視界の95%を失っても…若きスケーターの野望「普通じゃないって最高!」
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 軽快なライディングに、ダイナミックな技を次々と繰り出す青年。“ブラインドスケーター”として活躍する大内龍成さん(21歳)だ。パークで自由自在にスケートボードを操る姿からは想像もつかないが、大内さんの目はほとんど見えていない。

【映像】視界はたった5%…スケボーに乗って技を披露する大内龍成さん(※動画あり)

「スケボーは自分を表現するための最高のコンテンツです。スケボーは乗る人によって攻め方が違うし、滑り方も違う。だから、その人らしさが出て、自分自身を映し出すものであるんです。そういう意味で、本当にスケボーは芸術だと思います」(大内龍成さん・以下同)

 ボードに乗る際、大内さんの手に握られているのは“白杖”と呼ばれる杖だ。大内さんはこの杖の感触を頼りに、ボードを乗りこなしている。

「これがないと歩くことができないですし、もちろんスケボーすることもできません。言ってしまえば、この杖が“俺の目”なんですよね。この杖は大体145センチほどの長さがありますが、これが俺の視力なんです」

■ スケートボードとの出会い、大内龍成の“イカれた人生”の始まり

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 当時、小学生だった大内さんを襲ったのは「網膜色素変性症」という、目の網膜に異常が生じる進行性の病気だった。いまも根本的な治療法は確立されておらず、国の難病に指定されている。大内さんはこの病気の影響で現在、視界の95%が奪われているという。

「この病気はその人によって症状はさまざまで、視野がなくなっていったり、暗いところが見えなくなったりというのもあります。俺の場合、小学生のときはわりと(病気の進行が)ゆっくりだったんですよね。中学校2~3年生ぐらいから急に進行が早くなって。中高生で一気に悪くなったんです」

 病気の進行が急激に進み、無気力な日々を過ごしていた大内さん。スケートボードと出会ったのは、中学3年生の頃だった。

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「友達の家に遊びに行ったときに、友達の部屋の中にスケボーがあった。『スケボーって面白そうだね』という会話から『ちょっとやってみようよ』となって。近所で軽く滑ってみたら『めちゃくちゃ楽しいじゃん!』って思ったんです。俺にはこれしかないって思って、それでスケボーを始めました。自分のライフスタイルの一つになったんです」

 スケートボードと出会い、人生が変わった大内さん。しかし、高校生時代は病気の進行に悩むこともあったという。そんなとき、先輩に言われた“ある言葉”が大内さんの人生の道しるべになった。

「先輩から言われた『普通ってなんだ。普通なんてない』という言葉が、今の俺の背中を押しています。そのときに靄が晴れたというか『これだよ! これこれ! その言葉を求めていました!』みたいな気持ちになったんです。そこから『普通じゃないって最高!!』と思うようになって。俺のイカれた人生が始まったのは、そこからですね(笑)」

■「俺を受け入れてくれてマジありがとう」ブラインドスケーター・大内龍成の野望

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 現在は、鍼灸師になるための学校に通いながら、スケートボードに励む毎日を過ごしている大内さん。しかし、スケートボードは転倒による怪我がつきもの。パークに入る前には、杖を使い、入念に地形を確認する。

「見えないことが原因で怪我もいっぱいありますよ。何もないところだと思って突っ込んだら物があって、正面衝突とか」

 見えない恐怖は、技が成功したときの達成感で乗り越えられるという。大内さんの何よりの宝物は、スケートボードを通じて出会った仲間たちだ。

「いつも思うのは『俺を受け入れてマジありがとう』っていう気持ちがすごく大きい。俺は目が悪い分、それなりに周りに手伝ってもらわないといけなかったり、ある程度気を遣わせてしまう場面も絶対にあると思う。ただ、そんな俺を認めてくれることにすごい感謝しているんです」

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 そして現在、大内さんには絶対に達成したいと話す大きな野望がある。それはブラインドスケートボーディングの普及だ。

「今後、視覚障害者がスケートボードをする“ブラインドスケートボーディング”を開発していきたいんです。その第一段階が、まず大内龍成の名前を広めること。そして、目が悪くても『やり方によってはスケボーができるんだぜ』と広めていく必要があると思っています。実際にプレーするのは、やはり視覚障害を持っている人になります。まずは、自分が例になって視覚障害を持っている人に競技として広めて、競技人口を増やしていきたい」  (『ABEMAヒルズ』より)

【映像】盲目スケートボーダー・大内龍成の野望
【映像】盲目スケートボーダー・大内龍成の野望
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