“稀代のヒール”・飯塚高史が去ったセルリアンブルーのリングの真ん中には、狂乱の象徴であるアイアン・フィンガー・フロムヘルがそっと置かれていた。
 2月21日、後楽園ホールで開催された新日本プロレス「飯塚高史引退記念大会」。結果的には大物レスラーが去るような華々しいセレモニーも、ベテランレスラーが惜別と労いの言葉の中で聞くテンカウントもそこには無かったが、中堅の技巧派・飯塚孝之としての22年、さらにヒールレスラー「怨念坊主」としての飯塚高史の11年間が凝縮された近年稀に見る引退興行となった。