10月の某日、この日は季節外れの夏日で、私は必要以上に汗をかきながら赤坂駅に降り立った。しかし、この汗は暑さのせいだけでは無い。数週間前にインタビュアーのオファーを受けてからというもの、RAPも手に付かず毎日ソワソワして質問を熟考する日々が続き、頂いたドキュメントフィルムを何度も見直した。そんな大物を相手にする緊張から流れ落ちる汗でもあった。
Abema格闘TIMESの連載を始めてから数ヶ月、最近はもっぱらK-1やUFCなどを中心に観戦やレビューの執筆が続いていたが、自分の一番好きな格闘技はプロレスだ。そんな少年時代から見続けていた昭和プロレスの生き字引である伝説のレスラー・天龍源一郎と対面してインタビューをする……。正直言って全く現実味がなかったのだが、ドアの向こうのオフィスから聞こえる声を聞いた時に、一気にリアルのスイッチが入ったのを覚えている。