秘密基地で「もの作り」に勤しむという理想~それでも忍び寄る現実からは逃れえないのか?~
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 「もの作り」と聞くと、どのような業種・業界を思い浮かべるでしょうか? 広義に「もの=プロダクト」と考えれば、工業製品から生活雑貨まで、あらゆるものを包括するでしょう。ですが巷間言うところの「もの作り」には、多分にクリエイティブな要素が含まれていますので、ここではエンターテインメントの分野に絞って考えたいと思います。

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 娯楽の王様、というと(少し古い価値観ですが)映画でしょうか。日本が世界に誇る文化ではアニメーションもそうですし、いまや国内市場規模が2兆円を超えるゲームも、エンターテインメントの一角を担っていると言えるでしょう。

 これらの「もの作り」に共通するポイントは、大人数が制作に携わっていることです。商業ベースで考えれば、映画はエンドクレジットの長さからも自明ですし、アニメも同様です。ゲームは、ごく少数で商業作品を制作するソフトハウスもわずかながら存在はしますが、一般に知られる家庭用ゲーム機のソフトやスマホゲームですと、開発に関わる人数は60~80名、時には100名以上にも及びます。

 プロダクトに大人数を投入することは、商業ベースで鑑みれば、スケジュール面や物量的なクオリティ面では有利です。というより、上記のジャンルにおいてユーザーが期待するラインをクリアするためには、ほぼ必須と言わざるを得ない……というのがより正確でしょう。

 一方で大人数での制作という環境は、個々の持つ「こだわり」や「やりたいこと」をスポイルしてしまう面も持ち合わせています。「60人全員が心から納得できるものを作れるのか?」と問われれば、疑いなく首肯できる人は少ないでしょう。もちろん限りなくその理想に近い作品というのも世の中には存在しますし、そもそも「全員のこだわりを汲む」ことがイコール「面白いものになる」わけではないことは、付記させていただきます。

 だからこそ「もの作り」に携わるクリエイターにとって、自分のこだわりがいかんなく発揮できる環境――ごく少人数でのチームによる制作、というのは、大なり小なり憧れを抱くものです。そして現在放送中のTVアニメ『ぼくたちのリメイク』では、この理想的な環境が描かれていました。

 『ぼくリメ』の主人公・恭也は、シェアハウスで同じ芸大に通う3人と寝食をともにします。課題の映像作品の制作にチーム で取り組むなど、もの作りに共同で関わっていく4人。

時に意見がぶつかり、時にトラブルが起きたりと、常に平穏無事という状況ではありませんが、意見をぶつけ合える環境――チーム全員と向き合い、話ができるというのは、もうそれだけで理想的と言えるかもしれません。

 日々切磋琢磨し、シェアハウスで共同生活を送るそんな4人に、子どものころの秘密基地遊びと同じ匂いを感じました。大人の知らない場所でこっそりと、何かすごいものを作っているぞという高揚感――「学生」というある種社会から独立した立ち位置、非商業ベースでの制作という点が、そう印象づけさせたのだと思います。

 ですがそんな理想郷にも、現実は否応なく攻め寄ってきます。大学の課題制作は商業プロダクトではないものの、「要件」と「納期」は確実にあり、作中でもそれがチーム内の不和を引き起こしていました。また恭也たちはそれぞれの得意分野を活かし同人ゲーム制作に取り組むことになりますが、その理由はシェアハウスのメンバー・貫之の学費のためという、ある種商業的な要因でした。

 クリエイターとって羨むほどの環境である秘密基地にも、大人(現実)が足を踏み入れてくる――もの作りとはこれほど因果なものかと思わずにはいられません。しかしながらそういった「縛り」と付き合い、よいものを世に送り出すというのも、もの作りの喜びであることは否めないでしょう。理想郷に近い場所にいる恭也たちがそういったものと向き合い、乗り越えていくように、もの作りに関わる――広く言えば、何かを世の中に提供する私たちも、今いる場所でベストを尽くすことが、もの作りの深奥に近づく道なのかもしれません。

■TVアニメ『ぼくたちのリメイク』

公式サイト:https://bokurema.com/

公式Twitter:https://twitter.com/bokurema_anime

(C)木緒なち・KADOKAWA/ぼくたちのリメイク製作委員会

テキスト/桜森柚木

ぼくたちのリメイク
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