菅総理は3日、自民党総裁選挙に出馬しない考えを表明した。理由は新型コロナウイルス対策に専任したいというもので、「コロナ対策と選挙活動を考えた時に莫大なエネルギーが必要。そういう中でやはり両立はできない。どちらかに選択すべきだ」と話した。
前日には出馬の意向が報じられていた中での電撃表明。テレビ朝日政治部の今野忍記者は自民党内の空気について、取材をする中で「驚きや動揺以上に安堵のほうが大きいと感じた」と話す。
「来月には衆院選がある中で、菅内閣はいろいろと頑張っていたが、政権支持率で考えれば下降一直線。一部の調査では自公が過半数割れするかもしれないという報道も出ていて、そうなると国会議員は自分の生き死にに関わってくる。一方で、自民党の支持率は落ちていないので、『表紙を変えれば自分たちは選挙に勝てるんだ』と党内は浮き足立っていて、そういった中で菅さんが変わるということで、どちらかというと安堵のほうが大きい印象を受けている」
菅総理不出馬を受けて、落胆しているのは逆に野党のほうだという。
「立憲民主党も執行役員会で集まったが、取材に行くと隣にいた他社の記者が『なんかお通夜みたいですね』なんて言ったりしていた。というのも今回、第1野党と与党で椅子取りゲームをする小選挙区の選挙なので、非常に振れ幅が大きい。どちらか1人しか選べず、都市部なんかは『軒並み自民党が落ちるんじゃないか』と言われていた。(衆議院)465議席のうち289が小選挙区で、そのうち自民党が約100、立憲民主党が約50は固いと言われている。残り130前後の取り合いが衆院選の本質だが、菅総理が不出馬を表明する前にある野党幹部と話していたら、『菅さんのまま選挙にいったらその130のほとんど、9割ぐらいうちが取るんじゃないか』と。横浜市長選が終わってバンザイしているところで、『菅さん明日にも辞めるんじゃないか』とある横浜のドンがおっしゃっていたが、その横にいた立憲民主党の議員が『菅さんに今辞めってもらっては困る』と言っていたぐらいだ」
出馬の意向を示してから一転、一夜明けての不出馬表明。今野記者は、菅総理が「にっちもさっちもいかない状況」に陥ったことが理由ではないかとの見方を示した。
「先月29日の夜に菅総理と電話で話す機会があったが、その時に総理は『俺には失うものは何もない。これは自分との戦いだ』と、まだぜんぜん心は折れていなかった。ただ、この後に解散も選択肢の一つだと報じられると、一転して『解散しない』と言った。二階幹事長とは2日夕方に会談して、その後会った人に話を聞くと『まだ総理はやる気だった』と。『夜に何かあったのではないか』と言う人もいるが、この二階さんとの会談は完全に2人で行ったもので、菅総理も二階さんもこの会談のことを話していない。ひょっとしたらここで(不出馬を)言っていたかもしれない。
神奈川県連の幹事長が菅総理を支持しないと言って、横浜市長選で大敗して、小泉進次郎さんも4日連続で会談し、『党内の状況は非常に厳しい。お辞めになる判断もされたほうがいいんじゃないか』とアドバイスをしていたと。初当選の時からかわいがっていた進次郎さんからそういうふうに進言されて、極めつけは、2日夜ぐらいにかなり親しい議員から『今回推薦人にはなれない』と言われたという話もある。総理大臣は2つ大きな権力を持っていて、1つが解散権、もう1つが人事権だと思う。この2つがどちらも使えないような状態になってきたということで、心が折れるというか、ここは身を引くという判断をされたのではないか」