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写真:小野直樹

平日20時から放送されているAbemaTVの報道番組「AbemaPrime」が、6月20日に放送50回目を迎えた。同番組のキャスターを帯で務めているのが、テレビ朝日の小松靖アナウンサーだ。

オウム真理教の元・信者や薬物依存症と闘う人物が登場するなど刺激的なキャスティングに加え、多数の芸人やアーティスト・アイドルが出演し、笑いや音楽の要素もときに盛り込まれる「AbemaPrime」は、地上波の報道番組とは明らかに一線を画す。コメンテーターが日替わりなのはもちろん、MCも毎日違った顔ぶれ。曜日ごと取り扱うテーマも違うので、まるで生き物のように日ごと、姿・形が変化する番組だ。しかし、放送開始当初から”新たな報道番組のスタイル”を世の中に提示し続け、徐々にその認知度が向上しつつあるのは、スタッフの高い取材力と、”AbemaTVのメイン報道番組を作る”という揺るぎのない信念が生み出している結果だろう。そして進行の手綱をしっかりと握るキャスター・小松アナの存在も大きく貢献しているように思う。

そんな小松アナに、自身が担当する『AbemaPrime』をどう思っているのか、産声をあげたばかりのインターネットテレビ・AbemaTVをどう捉えているのか、じっくりと語ってもらった。話を聞くとなんでも、小松アナは番組で叶えたいことがあるんだとか。果たしてその叶えたいこととは。

ライブをしている感覚に近いです

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--1998年にテレビ朝日に入社された当時、AbemaTVというインターネットテレビで進行業を務めることになるとは思わなかったことと察します。テレビにおける報道番組、ネットテレビにおける報道番組は、”情報を伝える”という点では同じことだと思いますが、小松アナ自身は伝える側として、”はっきりとした差”を感じることはありますか?


小松アナ:ありますね。AbemaTVは、基本的に”手のひらの上のパーソナルメディア”で、観てる人のリアクションがダイレクトに反映されます。なので、あたかもお客さんの前で公開生放送をしているような感覚になるんです。放送中はプロデューサーをはじめ、多くのスタッフがテーブルの上でPCやスマホを操作して、視聴者のコメントを拾っています。この景色はまず、地上波の番組ではありえません。「ライブをしている」、そんな感覚に近いです。

--スタッフの笑い声があれだけオンエアにのるのも、報道番組としては珍しいですよね。


小松アナ:面白いことが起きるとスタッフは遠慮せず笑うんですよ(笑)。でもそれは単なる内輪ノリではなく、画面の向こうにいる視聴者のリアクションとリンクしていると確信しています。後で確認してみると笑い声が起きたタイミングと同時刻で、コメントの件数も跳ねている。”笑いでウケる”ことだけを目指している番組ではないとはっきり言えますが、『AbemaPrime』独自の、なにかしら感情に訴えかける伝え方をしたいと、日々オンエアに向かっています。いつもより視聴者数が少ないとき、たまに不安になったりもするんですよ。「あれ、今日あんまりおもしろくないのかな?」って(笑)。

コメントが盛り上がると、コーナーが長くなる

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--視聴者のコメントが生放送中に見られるというのはインターネットならではですよね。

小松アナ:実は視聴者のコメントで、番組編成も変わったりもするんですよ。「今コメント欄盛り上がってるから、コーナーを少し伸ばそう」とか、逆に「視聴者は、ちょっとお腹いっぱいになってきてるかも」って判断された場合は短く切り上げることもあります。適宜対応しながら、リアルタイムで編成を変えているんです。パーソナルメディアの上にあるマスメディアは、常に移り変わるユーザーの気持ちを捉えていかないと、作り手と受け手の感覚がズレていくものなのかな、と今はそう信じてやっています。例えば、ニュースサイトを覗いたとき、自分の心に響かない見出しはクリックしない感覚に近いというか。そういう視点から見ても、改めてライブな現場だなと思うんです。

--インターネットはまだまだ黎明期(れいめいき)という考え方もあると思います。小さい子供から老人まで、年齢を問わず視聴することが”一般化”とするならば、ネットテレビはまだまだという現状で、小松アナは船出したばかりのこのメディアをどう捉えていますか?

