所属団体の最高峰タイトルである「鳳凰位」を4度、「十段位」を5度獲得し、2018年に開幕したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」でも2シーズン連続で好成績を残しているKONAMI麻雀格闘倶楽部・前原雄大(連盟)。いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたレジェンド雀士でさえ、セミファイナルで敗退した2019シーズンは「麻雀の怖さを改めて感じた」という。Mリーグの難しさを「精神が揺さぶられる」と表現する大ベテランは、どんな逆境にも動じない“不動心”を追い求めて、63歳を迎えた肉体を鍛え抜いている。
-2019シーズンは惜しくもセミファイナルで敗退となった。
前原雄大(以下、前原)
とにかく「ファイナルにさえ残れなかった」という事実がすべてだと思います。寿人(佐々木)に頼りすぎたことも含めて、やはり我々に欠けている部分があったわけですが、平たく言うと麻雀というゲームそのものに我々が揺さぶられてしまったんじゃないか、と。麻雀の怖さをあらためて感じましたし、Mリーグという舞台の大きさを痛感させられました。
圧倒的なキャリアを誇る前原でさえ心身の消耗は避けられず、「1試合1試合の重さが違う。準備だけはしっかりしておかないと、予想もつかないような怖い結果が待っている」と語るほどの緊張感が漂うMリーグ。長く過酷なシーズンを戦い抜くために、前原は例年にもましてハードな体作りに励んでいるという。
-リベンジを期する新シーズンに向けて取り組んでいることは?
前原
5月から体作りを始めました。こういうご時世ですから、時間はたっぷりあったんですよ。年齢的なこともあるし、体は相当作りました。ウォーキングは1万2000歩を週に4、5日。主治医には「年齢を加味して8000歩にしてほしい」と言われました(笑)。なんにせよ要の体力がなければ、精神まで麻雀に揺さぶられてしまう。それは昨シーズンに身を持って経験させてもらったので、同じ過ちは繰り返せません。とにかく準備が8割だと思っています。
気力にも体力にも衰えは見られない前原だが、「僕の場合、はっきり言って若い人とは残された時間が違う。後悔だけはしたくない」と麻雀人生が晩年に差し掛かっていることは自覚している。だからこそ「前年度よりも上の数字を出していかないといけない」と自らに厳しいノルマを課す。同時に、「入場前にバックステージで音楽が鳴る。あの瞬間がすごく好きです」とMリーグならではの高揚感を全力で楽しんでいるようだ。
-2020シーズンに向けて、チームとしての手応えを聞かせてほしい。
前原
昨シーズン、高宮(まり)がまず花を咲かせました。そして藤崎(智)もMリーグの水に慣れてきた。そこにプラスアルファで僕自身が準備をしてきた部分を足せば、いい結果が待っているんじゃないかな、と。もちろん、選手の僕たちだけではなくてファンの方もみんながファミリー。ぜひ期待していただきたいですし、みなさんと一緒にMリーグという舞台で踊りたいですね。
“ゴジラ”という異名や対局中の迫力とは裏腹に、「応援してくれる人たちがいなければ、僕は戦えない。それほど強い人間じゃないんです」と率直な心境を語った前原。数え切れないほどの真剣勝負に身を投じてきた大ベテランだからこそ、麻雀の怖さにより敏感になるのかもしれない。経験がもたらした繊細さと、日々のトレーニングで培った心身のタフネスを武器に、前原は2020シーズンも麻雀格闘のリングに立つ。
◆Mリーグ 2018年に発足。2019シーズンから全8チームに。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。優勝賞金5000万円。