受けられないのは保健所が拒否しているからだ”というところから始まり、サンドバック、スケープゴートのような状況が続いてきた。辛い思いをされた皆さんがお話しされているというのはわかるが、どうしても心を病んでしまったり、出勤をして来なくなったりした職員はそれなりの数、出ている」と明かす。
「それでも濃厚接触者の対策を全く取らなければ、そこから感染が広がっていき、かえって自滅することになるので、積極疫学調査をやめるつもりはない。ただ、職場や学校など、クラスターを起こしやすい集団については役割分担ができればと思うし、それ以外のところで自分が濃厚接触者になったかもしれないと思った方は、症状がない場合でもご自身の判断で受診をしていただきたいと思う。
例えば“1.5m以内に15分”というような目安もあるし、今は家族の方は濃厚接触者イコール感染者と言っていいぐらいの感染力があり、すぐに医療機関で検査をしてもらうことが必要だ。個人で買った抗体検査キットや医療機関ではないようなところで検査をしていても、最終的には医療機関で正確な診断を受けなければ患者としては認定されない。一方で、医療機関であれば保健所の連絡がなくても疑いがあれば公費負担ですぐに検査をしてもらえるようになっている。また、症状が出た場合は、出勤や登校をしないでいただきたい。
これから8月末にかけて感染者が増大することは目に見えているし、在宅療養をせざるを得ない方も増えてくるはずだ。単身の方については遠方でもご家族の方がいれば電話などできめ細かく連絡をしていただく、あるいは近隣の方が声を掛けていただく、さらには今以上に地域の医療機関のご協力をいただいて、在宅療養をされている方を地域社会が様々な形で支え見守っていくことが必要になってくると思う。みなさんの協力をいただきながら、何とか体制を保とうというところだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
この記事の画像一覧