小松アナ:何百万人、何千万人が一斉に観てるという、テレビを長らくやらせていただいている身からすると、「観てる人、どれくらいいるんだろう? どれくらいの影響力があるんだろう?」と、正直不安になるときもあります。やっぱり、”観られてなんぼ”だと思っているので。その一方で、新しいものに共鳴してくれている人が徐々に増えているという実感はあるんです。サイバーエージェントの藤田晋社長も、弊社(テレビ朝日)の早河洋会長も「AbemaTVをマスメディアにしていく」と言っていましたが、その構想は軌道にのったんだなと確信しています。

--曜日ごとにMCもコメンテーターも変わるっていう番組で、小松アナは日によって、放送中の立ち位置を少し変えている印象があります。


小松アナ:月~火曜は芸人さんがMCということで、喋りのプロがその役割を担っています。わたしは、制作サイドの意図を担保しなければならないので、時間をキープすることを意識しながら、出過ぎずに、でもしっかりと付いていくようにしています。水~金曜は打ってかわって女性のMCとなります。その中に、いわゆる進行のプロという方は、いらっしゃらないんですね。もちろんみなさん実力があって素晴らしい方ですが、水~金曜は番組を引っ張っていく気持ちで臨んでいます。共演者に積極的に突っ込んだりなどを意識して、アクセントを加えられたらいいなと思いながら。まだまだ拙い進行なので、日々反省を重ねながら試行錯誤してやっています。

MCを乗っ取ろうとしている、堀潤さん

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--小松アナと同じく毎日出演しているのが気象予報士の穂川果音さんです。穂川さんにどのような印象をお持ちですか?


小松アナ:この番組のお天気予報って、日本一情報が頭に入ってこないコーナーなんですよ(笑)。でも『AbemaPrime』においては、それはいいこと。穂川さんってぶりっ子キャラの一方で、ものすごくしっかりした一面を持っています。4月に起こった熊本地震の際、ユーモアを排除して、きちんと情報をお伝えすることに従事した穂川さんがいたんですね。あれは穂川さんの真実の姿で、実はすごくしっかりとした気象予報士であり防災士なんです。土台がしっかりしているから、崩した伝え方が成立している。ぶりっ子の穂川さんも真実の姿だし、今や『AbemaPrime』に欠かせないキャラクターですよね。穂川さんには、すごく助けられています。

--出演者の方々と穂川さんの絡みも見所と言えますね。


小松アナ:基本的に穂川さんは自分のキャラクター作りを徹底しているので、出演者さんとのやりとりは、楽しめるポイントだと思います。あと、これはわたくしごとですが、水~金曜はちょっと芸人さん的な激し目の突っ込みをいれたりしているんです。「アナウンサーにしては出すぎちゃってるのかな」と我に帰る瞬間もたまにあるけど、ほんの少しその感覚が月曜日まで残っていたりして...。そうすると、月曜MCの村本大輔(ウーマンラッシュアワー)さんに「(小松さん)MC乗っ取ろうとして」って放送中に小声で言われるんです。

--そんなやりとりがあるんですね(笑)。

小松アナ:マイクに乗らないくらいの声量でボソッと言ってくるんです。それに加えて、月曜は本当にMCを乗っ取ろうとしている堀潤さんがいます。

--(現場にいたスタッフ一同)爆笑

ももいろクローバーZのブッキングをしました

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--ネットテレビは小松アナ自身にあっていると思いますか?


小松アナ:あってると思います。大好きなんですよ。もともとぼくは”オタク気質”なところがあって、子供の頃からゲームとかメカとかパソコンとかその手の分野が好きだったし、まるで抵抗がない。毎年スマホも、買い換えてます(笑)。

--この番組で、小松アナがファンだと公言している、ももいろクローバーZ(以下:ももクロ)のメンバー、玉井詩織さん、有安杏果さん、高城れにさんと共演を果たしましたね。


小松アナ:番組プロデューサーから電話がかかってきて「GW、いろんな人に出て欲しいと思ってるんだけど、早速だけど、ももクロに出演交渉してもらえる?」って言われて、ぼくが直接お願いしたんですよ。

--えっ! 小松アナ自身が、出演オファーしたんですか?


