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 「第24回手塚治虫文化賞」新生賞を受賞し「マンガ大賞2015」で2位にランクインした田島列島氏の長編デビュー作『子供はわかってあげない』の実写映画が8月20日(金)より全国公開される。メガホンを握るのは『南極料理人』『横道世之介』などで知られる沖田修一監督。もうすぐ夏休みのある日、高校2年の主人公・美波(上白石萌歌)は書道部員のもじくんと学校の屋上で出会い、実の父親探しの旅に出ることになる。ほろ苦い青春、ムネアツ過ぎるひと夏を過ごした美波の成長を描いた物語。美波の相手役・もじくんを演じるのは、連続ドラマ『ドラゴン桜』で発達障害を持つ男子生徒・原健太役を演じ、注目を集めた期待の超新星・細田佳央太。優しく穏やかに美波に寄り添うもじくんをどう演じたのか、語ってもらった。

萌歌ちゃんから出てくる柔らかい雰囲気に自然と引っ張ってもらっていました

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――本日はよろしくお願いいたします。映画『町田くんの世界』や『ドラゴン桜』の演技力が注目されている細田さんですが、本作のもじくんもとってもステキでした。まずは、出演が決まったときの感想から教えてください。

細田佳央太(以下、細田):沖田監督の作品を観ると、懐かしいような安心するような、優しい気持ちになるなあって感じていました。監督の暖かくて穏やかな世界観の一員になれるというのがとてもうれしかったです。

――もじくんという役柄には最初どんな印象を持ちましたか。

細田:実は、漫画と台本を最初に読んだ段階では、僕にもじくんの独特な空気感が出せるのかなって、実はちょっと不安になりました。

――そうなんですか、どんなふうに役にアプローチしていきましたか。

細田:沖田監督から「台詞にもじくんらしさを散りばめているから、細田くんはそのままやっていいよ」と言われました。もじくんを意識して演じようとするというよりは、自分のままでいいんだって思ったら楽になりました。あとはナチュラルでいることを心掛けました。

――自然体の演技って実は難しそうです。

細田:最初は緊張していたので力が入ってしまいました。カットがかかって、沖田監督から「力んじゃったからもう一回やろう」って言われました。僕が力んだら門司もじくんに影響しちゃうと思って、一回考えるのを辞めました。上白石萌歌ちゃんが演じるサクタさんとの不思議な空気感も意識して出すのではなくて、出たらいいなっていう考え方に変えることで肩の力を抜くことができたような気がします。

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――相手役の上白石さんは細田さんのことを「お芝居をするうえで一番助けられた存在」とコメントしていますよね。

細田:そういってもらえると有難いのです。でも僕はなんにもしてなくて、むしろもじくんとサクタさんの関係性は、萌歌ちゃんに救われたと思います。とくに2人で演技について話したりはしていないですが、萌歌ちゃんから出てくる柔らかい雰囲気に自然と引っ張ってもらっていました。

――お互いにそう感じていたのかもしれないですね。上白石さんは「もじくんは細田さんそのもの」ともおっしゃっていますよね。

細田:いや~、有難いです。初めてマンガを読んだとき、もじくんは柔らかくて、人を惹きつける人だと感じました。自分にはそんな魅力はないのですが……。監督も細田くんのままでいいよって言ってくれたので、もしかしたら小さな共通点はあるのかもしれないです。

――もじくんに対してすごいなと思う部分、尊敬する部分はありますか。

細田:僕のそばにもじくんみたいな友達がいたらどれだけ自分が救われるんだろうって思いました。精神的な柱になっていたんじゃないかなって。もじくんの柔らかさは、彼しか持っていない特別なものだと思います。

――ステキなもじくんを演じたことによって細田さんご自身に変化はありましたか。

細田:人の意見はすぐに否定したりしないでいったん聞く、飲み込んで考える。そのマインドになったのは、もじくんの人のことを受け止める器の大きさに影響されたのかもしれません。

スパルタな環境に身を置きたい 褒められると調子に乗ってなまけちゃうんです

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――お仕事観なども教えてほしいです。ドラマ『ドラゴン桜』の健太役で、演技力が凄い!と注目を集めましたが、実感はありますか。

細田:そう言ってもらえると嬉しいですが、自分ではあまり考えないようにしています。僕が注目してもらえるのは、あくまで健太のおかげ。周りのキャストやスタッフさんなどみんなに引っ張ってもらっているおかげ。そして監督が作ったもののおかげです。

――謙虚ですね。きっと環境も変化していると思いますが。

細田:ぜんぜん気にしてないです。そういうことを気にすると、性格上、調子に乗りやすいんですよ。調子に乗った瞬間に、ほかの人に足元をすくわれちゃうので。共演者のみんなは、ライバルあり、仲良しですが、野心も思いも強い子たちばかりなので。

――強力な仲間たちですね。『ドラゴン桜』は同世代の人たちが多いので、刺激を受けることもきっとたくさんありましたよね。

細田:刺激ばっかりです。健太がフィーチャーされていた5話のときに、プロデューサーさんが「麻里ちゃんがすごくよかった」と言っていて、すっごく悔しかったのを覚えています。みんなで作っているけど、個人個人が戦っている感じです。本当に受験みたいな感じですよね。それが楽しくて刺激的でもあるんですけど。

――とくに仲の良かった方は誰でしたか。

細田:鈴鹿央士くんとは、男の子らしい会話から哲学みたいな話まで幅広く何でも話しました。「孤独ってなんだろう。愛ってなんだろう」みたいな話から、それぞれの役について深堀することもありました。かなり熱いディスカッションをしました。

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――細田さんは熱い話をするのが好きなんですか。

細田:好きです。言い方を変えればスパルタチックなものが好きなんですよ。初めての大きな作品が『町田くんの世界』。石井裕也監督がものすごく熱量のあるかたで、そのときも熱い感じが心地よくて。

――スパルタな環境が合っている?

細田:優しくされるとすぐに調子に乗って、なまけちゃうんです。毎日ドキドキして怒られないか心配するような現場のほうが僕にはあっていると思います。

――いつごろからそういうマインドになりましたか。

細田:仕事を始めてからだと思いますが、とくに最近強くなってきました。コロナの影響で6月に自粛したときに、自分自身を振り返る時間が多くありました。そういう時間があったから、自分の性格がわかるようになりました。

――これからも大注目の細田さんですが、今後挑戦してみたい役柄などはありますか。

細田:サイコパスな役をやってみたいです。自分が普通に生きる中では経験しない考え方、絶対にやらない行動。そういうものに触れてみたいです。今までやらせてもらった役柄は優等生やいい子、町田くんみたいなちょっと人間離れした神様みたいに優しい子。真逆の役柄を演じてみたいですね。

――ありがとうございます! 今後のご活躍を楽しみにしています!

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スタイリスト: 岡本 健太郎

ヘアメイク: 菅野 綾香(ENISHI)

取材・文:氏家裕子

写真:You Ishii

(C)2020「子供はわかってあげない」製作委員会 (C)田島列島/講談社

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