サッカーのルールの1つである「オフサイド」は、攻撃側の選手による待ち伏せを防いで、サッカーをよりおもしろくするためのものです。
FIFAワールドカップカタール2022では、このオフサイドをより正確にジャッジするために、半自動オフサイドテクノロジーが導入されます。また、2022年7月には新ルールも適用され、オフサイドのルールを取り巻く環境はどんどん変化しています。この記事では、そんなサッカーのオフサイドについて分かりやすく解説していきます。
サッカーのオフサイドはどんなルール?簡単に解説
サッカーの試合を観戦していると、攻めている選手がパスを出したあと、フィールドのサイドに立っている審判が旗を上げるシーンがよく見られます。これはオフサイドというルールによるものです。そして、オフサイドが発生するポジションを「オフサイドポジション」と呼びます。
オフサイドとは、オフサイドポジションにいる選手に対してパスを出せなくするルールです。以下の3つの条件を満たしたオフサイドポジションにいる選手にパスが渡ると、オフサイド判定となります。
- 1:攻撃側の選手が守備側のフィールドにいる
- 2:パスを受ける攻撃側の選手が、ボールよりも守備側のゴールに近い場所にいる
- 3:パスを受ける攻撃側の選手が、後ろから2人目の守備側の選手よりゴールに近い場所にいる
要するに、攻撃側の選手の視点から見て「攻めるときに相手チームの陣内にいて、自分とゴールのあいだに相手が1人しかいないときに、味方からパスをされたボールを受けるとオフサイド」になります。
言葉にすると少しわかりづらいですが、試合を見ていてオフサイドが起きる状況はだいたい「攻める選手が守備チームのディフェンダーとゴールキーパーのあいだにいて、その状態で味方からのパスを受けた」となります。ゴールキーパーの次にゴールの近くにいるディフェンダーから、攻撃側でパスを受ける選手がはみ出していないかに注目すると分かりやすくなります。
しかし、トップのプロ選手になると、攻撃選手も分かりやすくオフサイドポジションにいることはあまりありません。相手ディフェンダーからはみ出さない、オフサイドポジションにギリギリでならない場所にいて、攻撃チャンスをうかがっています。
一見、ややこしく見えるルールですが、オフサイドをめぐる攻撃と守備選手の駆け引きもサッカーの大きな醍醐味です。
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オフサイドはなぜ反則扱いなのか?
オフサイドは、サッカーをよく知らない人が「分かりにくい」と感じるルールの筆頭です。そもそも、なぜ反則行為になるのでしょうか。
サッカーのオフサイドは、「待ち伏せ」や「抜け駆け」を防ぐため、また試合をより面白くするために設けられたルールです。もしオフサイドがなければ、攻撃選手はゴール前に張り付いて、味方からのパスを待てば得点できるゲームになってしまいます。
それらの行動を防ぎ、正々堂々と競技するため、サッカーを楽しくプレーするため、オフサイドは反則として扱われているのです。
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サッカーのオフサイドが改正!新ルールを解説
2022年7月に国際サッカー評議会(IFAB)が、オフサイドの新たなガイドラインを発表しました。新ガイドラインでは、オフサイドに関する守備選手のプレーが「意図的なプレーだったか否か」の基準をより明確にしたものとなっています。
2013年以降、攻撃選手がオフサイドポジションにいても、守備選手が「意図的にプレーした後にボールを受けた」という状況ならオフサイドにならないルールが採用されるようになりました。例としては、守備選手が攻撃選手のパスやボールをクリアしようとボールに触ったあとに、オフサイドポジションにいる攻撃選手がそのままパスを受けた場合、オフサイドにはなりません。
これはディフェンダーにとって守備が難しくなるルールです。なぜなら、パスが守備選手に偶然当たってしまいボールの方向が変わったとしても、守備選手が意図したことでないのに「意図的なプレー」とみなされ、オフサイドにならないことがあるからです。
今回の新ルールでは、この意図的なプレーの有無に基準を引くことになりました。具体的には「ボールが長く移動したため、選手はボールをはっきりと見えた」「ボールが動いた方向が予想外ではなかった」など、これまでもルール上、考慮していた内容に「選手が身体の向きを変える時間があったかどうか」が加わっています。
サッカーをただ観戦している側からすると、見ているだけで判断するのは非常に難しい要素です。意図的だったかどうかの判断は、最終的には審判の解釈に委ねられることとなります。
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オフサイドにならない例外ケースまとめ
攻撃側の選手は、オフサイドポジションにいるだけでは反則になりません。オフサイドポジションでパスを受けることで、初めてオフサイド判定となります。また、ゴールキック、コーナーキック、スローインのときにオフサイドポジションでボールを受けても、反則は取られません。これも覚えておくと、観戦中に混乱しにくくなります。
