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 これまでクローズアップされてこなかった"精神障害者と就労"に注目が集まっている。

 そもそも精神障害とはどのようなものなのか。厚生労働省によると、精神障害者とはなんらかの精神疾患により長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある人のことだ。全国に400万人がおり、政府は症状の重さによって1級から3級まで三段階に分けて支援を行なっている。厚生労働省が支援する精神障害は、幻覚や妄想という症状が特徴的な統合失調症、うつ病など感情のコントロールが難しくなる気分障害、さらに、てんかん、アルコール依存症、高次脳機能障害などの7つ。

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 厚生労働省が去年発表した資料によると、全国の民間企業で働く障害者数は約47万人で、そのうち精神障害者の数は約4万人あまり。仕事を見つけられなかったり、見つけても長続きしなかったりと、働くことが難しいというのだ。

 こうした状況を改善するため、来年4月から新しい制度が始まることになった。

 これまで、従業員が50人以上の企業では、「法定雇用率」として、従業員に占める障害者の割合を2%以上にすることが義務付けられており、未達成の場合は一人分5万円が徴収されてきた。今回、障害者雇用促進法の改正により、その対象は身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者も含まれることになったのだ。

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 しかし、制度化するだけでは、問題は簡単には解決しない。

 「商品が売れてる時がすごく充実感を感じます」と語るのは、板倉信也さん(39)。板倉さんは29歳の時、体調に異変が起き、統合失調症だと診断された。

 「仕事をしていてよく注意をされることがあるんですけど、そういう時は家に帰ってから眠れなかったり、不安になってしまったり、動悸とかも起きてしまって睡眠不足になりますね」。

 しかし2年前、現在務めている企業が精神障害者をサポートしていることを知り、面接を受けたという。

「ちょうど自分の体調も良くなってきたと気付いたので、すぐに入社しました。会社は『障害者雇用の方にはあまり作業指示などを出さないでください』という方針ですので、すごくやりやすいです」と、職場環境に満足していると話した。

 板倉さんを採用した、まいばすけっと株式会社人事総務部の横山純也氏は「他の人と変わらないなって思ったのが正直な感想です。一旦休憩をとって回復するんだったら休憩をとって、ちょっと厳しそうって言うんだったら『じゃあ帰ってください』ってそのまま帰ってもらってます。そういう時はお店の従業員の人に一言言って協力してもらってるのでそんなに困ってないですね」と話す。

 自身もうつ病を経験した過去があり、精神障害者の悩み相談などを受ける「メンヘラ.JP」編集長の小山晃弘氏も、精神障害と社会の関わりの難しさについて、「障害が目に見えない」ということを挙げる。小山さんは、乙武洋匡さんの「障害者だけれども健常者と同じに見て欲しい」という言葉を引いて「これは素晴らしい言葉だが、精神障害者にとっては、同じに見られることがむしろハードルになってしまう」と話す。

 小山さんは、自身が編集長を務めるサイト「メンヘラ.JP」を精神障害者のライターたちと一緒に運営している。「僕も含め皆さん体調に波があるし、難しい。一緒に働く上ではいろんな壁があると思う」。

 板倉さん、小山さんが語るように、"波"があるもの、先天的なものや後天的で治癒するケースもあるものなど、精神障害の症状は人それぞれ異なっている。

 小山さんは「"障害"という言葉はパワーワード。診断を受け、"障害者になる"ということを気にされる方もかなりの数いる。でも全国に400万人いる。クラスに1人程度のことでそんなに特殊なものでもないし、誰でもなりうるもの。そんなに重く捉えないでほしい」と話し、患者本人、職場や学校、社会それぞれが精神障害について理解し、受け入れようとする姿勢が重要だと訴える。

 「福祉の問題のはずが、企業に雇用を押し付ける形になってしまうことにならないか?」という意見に対して小山氏は、精神疾患や精神障害によって学校や会社に行けなくなってしまい、孤立するという問題があることを挙げ、「働くというのは人間にとって大事なこと」と反論。「社会と繋がっている、社会に必要とされている、社会の中で生きていくという実感をもつには、やはり働くという形が大事。福祉としてお金を出されても幸せになる人は多くないと思う。企業にも社会的な責任がある」とした。

 それでも小山さんは障害者雇用促進法という制度化に関して「一つの進歩、ステップだと思う」と話す。精神障害者にとってはこれまでハードルが高かった就活問題も、この制度化により和らぐ可能性があるからだ。

 その一方、「企業、政府の側が"助けてあげる"という、親子のような関係ではうまくいかない。精神障害者の側も社会に溶け込むために、様々な努力をしなければならない。来年4月以降、たくさんの摩擦が出てくると思う」として、患者と企業、社会のさらなるコミュニケーションの必要性を訴えた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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