タイトル99期・羽生善治九段「将棋界の歴史ではよくあること」豊島将之竜王と藤井聡太王位・棋聖の同一カード連戦に「間隔が詰まるほど難しい」
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 今夏の将棋界は、まだ10代ながら次々とタイトルを獲得していく藤井聡太王位・棋聖(19)と、先輩棋士として立ちはだかった豊島将之竜王(叡王、31)との連戦で大いに沸いた。今のところ、お~いお茶杯王位戦七番勝負は、藤井王位・棋聖が4勝1敗で防衛。叡王戦五番勝負は2勝2敗で、最終第5局にもつれ込んでいる。さらに10月開幕の竜王戦七番勝負でも、藤井王位・棋聖が挑戦者として豊島竜王に挑むことが決まった。結果、3つのタイトルを争う「十九番勝負」となり、同一カードがさらに増えた。この状況に、タイトル99期をはじめ、数々の大記録を持つ羽生善治九段(50)は「将棋界の歴史ではよくあること」と語る一方、連戦となると「間隔が詰まるほど難しい」と、経験を口にした。

【動画】「将棋日本シリーズ」一回戦第四局 羽生善治九段 対 千田翔太七段

 羽生九段が言うように、長い将棋の歴史において、タイトルを1人が1つずつ分け合うような状況の方が稀で、むしろその時代に抜けた力を持った棋士が複数冠を保持するというケースの方が多い。当時、全五冠を制覇した大山康晴十五世名人に対して、中原誠十六世名人(73)が挑み続け、さらに米長邦雄永世棋聖が続いた。さらに谷川浩司九段(59)が登場、そして羽生九段。この時代の推移の中で、1つのタイトルを保持する棋士も当然いたが、それは少数派。異なるタイトル戦でも、カードは同じという状況は実に多かった。

 2021年度に行われることになった藤井王位・棋聖と豊島竜王の「十九番勝負」。かつて佐藤康光九段(51)と1年で23局も指したことがある羽生九段は、2人の戦いをこう見ている。

 羽生九段 最先端の未解決の形を指しているというところはありますし、その一局一局を見て、自分自身も非常に参考になっているところは多々あります。豊島さんと藤井さんがずっと連戦していますが、今までの将棋界の歴史でもよくあることです。最初はずっと同じ相手だと抵抗があるんですけど、意外と慣れてきます(笑)。そういうもんだと思って対局するようになってくると思います。

 絶対的な強者でなければ経験できないことだが、レジェンドによれば慣れるものだという。ただ、同じ相手と短期間で多く戦うことの苦労もある。それは戦型とコンディションだ。

 羽生九段 アイディアを作ることに専念すべきか、しっかり休息を取るべきか。間隔が詰まれば詰まるほど、難しいところはあると思います。将棋は自分が指した将棋、他の人が指した将棋をもとに新たに分析をしないといけないので、ストックを持っていてもそのまま使えないこともよくある。間隔が詰まってくると、非常に大変になってくる部分だと思います。

 連戦となる前に、タイトル戦用の秘策を練っていたとしても、自分ではない誰かが他の対局で用いてしまった場合、その手順は指された日から研究対象になる。仮に途中まで同じ進行となったとしても、2度目ともなればその先の分岐で勝敗はまるで違ってくる。新たな戦い方を求めて寸暇を惜しんで研究を深めるか、それともコンディションを優先し長時間対局に備えるか。対局が次々とやってくる棋士だからこその悩みだ。

 王位戦、叡王戦までを見る限り、藤井王位・棋聖も豊島竜王も、序盤から独自の研究を披露し、中盤から終盤にかけての激戦を展開しているように見える。2人が次に戦うのは叡王戦五番勝負第5局の9月13日。その他の対局や仕事もある中、この2週間でどんなアイディアが練られているか。また10月開幕の竜王戦七番勝負に向けたストックがどれだけ作れるか。

 羽生九段 共通認識として課題になっている局面が結構あるので、それが公式戦で現れるパターンが多いと思っています。

 レジェンド棋士も注目するこのカード。次はどんな課題をクリアした手順が示されるか。

ABEMA/将棋チャンネルより)

2021年度「将棋日本シリーズ」一回戦第四局 羽生善治九段 対 千田翔太七段
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将棋日本シリーズ JTプロ公式戦
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