ちなみにゴールキックとは、ボールがゴールと平行にある白い線(ゴールライン)を割ったときに、攻撃側の選手が最後に触っていると適用される試合再開の方式です。守備側のゴールキーパーが、ボールを蹴って試合を再開します。
コーナーキックのほうは、ボールがゴールラインを割ったときに、ゴールキックとは逆に守備選手が最後に触っていた場合、適用されます。ゴールラインを割った場所から近いほうのコーナーアークから、攻撃側がボールを蹴って、試合を再開します。
スローインは、コートの縦側にあたる白い線(タッチライン)からボールが出たときの試合再開方式です。最後に触った選手から見て、相手チームの選手が、タッチラインから手で投げ入れて試合を再開します。
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ワールドカップ2022では半自動オフサイドテクノロジーを導入
FIFAワールドカップカタール2022では「半自動オフサイドテクノロジー」の導入が決まっています。
これまで採用されていたシステムでは、ボールや選手の位置を手作業で指定し、テクノロジー上で正確なラインを自動で引いてオフサイド判定に役立ててきました。新システムでは、オフサイドの可能性があった場合、その場面自体を自動で抽出します。ボールや選手の位置は専用センサーで自動検出するので、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)での判定もこれまで以上に早く行えます。
半自動オフサイドテクノロジーには、スタジアムの屋根に取り付けられた12台の追尾専用カメラが使用されます。そしてボールと選手の身体の部位を1秒間に50回追跡することで、フィールド上で正確な位置を特定します。追尾できる身体の部位は最大29ヶ所で、オフサイド判定に必要な部分はすべて含まれるようになっています。
オフサイドの判定には、ボールをいつ蹴ったかの判断も重要となります。そのため、カタールワールドカップの公式試合で使われるボール「アル・リフラ」にも、最新テクノロジーが組み込まれています。このボール内部には慣性を測定するユニットセンサーが搭載されていて、データを1秒間に500回送信可能です。
オフサイドポジションにいる攻撃側の選手がボールを受けるたびに、VAR側に「自動オフサイドアラート」が提供されることで、半自動オフサイドテクノロジーとVARとの連携もできるようになっています。3Dアニメーションによる映像化も自動的に行われ、スタジアムの大型ビジョンやテレビでも映されることで、オフサイド判定が観戦者にもより分かりやすくなります。
半自動オフサイドテクノロジーは、FIFAクラブワールドカップ2021などですでに運用され、成功している技術です。ワールドカップでも半自動オフサイドテクノロジーによって、オフサイド判定にかかる試合の中断時間が短くなることを期待されています。
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旗を上げるのが遅い?オフサイドディレイとは
オフサイドを判定して旗を上げる役割のある副審は、オフサイドを見極めるためにタッチライン上を走り、オフサイドと判断すれば旗を上げます。副審が旗を上げると、主審は笛を吹いてプレーを止めます。
しかし、オフサイドかどうかはっきりしない場合は、旗を上げるタイミングを遅らせてプレーを続行させます。これは、判定ミスによって選手から得点機会を奪わないようにする「オフサイドディレイ」と呼ばれるものです。
オフサイドかどうかはVARを使えば正しく判定できる可能性が高まるので、VARが導入されている試合では、旗をすぐに上げない場面が多く見受けられます。このように、VARが導入されてからは、フィールド上にいる審判たちの行動にも変化が起きています。
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サッカーのオフサイドまとめ
オフサイドは、攻撃選手が待ち伏せして得点することを防ぐためのルールです。オフサイドポジションにいて味方からパスを受けると反則となり、試合を中断してフリーキックから再開されます。
2022年7月から制定されたオフサイドの新ルールでは、守備選手の意図的なプレーによってオフサイドを判定するガイドラインがより明確化されました。
さらに、FIFAワールドカップカタール2022では、半自動オフサイドテクノロジーが導入され、オフサイド判定がより素早くできるようになります。新たなルールやテクノロジーの導入により、2022年ワールドカップは、前回のワールドカップとはまた違った試合内容になると予想されます。
オフサイドは一見ややこしいルールですが、理解すればよりサッカー観戦がより楽しくなるでしょう。応援しているチームの選手が攻撃するときに、オフサイドポジションにいないか、オフサイドをどうくぐり抜け得点に繋げるか、さらにオフサイドの判定方法などにも注目してサッカー観戦をしてみてください。