「医療のキャパシティー強化が感染拡大のスピードに追い付いていないために、今こういう残念な状況が、自宅待機の中で亡くなる人も出てきている状況」
25日の衆議院・厚生労働委員会で、自宅待機中に亡くなる人について触れた政府コロナ分科会の尾身会長。緊急事態宣言地域の対象拡大について説明した会見で、菅総理も次のように述べた。
「先日、自宅療養中の妊婦さんが受け入れ病院の調整に困難をきたし、赤ちゃんをなくされるという大変痛ましいことがあった。新型コロナに感染した妊婦に対応できる高度な医療体制についても、地域での確保を進め、緊急時でも迅速な搬送を行えるよう、病院、都道府県、消防機関の情報共有と連携の強化を徹底していく」
緊急時でも受け入れ先の病院が見つからない。そんな事例の報告が都内では相次いでいる。東京消防庁によると、8月16日から22日までの1週間に、自宅などで療養中の新型コロナ陽性者からの119番通報は1983件。このうち、およそ6割にあたる1160件が受け入れ先の病院が見つからず、保健所の判断などで搬送を断念したということだ。
命の危機に瀕している患者をなぜ受け入れられないのか。一部では病院への憤りも噴出する中、医療従事者はどのような心境で日々過ごしているのか。『ABEMAヒルズ』はコロナ病棟で働く医師に実情を聞いた。
「(搬送要請は)とれる量の3倍以上は断っていると思う。今日も5件くらいは断っている。かなり状態の悪い40代の方は、酸素飽和度でいうと85%だった。90%未満は呼吸不全の状態で、80%台で入院できないのは異常事態だが、もういっぱいでとてもとれない。退院や転院させて新しい患者をとっていて、もう出せない(転退院させられない)ような重症の方ばかりなので、とれない」
病床のキャパシティーは限界で、8月に入ってからほとんど休みはなく、疲労がたまっている状態だという。
「入院要請が非常に多いので、一日に何件も断らないといけない状況が起きている。ベッドが満床で断らないといけないのはしょうがないが、断るということにもかなり責任を感じてしまうというか。断った後も『断った人は他のところがちゃんととってくれたかな』とか、そういうことでもけっこうストレスを感じて疲れている。自分の歳と近いような方が、直ちに医療が必要な状態で、入院先が見つからないというのを想像すると苦しくなる」
自分たちが受け入れなければ助からないかもしれない。それでも1件1件断らなければいけない状況に、現場の医療従事者は精神的に追い詰められていた。
「感情のコントロールも普段よりはちょっとできていない。適応障害というか、私自身がこういった状況に適応しきれていないんだと思う。私も含めて一緒に働いている医師も、ちょっと話をすると『かなりきついよね』と話している。これがあと1カ月なら頑張れるかもしれないが、あと3カ月4カ月続くとなると、正直私は続けられないかなと。出口が見えないのがつらい。私もどこまで持つかわからないが、本当に使命感だけでやっている感じ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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