国民の約85%が“戦後生まれ” 「8月ジャーナリズム」と揶揄も…戦争番組の存在意義
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 今年も迎えた終戦記念日、8月15日。1941年、日本軍の真珠湾攻撃によって始まった太平洋戦争は、アメリカ軍により東京大空襲、広島・長崎への原子爆弾投下などを受け、多くの市民が被害に遭った。

【映像】1945年8月15日に流れた昭和天皇による「玉音放送」(※音声あり)50秒ごろ~

 年々、戦争体験者の高齢化が進み、さらには新型コロナの感染拡大の影響などで、実体験を直接聞く機会が得られづらくなっている今、メディアは戦争をどのように伝えるべきなのだろうか。太平洋戦争終結から76年、ニュース番組『ABEMA Prime』では「8月ジャーナリズム」について議論を行った。

■ ノンフィクションライター・石戸諭氏「8月にやるから儲かる話じゃない」

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 メディアでは、原爆投下の日や終戦記念日に合わせるように、毎年8月に戦争や平和の報道が集中している。「8月ジャーナリズム」と揶揄され、批判の声もある中、17日に『ニュースの未来』(光文社新書)を上梓するノンフィクションライターの石戸諭氏は「映画『この世界の片隅に』は、直接的には原爆の話をひとつも描いていない」と、太平洋戦争を新たな視点から捉えた作品名を挙げた。

「映画『この世界の片隅に』では、広島の呉に18歳で嫁いだ主人公・すずという子が遠くから広島に落ちた原爆を見ている。この描き方は、非常に新しかった。最終的にテーマを“家族のあり方”に設定し、見る人の間口を広げて、戦争を考えさせる切り口になっている。沖縄の戦後を描いた『宝島』も直木賞を受賞し、非常によく売れた作品だ。こういった作品に世間の関心がないわけではない。(戦争をテーマにした作品に)どうやって触れたらいいのか分からない人たちに刺さる作品群はある。8月ジャーナリズムと揶揄されてしまうのは、その工夫がメディア側に足りていないと思う」

 その上で「8月にやるから儲かるという話ではない」と述べ、「言葉を補うと、8月にやるから最低限のPVが取れるぐらいの感覚だ。だが、他の月にメディアで扱おうとすると、よほど仕掛けを工夫しない限りは難しい。それが現実なので『8月にチャレンジしやすくなるなら、チャレンジをしたほうがいい』が僕の考え方だ。8月にやるから儲かるとは全く思わない」と8月に戦争報道を行うことの意味を語る。

■ひろゆき氏、戦争番組に「視聴率よりもやり続けることが大切」

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 石戸氏の見解に、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「それで十分だと思う。下手に高視聴率を狙うとエンターテイメント性が増える」と言及。「8月ジャーナリズムという言葉で揶揄されるように『そんなのなくてもいいんじゃね?』と思う人たちが一定数いるのは事実だ」と話す。

「石戸さんからも『儲かるからやっているわけじゃない』という話があったが、たぶん儲からない。本当に儲かるならバラエティ番組のように一年中やっているはずだ。儲からないけど、終戦記念日に集中する結果、人が見る状態だ。基本的に戦争ものを扱う作品は、商売的には成り立たないと思う。人が亡くなる話なので、見る人によっては気分が悪くなるわけだ。敗戦という“負けた話”を作品として見たくない人もいるだろう。なので、戦争番組は『どんどん減らせ』の方向にいく気がする」

 ひろゆき氏は「映画や小説など、見る人のがお金を払う作品でそういうコンテンツがあるのは、全然いいと思う」と述べた一方、「ただ、テレビはある種、強制的に見せるメディアだ。戦争に興味がない子たちもテレビをつけてなんとなく見る」とメディアの違いに言及。

「ただ、毎年生まれてくる子どもたちが、1回でも『はだしのゲン』を見て『これはきつい』といった経験をして『戦争はやっぱり庶民にとって困ることなんだ』とちゃんと分かるようにしておく。戦争の話が出たとき『ああいう風になるのは良くない』といった価値観を持ち続けることが大事だ。だから、高視聴率を狙う必要はないけれども、テレビでずっとやり続けることは大事だと思う」

 すでに、日本の総人口の約85%は戦後に生まれている。過去『ABEMA Prime』で、若者に「戦争に関するテレビ番組が放送されていたら観るか?」と質問した結果、約8割の若者が「観ない」と回答。「観る」と答えた若者は約2割だった。この結果にひろゆき氏は「2割の人が見ているだけで十分だと思う」と見解を示す。

「戦争番組に『見たら悲しくなる』『嫌な気持ちになる』と感じる人は、もう(戦争を扱ったメディアを)見たことがある人だ。見て1回それを知った人は、毎年無理して戦争番組を見なくてもいい。『戦争はやらないほうがいい』とちゃんと分かっていて、番組を見ると嫌な気持ちになる。実体験として『マジ戦争が起きると嫌でしょ』と分かっていれば、もうその人は見なくていいと思う」

■ 脳科学者・茂木健一郎氏「毎年8月はメディア側もチャレンジを」

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 脳科学者の茂木健一郎氏は「8月ジャーナリズムには賛成だが、新規性が必要だ」とコメント。毎年8月は、メディア側にチャレンジする姿勢を持ってほしいと訴えた。

「今度テレビ朝日で放送される『ラストメッセージ“不死身の特攻兵”佐々木友次伍長』は9回出撃して9回とも帰って来た人の非常に興味深い事実の掘り起こしだ。また、ジェームズ・キャメロン監督が映画権を買った『ザ・ラスト・トレイン・フロム・ヒロシマ』も広島で被ばくして、長崎でもまた被ばくを経験した人を描いた作品だ。そういうジャーナリズムというか、いい原作に基づく、新しい事実の掘り起こし、新鮮な視点の提供を、毎年8月にメディア側にチャレンジしてもらいたい」

 戦争の悲惨さは、どのような立場で見るかによっても受け止め方が変わってくる。茂木氏は「いまだにアメリカは広島と長崎の原爆投下について、過ちだったと認めていない」とした上で「国際連合もそうだが、戦勝国による秩序がずっと続いている。歴史修正主義ではなく、フランスやイギリス、アメリカといった戦争に“勝った側”にも『戦争はよくなかった』と真剣に考えてもらうようなコミュニケーションはできないのだろうか。それがずっと課題になっていると思う」と問題を提起した。

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 テレビの製作側としては、8月ジャーナリズムをどのように受け止めているのだろうか。テレビ朝日の清水俊輔アナウンサーは「(戦争番組を)『儲かる』『やりたくない』といった視点はないのではないか。年に1回かもしれないが、この日に過去の事実として、戦争をしっかり振り返ってお伝えすることに重きが置かれていると思う」と語った。

 ここで清水アナに茂木氏が「ある番組のスタッフと話していたら『毎年課題で上から(戦争番組の仕事が)降ってくる』と言っていた。ある種、ルーティンになっている部分があるのでは」と質問。清水アナウンサーは「中身ではなく、まずは『やらなければいけない』という意識があるかもしれない。今日のお話を聞いて、中身に関するアプローチの仕方は、制作側にもっと工夫が必要なのではないかと感じた」と述べた。

 次世代への記憶の継承が難しくなる中、戦争の惨禍を伝え、平和の大切さを訴えていく役割があるメディア。戦争の伝え方について、改めて考え直す時期に来ているのかもしれない。 (『ABEMA Prime』より)

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