アフガニスタンの政権崩壊で混乱が続いている。国外脱出を望む人々が離陸直前の米軍機にしがみつき、振り落とされるなどして死者も出ている。
イスラム主義勢力「タリバン」が日本時間18日未明、首都・カブール制圧後に初めて会見を開き、新たな政府を樹立する方針を表明。すべての国民に恩赦を与え、報復はしないと訴え、空港で出国しようとする市民に対し国に戻るよう呼びかけた。
20年支援を続けてきたアメリカ軍が今月末までの徹底完了を目指す中、アフガニスタンは今後どうなるのか。テレビ朝日外報部・元カイロ支局長の荒木基デスクが解説する。
Q.アフガニスタン国民にとって、旧政権とタリバン政権はどちらのほうがいい?
難しいところがある。地方の街では、多くのところでタリバンが受け入れられていた。当然、反対する人たちもいるが、ある程度の支持をタリバンが得ていたというところもあって、今回それだけの地域を制圧できた。
ただ、映像にあるように我先にと逃げ出そうとする人たち、空港で乗れるわけがないのに飛行機に飛び乗ろうとする人たちがいる。この人たちというのは、外国の大使館であったりアメリカに協力をしていた人たちだったり、タリバン政権あるいはやり方が信じられないという人たち。20年前、西洋世界とはかけ離れた統治をしていたことを考えれば、これだけのことをやっても逃げ出したいという思いの人たちも当然いる。カブールといった都市部ではこういった人たちは一定数いる。
一方で、カブール以外でここ最近、大規模に治安が悪化したといった情報はほとんど入ってきていない。すでに女性のジャーナリストが脅迫を受けているとか、教育を受ける機会が失われつつあるといったことは確かにあるのかもしれないが、それをどの程度アフガニスタンの人たちが受け入れるのか。我々の価値観と彼らの価値観で全く違う部分があることは考えないといけない。
Q.タリバン政権はどのような政権になる?
基本的にイスラム教の教えとして、イスラム法(シャリーア)というものがある。シャリーアには“人の道”という意味もあり、日本語で言えば道徳。イスラム教の人としての生き方に則った政治をやりたいというのが彼らの考え方で、これは20年経った今も変わっていないはず。例えば、音楽禁止とか偶像崇拝を禁止して仏像を爆破するとか、そういったやり方を今後もやるのかというのは疑問符がつく。
というのも、インターネットもSNSも普及したこの時代に、どれだけのことがタリバンにできるのか。国際社会の目も無視することができない。20年前、オサマ・ビン・ラディンを引き渡せといった時に、誰に交渉すればいいのかもわからないぐらい、タリバンは閉鎖的なグループだった。ところが今は、アフガニスタン政府と交渉するような代表団もいるし、スポークスマンもちゃんといる。それなりに20年の間に進歩している。
さらに先月、中国の代表とタリバンの代表が会談をしていて、タリバン側も自分たちがアフガニスタンを統治することになった時に備えて、すでに先手を打ち始めていた。そういう意味では、20年前のような状況とは少し違うのかもしれない。
Q.中国とロシアはタリバンの政治体制と事実上容認しているが
中国やロシアは、一度タリバン政権のやり方を見てみようじゃないかといった姿勢に傾いている。一方で、アメリカやイギリスは認めない姿勢だ。では、タリバン政権が今度どのようなやり方をするのかは誰もわからない。言葉では女性の権利をちゃんと守るといったことを言うが、それを我々の価値観から見た時におそらく差異が生じてくるのではないか。