官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(9枚)

 新型コロナウイルスの感染者は国内で100万人、世界で2億人を超えた。終わりが見えないパンデミック(世界的流行)に、政府はテレビCMSNSの公式アカウントで感染の注意を呼びかけているが、危機感は正しく国民に伝わっているのだろうか。

【映像】東京に4度目の緊急事態宣言が出た日の投稿は? 首相官邸公式Twitterに失望の声(42分30秒ごろ~)

 従来株より感染力が高いデルタ株が猛威を振るう中、ニュース番組『ABEMA Prime』では6人の現役医師をリモートで招き、議論を行った。

 番組では事前に6人の医師にアンケートを実施。政府の情報発信をどのように見ているのか、5段階(5点満点)で評価してもらった。

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する
官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科副部長の高山義浩氏は「厚生労働省のウェブサイトは、保健医療データが豊富に掲載されていて、現状を把握するには十分な内容になっている。これは高く評価している。正直、国立感染症研究所のウェブサイトよりもわかりやすく丁寧に作られていると思う」とコメント。

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 高山氏は疫学情報は4点、リスクコミュニケーションは2点と分けて評価。その上で「できないことはアウトソースしたほうがいい」という。

「リスクコミュニケーションができていない。おそらく、日本の役所は全体的にリスクコミュニケーションに向いていない。正しい情報を提供することに専念して、記者会見はやらない方がいいと思う。今、総理が何を言っても響かない。これは決して総理を批判しているのではなく、人には向き不向きがある。それなのに『もっと若者たちにわかるように話せ』『国民が協力したいと思えるようなメッセージを出せ』など、そんなの魚を陸にあげて歩けと言っているようなもの。みんな無理だとわかっているのに、できないことをやらせようとする。国のリスクコミュニケーションは、それができる人材に任せるべきだ」(高山氏)

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 4点をつけた大阪大学医学部・感染制御学教授の忽那賢志氏も「最新の情報が出てくるという意味で、すばらしい」と疫学情報を評価。しかし、「リーダーから国民にどうあって欲しいか、それが伝わりにくくなっている。リーダーの情報発信に工夫が必要だ」と述べる。

「アメリカの例えばCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のような機関、国のお墨付きがある程度あるような組織が、感染症のリスクコミュニケーションを国の意見として発信するような、そういった機関があってもいいと思う」(忽那氏)

 荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香氏は3点をつけ、アンケートには「政府対応が一方通行に感じる」と回答。その上で、東西ドイツにおける経験から移動を制限することの大変さをスピーチしたドイツのメルケル首相を例に挙げ、「やはり自分ごととしてメッセージを発していただけると、国民にも響いてくると思う」と語った。

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳氏は「官邸のTwitterは減点」「民間連携は加点」とアンケートに回答。点数は2点だ。

「今回、新型コロナウイルス、あるいはワクチンについては、若者がよく使うメディアの中で専門家の人たちが一生懸命、日々情報を発信している。一本、筋が通った発信を続けている人は、すばらしいと思う。例えば『こびナビ』さんなど、そういった人たちが本当に手弁当で活動をして、政府と連携しながら、動いた。これはすごく柔軟で良かった」(佐々木氏)

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 専門家と政府との連携を評価しつつも、佐々木氏は首相官邸が運営する公式Twitterに言及。

「7月12日に東京が緊急事態宣言に入ったとき、首相官邸の公式Twitterが何をツイートしているのか見てみると、何もツイートしていない。最近は全国的に感染者数がどんどん増えているのに、ツイートは東京オリンピックのメダルのことばかり。この人たちは、どこを見て、何のために情報発信をしているのだろう。本当に毎日げんなりする。真摯に国民に『今は危機的な状況だ』『命を守らないといけない』ということを、ちゃんと伝えていけばいいのに、全くしていない。官房長官の会見への動画リンクをただ貼ってあるだけなど、こんなことをしていると、わざわざ政府のSNSを見に行こうと思う人はいないだろう。国民からどのように見られているか、意識したほうがいい」(佐々木氏)

 永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛氏も佐々木氏と同じように2点をつけた。

「1年前、うちの病院がクラスター感染を起こしていた頃は、クラスター対策班の先生方が毎日のように同じ時間に記者会見をされていた。毎日、その時間になるとテレビの前にへばりついて、病院のみんなが見ていた。今はそういうものがまったくない。危機感が薄れたのもあるかもしれないが、その分野の専門家が、ちゃんと毎日決まった時間に情報発信をしていれば、また違う結果になるのではないか。ずっと1年前のことを振り返って思っている」(廣橋氏)

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 りんくう総合医療センター産婦人科副医長の山下紗弥氏は3点をつけ、「忽那先生が出演したCMは良かったが、TVなどの配信が受け身すぎ」とアンケートに答えた。

「他人事感が強く、なかなか国民に危機感が伝わりにくい。現場側の私たちもどうやって伝えていくのかも課題だと思うが、普段の仕事以上に、熱が出ただけでも検査しないといけないなど、かなり負担が増えている」(山下氏)

官邸公式Twitterは誰のためにある? コロナ第5波 医師から見た政府の情報発信力
拡大する

 また、議論の中で高山氏は「今、すごく新型コロナ対策で難しいのは出口戦略だ」と指摘。

「流行を抑え込むこと自体は、ある意味、やることがはっきりしている。だから、感染症医も行政も『自粛してください』『行動を抑えてください』と言う。しかし、感染症医だけでは絶対に出口戦略を決められない。ワクチン接種率が上がって、住民の活動を再開させ、どこに社会を向かわせていくのか。感染症の専門医の意見も当然必要だが、いろいろな事業者も交えて議論しなければならない。この出口戦略の議論をやることで、今どのような対策を行うべきか、それが見えてくると思う」(高山氏) (『ABEMA Prime』より)

【映像】若者にも届け! ひろゆき氏×6人の医師スペシャル “新型コロナ最前線” 医師たちの思い
【映像】若者にも届け! ひろゆき氏×6人の医師スペシャル “新型コロナ最前線” 医師たちの思い
【映像】人間関係の破壊に注意! “論破王”ひろゆき氏本人が教える「論破力」
【映像】人間関係の破壊に注意! “論破王”ひろゆき氏本人が教える「論破力」

■Pick Up

【Z世代に聞いた】ティーンの日用品お買い物事情「家族で使うものは私が選ぶ」が半数以上 

この記事の写真をみる(9枚)