小松アナ:スターダストプロモーションの執行役員でプロデューサーを務める、ももクロの元マネージャー・川上アキラさんに「4月からこういう番組をやるんです」と伝えたら、「(ももクロメンバーを指して)うちのメンバーもスタジオいかせますから」って仰っていただいて。その旨を番組プロデューサーに伝えたら、オファーする運びになり、電話をしました。そうしたら、なんと次の週に出演の快諾をいただくという。これはもうとにかく、川上さんはじめももクロのみなさんに感謝です。

--ももクロもそうですがPerfumeもお好きなんですよね?


小松アナ:アジア公演とかワールドツアーも行ったくらい好きなんです。パリ公演は自費でいきました。楽屋にもお邪魔して、メンバーを労わせていただいたり。役得ですよね。

--ではももクロ同様、『AbemaPrime』にPerfumeが登場する日も期待できますね。


--(取材現場に同席していた番組プロデューサーから)出演オファーしてもらっていい?

小松アナ:笑。近々関係者の方にお会いするのでちょっと聞いてみます。そうそう、この番組のすごいところは「会いたい人を番組に呼べる」ってところなんですよ。小松政夫さんや間寛平さんが登場したのも、実はプロデューサーが大好きで尊敬しているっていう背景があって。でも、実際に出演していただくとやっぱり番組がグッとしまるんです。会いたい人って尺度だけじゃなく、ほかにも元・オウム真理教信者や、元・薬物依存症の方に加え、元・ギャンブル依存症の貴闘力さんも登場している。地上波の報道番組で、まずこれはありえないですよね。”既成概念を壊す”っていう雰囲気がこの番組にはあるんです。思いつきで動くことに、スタッフ一同本気になって取り組んでいます。

番組に登場していただきたい方がいます

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--フットワークを軽くしながらしっかりと番組を作るっていう、ベースがあるんですね。

小松アナ:これはプロデューサーが言っているんですけど、番組の出演オファーに関するキーワードは「ダメ元」です。いつかは安倍晋三首相にも出演していただきたいと本気で思っていますし、これからもっと面白い番組が作っていける期待感があります。手前味噌にはなりますが、良いチームワークができていますよ。

--小松アナ自身はこの番組でやりたいことはありますか?


小松アナ:やりたいことはできているんです。毎日が楽しい。けど、個人的にぜひとも番組に登場していただきたい方がいます。ショーンKさんです。復帰は『AbemaPrime』でと思ってます。

※ショーンKは『AbemaPrime』のMCに内定していたという経緯がある。自身の学歴詐称という報道を受け、出演を辞退した。

もっと世間から騒がれるような番組にしたい

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--仕事の息抜きはどうしていますか?


小松アナ:アナウンサー人生で、平日約2時間ぶっ通しで仕切ることがないので、よくお酒を飲むようになったし、よく食べるようにもなりました(笑)。ストレスっていうわけじゃないんですけど、仕事のあとのご褒美というのが帯番組を担当することで明確になりましたね。あと、犬と戯れたり...。まずい全然面白い返しができない(笑)。

--大丈夫ですよ(笑)。番組をやる上でのよろこびってなんですか?


小松アナ:博報堂ブランドデザイン若者研究所マーケティングアナリストの原田曜平さんが率先して「出演したい」って仰ってくださったんですよ。「芸人の中でAbemaTVに出ることが1つのステータスになっている。なのでどういうメディアか見にいきたいと思った」という理由で。出演してくださった多数のゲストの方々も「また出たい」って言ってくださったり。それはもう、出演者冥利につきますよね。

--では最後に、視聴者の方々にメッセージをお願いできますか。


小松アナ:もっと世間から騒がれるような番組にしていきたいです。AbemaTVのライバルってゲームだったり、インターネットだったりで、楽しいことってたくさんあるじゃないですか。その中でも一番の強敵って「好きな人とのLINE」だと思うんです。無数の娯楽が今の世の中にはあって、そんな限られた時間の中で『AbemaPrime』を見てくださる方がいるっていうのは本当にありがたいです。そうだ、実は帰りの電車の中で番組へのコメントをスマホで検索するんです。エゴサーチってやつですね(笑)。自分の名前がないと凹んだりするし、一方で「小松アナ、ガチオタ」とか見つけるとなんだか、うれしかったり(笑)。そういう視聴者とのコミュニケーションもよろこびの1つですね。

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インタビュー・文:中山洋平

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