「親のクレジットカードから勝手に課金」子どもの“ゲーム障害”規制は必要? 熱中と依存の境界
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 先月、タクシー運転手のある行動に批判が殺到した。乗客が撮影した映像を見てみると、30代ぐらいの男性運転手がずっとスマートフォンでゲームをしている。

【映像】「子どもから無理やりゲームを取り上げてもいいのか?」精神科医の答え(18分ごろ~)

 動画を撮影した乗客は「左手でナビか何か操作しているのかなって思ったら、ナビは別にあったのでおかしいなと思って……」と振り返る。タクシー会社によると、運転手本人は反省していて「二度とこのようなことがないよう指導していく」という。

 自分で自分をコントロールできない“ゲーム依存症”。WHO(世界保健機関)ではこれらを「ゲーム障害」と呼び、近年、患者は増加傾向に推移している。

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 一方で、Twitter上では「オンラインゲームでしか学べないことも多い」「依存って言うけど熱中という捉え方もある」といった声もあり、必ずしもゲームが悪ではないといった意見も寄せられている。

 はたして、熱中と依存の境界はどこにあるのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家とともに議論を行った。

 ゲーム障害とは、一体どのような状態なのか。愛知医科大学病院の精神科医・藤野智哉氏は「いかに日常生活に支障をきたしているかが問題になってくる。人によって障害になる程度は違う。何時間ゲームをやるから依存症といった時間では区切っていない。学校に行かなければいけない人、仕事に行かなければいけない人とずっと家にいていい人では、ゲームに使える時間が違う」と説明する。

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 ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「社会的に困っていなければ好きにすればいいと思う」とした上で、「ゲームには、課金すると強くなれるゲームと、練習して少しずつうまくなったり、物を覚えたりできるゲームと2種類ある。これをごっちゃにして語るのはよくないし、好きではない」と話す。

「何かに集中して生活に支障があるのが問題なら、1日12時間、小説を読んで生活できない人がいたら、それもおかしい。ゲームと括る必要はないと思う」

 ひろゆき氏の意見に藤野氏は「他の依存でも、例えばアルコールをどれだけの量を飲んだら依存、といった決まりはなく『アルコールによって仕事に行けなくなる』や『お酒を飲んだまま、仕事に行ってしまう』など、生活にいかに支障が出るか、これが基準になる。ゲームと括る必要がないという指摘は、おっしゃる通りだと思う」と答える。

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 また、文化通訳、シンガーソングライター、俳優などマルチな才能を発揮しているネルソン・バビンコイ氏は「ゲームの中にもいろいろなゲームがある。栄養と同じで、食べて体に悪いものもあれば、食べて体に良いものもある。だから、やっていいゲームもあると思う」と見解を示す。

「プログラミングのゲームなどは、脳の活性化にもつながる。一方で課金性があるゲームは、結局はギャンブルだ。だから、ゲーム依存よりもギャンブル依存だと思う。ゲーム上で簡単に何かプレゼントがもらえて、ギャンブル依存を育てている」

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 eスポーツチームαD代表の石田拳智氏は「僕はeスポーツでチームを持っているが、今はゲームに依存していない。でも、中学3年生のとき、かなりゲームに依存してしまって、不登校になった。中学3年生の大事な時期に年間10回くらいしか学校に行かなくて、ずっとパソコンでゲームをしていた。昼に起きて、朝の5時までゲームという生活で、そのときは依存していたと思う。高校に行くことになって、パソコンを自分の意思で捨てる決意をした」と明かす。

 石田氏の過去を聞いたひろゆき氏は「なぜ『このままゲームをやり続けたらまずい』と思えたのか」と質問。これに石田氏は「中学校は義務教育なので誰でも卒業できるが、高校は自分の意志で通わなければいけない。だから、自分からゲームを一切やらないために、パソコンを壊した」と回答。また、当時の依存度合いについて、石田氏は「やってはいけないこと」と過去を反省した上で「親のクレジットカードから勝手に課金していた。それくらいの依存していた」と語った。

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 しかし、自分の依存に気づき、断ち切るために環境を変えたり、医療機関などに相談したりといった行動ができる人は少数派だ。藤野氏によると「僕が観測している範囲では、ご自身から『依存しています』と言って診察に来る患者さんはかなり少ない。保護者などが『生活に支障が出て困っている』と本人を連れて来られることが多い」と明かす。

 ここでゲーム依存の治療について、ひろゆき氏は「親のクレジットカードを勝手に使うなどの行動があると『それはさすがに悪いことだよね』と客観的に説明できるが、単にゲーム時間が長いだと、そんなに『これが悪い』と言えないのではないか」と疑問。藤野氏に向けて「保護者などが病院に連れてくる場合、本人は何の問題もないと思い込んでいるはずだ。依存を治すのは相当難しいのでは?」と聞く。

 ひろゆきの問いに藤野氏は「相当難しい」とコメント。「他の依存もそうだが、やはり本人が困って、自分から『解決したい』と思わないと、なかなか難しい」と現状を語る。

「まだ日本では、きちんとした診断基準ができていない。確立された治療もなく、カウンセリングや認知行動療法をやっていくことになる。面白いところだと1週間ぐらいキャンプに行って、ゲームをしない時間を作って、ゲーム以外の目的を増やしていこう、他にやりたいことを見つけていこうと、本人の考えを変えていくような治療を行っている」

 また、親がやりがちなゲームのアカウントを消すなどの行為について、藤野氏は「無理やりゲームから離させても隠れてやったり、本人に怒っても隠れてゲームにお金を使う子は山ほどいる。何を良し悪しとするかだが、根本を解決しないといけない」と説明した。

 世界では子どものゲーム利用を規制する動きがあり、国単位でみると、中国では、18歳未満は夜10時から翌朝8時までのオンラインゲームが禁止に。韓国では、16歳未満は0時から6時までオンラインパソコンゲームの接続を制限、モバイルゲームも対象になっている。日本でも香川県で18歳未満のゲーム利用時間を1日60分までとする条例が2020年から施行されているが、ここまで規制する必要はあるのだろうか。

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 ひろゆき氏は「僕は子どものゲーム利用規制はありだと思う」と意見。その上で「例えば、小学1年生が夜中の3時にゲームをしていたら、それはおかしい。反対する理由が思いつかない。だが、香川県条例の場合は、依存症ではない健全にゲームができる子もできなくなってしまう。それは違う話だ」と述べた。

 藤野氏も「子どもに関しては夜中に起きてゲームをしているのは、どう考えても不健康だ。あえて夜中にやらせるメリットはない。大人に関しては、夜しかゲームができない人もいると思うので、縛る必要はないのではないか」との考えを示す。一方で「何でもかんでも『保護者のせい』にしてしまうのは、少し違うと思う」と指摘する。

「中には学校に悩みがあって、不登校だからゲームをやってしまうケースもある。ゲームをやるから不登校になるのか、不登校だからゲームをやっているのか、それぞれ問題は違う。一概に保護者だけのせいだとは言えない」

 健康被害も報告されているゲーム依存。特に子どもたちに関しては、ゲームと正しい付き合い方をするために、冷静な見極めと対処が必要だ。(『ABEMA Prime』より)

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