苦難乗り越え 難民パラ選手「1200万人の障がいのある難民に希望を」
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 24日、東京パラリンピックが開幕した。アフガニスタン出身で、今大会に難民選手団として出場する競泳のアッバス・カリミ選手(24)は、テレビ朝日の取材に「1200万人の障がいのある難民に希望のメッセージを送りたい」と語った。

【映像】アッバス・カリミ選手の練習風景(3:00~)

 カリミ選手は生まれつき両腕がないことで子供のころいじめにあうも、水泳に救われた。戦争下にある祖国や難民キャンプでも練習を続けるなど様々な困難を経て、トップのパラアスリートが集う舞台に立つ。カリミ選手と、前回のリオ大会では旗手を務めた競泳・イブラヒム・フセイン選手(32)に取材をしたテレビ朝日外報部の諸岡遥記者に話を聞く。

Q.「難民選手団」とはどういう存在?

 2015年の国連総会でIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長が結成を宣言した。2015年は中東やアフリカから欧州に多くの人が逃れた年で、そんな中「世界中の難民への希望のメッセージ」になるようにと結成が決まった。

 難民選手団が初めて出場したのは前回リオ五輪。オリンピックに10人、パラリンピックに2人出場した。今回の東京大会ではオリンピックに29人、パラリンピックに6人出場する。どの選手も各競技で良い成績を残しIOCに選考された。

Q.難民選手団はどういうサポートがあって出場に至っている?

 UNHCR(=国連難民高等弁務官事務所)が深く関わっている。渡航に必要な書類や手続きのサポートの他、安全面で不安を抱えている選手に対してチーム結成前から随時相談にのるなどしている。関わっている人数は本部、選手の各居住国の職員合わせて30~40人ほどで、1人はチームに帯同している。

苦難乗り越え 難民パラ選手「1200万人の障がいのある難民に希望を」

Q.カリミ選手をインタビューした印象は?

 言葉の一つ一つが力強く、意志の強さと自信を感じた。泳げるようになった時から、「自分はチャンピオンになれる。チャンピオンになるためにはなんでもやらないといけない」と話していて、そこからどんな困難を経験しても全くブレていない。

 腕がないことでいじめや差別にあってもめげず、戦争状態にある中でも練習を続け、避難先のキャンプでも自らコーチや練習場を探したりと、夢に向かって進み続ける強さを持っている。そんなカリミ選手が言った「どんな困難に直面しても夢を諦めちゃいけない」という言葉はとても心に響いた。「自分が成功して他の難民のために道を開きたい」という目標を持っていて、強さだけでなく優しさも持っている選手だと思った。

Q.他に難民選手団の選手はどんな人がいる?

 もう1人話を聞けたのが、シリア出身ギリシャ在住で、同じく競泳のイブラヒム・フセイン選手(32)。リオに続き2回目の出場。水泳一家に生まれたことで幼少期から水泳を始め、オリンピック選手になるのが夢だった。

苦難乗り越え 難民パラ選手「1200万人の障がいのある難民に希望を」

 シリアでは2011年に「アラブの春」の波及から、戦争が始まった。翌2012年、撃たれた友人を助けに出たところ、爆撃に遭い右足のひざから下を失った。「人生が一変した」「戦争下で負傷した状態で生活するのは大変だった」と話すが、助けに行ったことを後悔しているか聞くと笑顔でこう話した。「全然後悔していない。足を失ったが友達を失わなかった。友達は結婚して子どももいるし、私は障がいのある難民に希望を与える役割を果たせている」。新型コロナの影響で7カ月プールが使えず、収入がなくなる時期もあり経済的にも苦労しながらも練習を続けた。大会に向けて「8200万人の難民に夢や目標を達成することができるという希望と刺激のメッセージを送りたい」と話す。

 インタビュー中の丁寧な受け答えや居住国ギリシャ、開催国日本への感謝の言葉などが多く聞かれ、負傷した経緯も含めて温かい人柄が画面越しに伝わった。

Q.世界にはどれくらいの難民がいる?スポーツと難民の関係は?

 UNHCRで渉外担当官を務める青山愛氏に取材した。2020年末時点で8200万人が紛争や迫害により故郷を追われている。そのうち1200万人は何らかの障がいがあると推定されている。WHO発表の「世界人口の約15%は何らかの障がいがある」という数字を当てはめて計算したもので、実際はもっと多いともいわれている。障がいのある人々は難民キャンプで差別を受けることもあり、埋もれてしまうことが多く支援にたどり着くことが難しい。この層に支援を届けることが課題の一つだと青山氏は言う。

苦難乗り越え 難民パラ選手「1200万人の障がいのある難民に希望を」

 また、8200万人のうち約半数は18歳以下。教育機会が限られているキャンプなどでは導入しやすいスポーツを通して、生活に必要なリーダーシップや協調性といったスキルを身に着けられるようUNHCRがIOCなどのスポーツ組織/団体と協力して支援活動をしている。

 スポーツは他にも心身のケア、社会への統合を促すツールとしても重要だという。故郷を追われた人々は心理的ダメージにより笑うことができなくなってしまう人もいる。スポーツをしている時は笑顔や束の間でも普段の生活を取り戻すことができ、体だけでなく心のケアにも効果を発揮している。

 難民キャンプの中には民族や宗教が異なる人々が集まる場所もあり、摩擦や暴力が生まれやすくコミュニティーとしての維持が難しい。そこでスポーツは交流や相互理解を促すことができる。また第三国定住の際にも、スポーツの果たす役割は大きい。ギリシャに逃れたフセイン選手は、水泳や車椅子バスケットボールを通じて友達をつくり、言語や文化を学んだ。今ではアラビア語と同じくらい流暢に話すことができ、読み書きもできるという。

(ABEMA/『倍速ニュース』より)

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