俳優・中山咲月が“無性愛者”を公表した理由 「恋愛しないの?」の質問がつらい人へ
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「女性だと言われたくない」
「女性として認識されるのも辛いです」

 今年2月、心と体の性別が異なる「トランスジェンダー」を公表したモデルで俳優の中山咲月さん。これまでドラマ『中学聖日記』や『仮面ライダー ゼロワン』などに出演し、“ジェンダーレス女子”として注目を集めているが、自身の誕生日(9月17日)に発売したフォトエッセイ『無性愛』では、恋愛感情や性的欲求がない「無性愛者」について初めて言及した。

【映像】中山咲月さん「女性認識されるのがつらい…」ブログにつづった実際の内容(1分ごろ〜)

「中性的じゃ足りない。もう男でいさせてください」(中山咲月フォトエッセイ『無性愛』より)

 同世代の女性を中心に圧倒的人気を誇る中山さんが、なぜトランスジェンダー、無性愛者の告白に至ったのか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、テレビ朝日田中萌アナウンサーがその胸の内に迫った。

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■「公表してよかった…」自分を“トランスジェンダー”と認識 カミングアウトに恐怖も

 中山さん自身が明確に「トランスジェンダー」と認識したのは今年に入ってからだという。

「(トランスジェンダーがテーマの)映画を観たのがきっかけです。もともと自分の中にモヤモヤとした感情があって、なんとなくずっと違和感は持っていました。(モデルは)ファッションを扱う仕事ですが、なのに周りと同じ服が好きになれなくて。一緒に働いている人たちと『こういうブランドがいいよね』『こういう服が好き』っていう会話に全然入れなかったんです」

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 それでも「本当の自分」を抑え込んで無意識に周りと合わせていた中山さん。モデルや俳優活動を続けるうちに次第に、周囲から“ジェンダーレス女子”と呼ばれるようになった。

「実は自分自身で『ジェンダーレス』と名乗ったことは一度もないんです。そう呼んでいただけたことは、自分が(メディアに)出たときに一番分かりやすい、自分を一番に表現できる言葉が『ジェンダーレス』だけでした。そう呼んでいただけることに対して、当時は苦ではなかったです」

 しかし、自身が「トランスジェンダー」だとはっきり認識したとき、抑えていた感情が一気にあふれ出たという。

「自分がトランスジェンダーだと気が付いたとき、やっぱり気付く前よりも気付いてしまったあとの方がやっぱり我慢できなくて。気付く前は『なんでこんなにモヤモヤしてるんだろう?』と思いつつも、我慢できていたんです。でもいざ、自分の中で(トランスジェンダーだと)分かってからは、我慢ができなくなってしまって。以前よりつらさが増しました。カミングアウトに対する恐怖もありましたが『これを言ってすっきりしたい』という感情の方が強かったです」

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 葛藤の末、今年2月、中山さんは自身が「トランスジェンダー」であることをブログで公表。

「カミングアウトしたらすごく楽になりました。でも一番うれしかったのは、ファンの方々から『元からなんとなくそうだと思ってました』や『知ってましたよ』と言ってくださる人ばかりで『あ、公表してよかったな』と思いました」

 そして、中山さんは「トランスジェンダー」以外にも、フォトエッセイでもう一つの告白をしている。恋愛感情や性的欲求がない「無性愛者」であることを初告白したのだ。告白の理由について、中山さんは「自分と同じような人に無性愛という存在を知ってほしい」と話す。

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「無性愛って理解してもらうことがすごく難しいんです。他人から『恋愛しないの?』や『いつかいい人がみつかるよ』と言われることが少しつらいときがありました。だから、同じ悩みを持つ人がこのフォトエッセイを見たときに『無性愛っていう存在があるんだ』と知ってくれたらいいなと思って、題名につけました」

■「見た目も中身も同じ人は誰一人いない」“トランスジェンダー”の認識が消える日を目指して

 トランスジェンダーと無性愛者を公表し、フォトエッセイを通して、自身の胸の内を赤裸々に告白した中山さん。その上で多様な幸せの形があると語る。

「幸せの形って人によっていろいろあると思っていて、もちろん恋愛をして、結婚して、子供ができることが幸せといった人もいれば、自分みたいにそうじゃない人もいる。ただそれだけで、幸せに差はないんじゃないかなと。『恋愛することが幸せだから、恋愛をしなさい』と強要するのはよくないと思いますし、自分がいるこちら側の恋愛感情のない世界も強要したくないです」

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 また、今後について「ジャンル分けせずに1人の人間としていたい」と話す中山さん。

「みんなが知らない世界だからこそ、知ってもらうことが重要で、その踏み出しは1歩じゃ足りないのかもしれない。もう1.5歩、知ってもらうための行動をしたいです。やっぱりLGBTQ+といった、それよりも多い、たくさんの呼び名がありますが、見た目も中身も、同じ人は誰一人いないのと一緒で、(性別関係なく)同じ人間はいないと思います。自分はジャンル分けせずに、1人の人間としていたい」

「今は『トランスジェンダーの中山咲月』という認識がすごくあるかもしれません。当事者の自分としては、トランスジェンダーであることがみんなの認識から消えたときが、本当の自分になれたときですね。いつか自分が、ただ普通に男性の中に溶け込んで、当たり前に仕事ができるようになったらいいなと思います」 (『ABEMAヒルズ』より)

【映像】中山咲月 フォトエッセイ『無性愛』で見せた素顔の一部(歌唱シーンあり) ※25秒ごろ〜


【映像】俳優・中山咲月 インタビュー「中性的じゃ足りない…」
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中山咲月 フォトエッセイ『無性愛』
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