ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘
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 新型コロナウイルスのデルタ株が感染拡大を加速させる中、政府は新たに緊急事態宣言の対象地域として福岡県や京都府などを追加するほか、すでに発出されている東京都や大阪府などの期間を来月12日まで延長する方針を固めた。

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 医療提供体制のひっ迫が叫ばれる中、“人流抑制”とともに菅総理が全力を挙げるとしているのがワクチン接種の加速。そこで注目を集めているのが、アストラゼネカ社製のワクチンだ。接種対象者は40歳以上で、緊急事態宣言発出地域である6都府県に優先配布するため、16日に配送がスタートしている。

ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘

 一方、すでに接種が進む「メッセンジャーRNAワクチン」であるファイザー社製やモデルナ社製に対し、「ウイルスベクターワクチン」であるアストラゼネカ社製ワクチンについては、「血栓症」の副反応を懸念する声もある。一体、どのような違いがあるのだろうか。16日の『ABEMA Prime』では、Twitterアカウント「手を洗う救急医Taka」としても知られる、新型コロナワクチン公共情報タスクフォース(CoV-Navi)副代表幹事の木下喬弘医師に話を聞いた。

■「ファイザー・モデルナとアストラゼネカはメカニズム的に全く別のもの」

ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘

 まず木下医師は「絶対に重要で、分かっておいていただきたいのが、ファイザーとモデルナのワクチンと、アストラゼネカのワクチンはメカニズム的に全く別のものだということだ」と話す。

 「アストラゼネカのワクチンもファイザー・モデルナのワクチンも、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を作るため、まず遺伝子を人の細胞の中に入れるという点では一緒だ。しかし、細胞の中に入れる方法が違う。メッセンジャーRNAワクチンの場合、脂質ナノ粒子という油の膜に包んで細胞の中に届ける。それに対し、ウイルスベクターワクチンの場合、チンパンジーの風邪のウイルスに遺伝子を乗せて届ける。次に、メッセンジャーRNAワクチンは当然メッセンジャーRNAという形で遺伝子を使っているが、細胞の核の中には入っていかない。一方、ウイルスベクターワクチンはDNAを使っているので、細胞の核の中に一旦入る。こうした大きな違いがある」。

ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘

 その上で、血栓症の問題については次のように説明した。

 「作り方が全然違うので全く別物で、有効性も違えば安全性も違う。やはりアストラゼネカ社製のワクチンは少し有効性が落ちるということと、安全性に少し懸念があるとされている。長期的な安全性に関してデータがないという点ではいずれのワクチンも同様だ。ワクチンの副反応というのは6~8週間以内にほぼ全てが起こるということがわかっているので、アメリカでも8週間見てから緊急的に承認しようということで臨床治験が行われた。この期間はクリアしているし、歴史的にはその後ですごく怖い副反応が出てきたということはないので、長期的な安全性に関して大きな懸念はないといわれている。

ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘

 そして血栓症については、“ワクチンを打った後にこういうことが起こるんだな”というのが今年の3、4月ぐらいにヨーロッパで分かってきたことだが、頻度がめちゃくちゃ高いわけではなく、10万人あたりに1回ぐらいの頻度だということだ。ただし、ファイザー社製のワクチン問題になっている心筋炎などの副反応とは違って重く、最初の報告では発症した方のうち5割ぐらいが亡くなっている。それでも治療方法などが標準化されてきたことで、死亡率は20%ぐらいになってきている。また、血栓症は特に30代の若い女性に起きる頻度が高いということなので、そうでない年代の方に使う方がいいという理由で、ドイツなどでは60歳以上に使われている。ただ、日本ではすでに多くの高齢者が接種を終えている段階だ。もっと接種を加速したいというような思いがあって導入したいのだろうが、どの年齢を対象にするかは、極めて難しい問題だと思う。

 ちなみに、遺伝子が組み替えられるという心配をしている方もいるが、それはメッセンジャーRNAワクチン、ウイルスベクターワクチンどちらも米国感染症学会は否定しているので、そうした懸念は基本的にないと思ってもらって大丈夫だ」。

■「2回目はファイザー・モデルナでも認めようといった整備は日本でも必要だろう」

ファイザー・モデルナとアストラゼネカを組み合わせる「交差接種」のための整備を デルタ株に伴う感染拡大を受け医師が指摘

 こうした前提を踏まえ、木下医師はメッセンジャーRNAワクチンとウイルスベクターワクチンの併用、「交差接種」を考えた方が良いと話す。

 「先ほども説明したとおり、ウイルスベクターワクチンはチンパンジーの風邪のウイルスにDNAを乗せて投与するので、そのウイルス自体に抗体ができてしまう。そうなれば、2回目の接種の時にはうまく細胞の中にDNAが届けられないということが起こり得るし、3回目になるともっと届けられなくなるかもしれない。その一方、2回目にメッセンジャーRNAワクチンを接種すると抗体量がかなり上がって有効だとも言われている。つまりデータに基づけばアストラゼネカを1回目打ってから、2回目にファイザー・モデルナというのが一番いい使い方だ。今は足りないからアストラゼネカを、ということだが、次にファイザー・モデルナが入ってくるまでの間、1回目にアストラゼネカを打っておくというのが正しい戦略だ。

 実はこうした組み合わせは厚生労働省が認めていなかったので日本ではできないが、カナダなどではそちらの方向で薬品管理などシステム整備が進んでいる。今、特に首都圏は感染拡大が非常にまずい状態にあるので、今すぐワクチンを打って身を守った方がいい。その意味では1回目にアストラゼネカを使うということも賛成だ。ただし2回目も打たないと基本的には守られないし、それまでにあまり期間を空けてしまれば意味がなくなってしまう。2回目はファイザー・モデルナでも認めようといった整備は日本でも必要だろう」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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