「入院も一日では見つからない。今までだったら入院すればその場で決定だったのが、最近は二日三日、もっとかかっている人もいるという状況」
入院が必要な状態でもすぐにはできない現状を話すのは、東京・板橋区を中心に在宅医療を提供する、やまと診療所の石川元直医師。新型コロナウイルスの蔓延までは、「自宅で自分らしく死ねる世の中を作る」を理念に、患者の最期と向き合ってきた診療所だが、今は保健所からの要望で自宅療養中のコロナ患者の往診を行っている。
「まずみなさん高熱が続いている。熱があって、咳が止まらない、眠れない、苦しいという状況だ。ちょっと最近までは、コロナが陽性とわかった時点で、保健所が酸素飽和度をはかる機械、パルスオキシメーターを郵送して、それを見て保健師さんが判断をしていた。最近の患者さんの急増によって、パルスオキシメーターが行き渡っていないという状況。なので保健師さんも、電話だけでこの方がどうかという判断をする、非常に難しい状況になっている」
石川医師によると、在宅医療を必要としているのは30代や40代といった比較的若い世代が多く、持病がなくワクチンをまだ打っていない患者が中心だという。
「きょうの方(50代男性)は本当にひどくて。通常私たちは保健所経由で、医師会からの依頼で行くが、きょうは通常のルート以外のルートで『頼むから行ってほしい』と、現場の救急隊からの依頼があって行った。そのケースだと、我々が介入したのがお昼ぐらいだったが、実はその前日の13時に救急隊が現場にいた。前日の13時から電話をかけ続けて、入院先を探して400件断られたという現状だった。私は去年まで大学病院で、コロナ病棟で責任者をやっていたが、この重症感をみたら人工呼吸器を検討するレベル。(自宅療養は)とても無理」
入院先を探している間は、救急隊が酸素ボンベで対応。ただ、救急隊が持っている酸素ボンベにも限りがあり、次々と救急隊が入れ替わり続け、石川医師が到着した時に現場にいたのは6台目の救急車だったという。
重症患者のベッドを確保するため、リスクの高い人を除いて自宅療養を基本とした政府の方針転換。爆発的に感染者が増える中での苦肉の策ではあったが、初期治療の遅れが生む悪循環を石川医師は感じている。
「患者さんは最初から中等症、重症になるわけではない。最初はみなさん、軽症からスタートしている。軽症の状況で病院に行けば、あるいは適切な治療をすれば、重症化しなくて済む人がかなりいるはずだが、その治療が今追いついていない。その結果、中等症、重症がどんどん増えているという印象を受ける」
自宅で孤独に恐怖感と向き合う療養者を数多く見てきた石川医師が今感じることとは。
「悲惨な状況で療養されている。そのコロナの世界と、かと思えばドアの向こうには日常があって。日常は普通に町を歩いている人がいたりだとか、普通にお店も開いている。本当にこの2つの世界が、私があっちの世界とこっちの世界を行ったり来たりしているような感覚になる。ほとんどの方は当事者意識がなく、『コロナがどこかの世界で大変だね』ぐらいの、言い方を変えると他人事。誰かのせいにしたくなる気持ちはすごくわかる。医療者もそうだ。いろんな考え方の人がぶつかって、コロナが本当に分断を生んでしまっているのはさみしく思う。例えば、政治家を責めたりとかをよく聞くが、今の政策があっているかどうかを判断するのはもっと後世だと思う。将来の我々が判断すべきことなので、今やらなきゃいけないことは、この災害をどう乗り切るのかだと思っている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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