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 痴漢行為を疑われ、逃走するケースがここ数カ月相次いでいる。

 5月18日の午後10時20分頃、JR京浜東北線・川口駅のホームから降り線路内に立ち入ったとして、35歳の男が鉄道営業法違反の疑いで現行犯逮捕された。男は「痴漢に間違われたと頭がパニックになり、逃げなきゃいけないと思った」と話しているという。

 警察によると、男は逃走する直前、電車内で居眠りをしていて面識のない女性の上着に手に持っていたウーロン茶を誤ってかけたとしてトラブルになり、女性とともに川口駅で下車。その後、線路に飛び降りて逃走したが、柵を乗り越えた先で近くにいた人に取り押さえられた。男は鉄道法違反容疑では釈放されたが、電車を遅らせるなど川口駅の業務を妨害したとして、19日に逮捕された。

 15日には、東急田園都市線・青葉台駅で、痴漢行為をしたとして女性に訴えられた男性が突然駅員を振り払って線路に飛び降り、電車にはねられて死亡した。また、上野駅近くのビルの間で男性が転落死した事件でも、男性はJR京浜東北線で痴漢を疑われ逃げていた。4月には新宿駅、両国駅、板橋駅、3月には池袋駅、赤羽駅、御茶ノ水駅で痴漢を疑われた男性が逃走している。警察庁によると、平成26年の迷惑防止条例違反痴漢事犯の検挙数は3439件(電車内外含む)、電車内における強制わいせつ認知件数は283件だ。

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 ネット上には「痴漢を疑われたら逃げた方が良い」という声があふれている。ツイッターでは、

「痴漢はな、冤罪だろうとなんだろうと関係なくてな、女性が100%勝つからな」

「やってもいないのに痴漢行為と認定されると会社クビ、家庭崩壊、前科付、これでは逃げるしかないべ」

「職も家族も信用も全て失うような今の法律のあり方じゃ、そりゃ線路も走るよなぁとしか思えない」

 といった書き込みを見ることもできる。

 しかし、“痴漢を疑われたら逃げる”という対応は、現在は間違っているという。

■痴漢は供述に頼った立証が比較的多い犯罪類型

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 おおたかの森法律事務所所長弁護士の三浦義隆氏は、「各都道府県の迷惑防止条例違反の場合は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金。強制わいせつ罪の場合はもっと重くなって6カ月以上10年以下の懲役となる」と、痴漢で適用される量刑を解説。一般的には、着衣や下着の上から触れたものが“条例違反”で、下着の中まで手を差し入れた場合が“強制わいせつ”になるという。

 リディラバ代表の安部敏樹氏は、痴漢冤罪について「推定無罪(※)が守られているかというとかなりあやしいところがある」とコメント。実際に痴漢冤罪の当事者となった人の話では、「裁判の労力がかかり過ぎるので、同じことがまたあったらやっていなくても認めて示談で終わらせたい」と語ったという。

※推定無罪…「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という近代法の基本原則

 三浦氏は「強制わいせつの事案で性器を触っているような場合であれば体液など物証が出やすい。下着を触った場合も微物鑑定といって手についた繊維片などを取ることによってある程度の物証が手に入ることもある。ただ必ずしも物証が手に入るものではないので、そういう場合は主に被害者や目撃者の供述、被告人の弁解などに頼った立証になる」と説明する。供述に頼った立証が比較的多い犯罪類型だという。

 また、線路に逃走する心理としては、「捕まって、勾留されて、当分出してもらえない。会社もクビになるかもしれない。学生なら学校に行けない。仮に無実の罪であっても分かってくれないかもしれない。そうすると、人生が台無しになってしまう。最終的に無罪判決を勝ち取っても、そこまで2年も3年も費やすのであれば、一か八か逃げた方がましだ、と考える人が多いのだと思う」と推測した。

■三浦氏「2017年現在では逃げるべきではない」

 痴漢を疑われたときの対応として、「2017年現在では逃げるべきではない」と三浦氏は話す。その理由は、「いけないことだから逃げるなというのではなくて、逃げた方が損だからだ」という。逮捕されると、警察の取り調べや勾留で最大23日間身柄を拘束される。以前は、認めている人は釈放される、否認すると勾留されるというのが当たり前だったが、痴漢事件に関しては、今は否認をしても勾留されないケースの方が多いという。

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 では、実際に痴漢だと疑われてしまった場合、現実的にはどのような対応をすればよいのだろうか。

 現行犯逮捕は警察官でなくてもできるため、逮捕されないようにするのが一番だと三浦氏は説明する。逮捕自体を避けるためには「その場で身分をきちんと明かして、後日の呼び出しに対応できることをきちんと示して、平穏にその場を立ち去ること」が必要だという。逃亡するのではなく、「絶対に駅事務室などに行かず、身分を告げて平穏に立ち去る。立ち去れなければ弁護士を呼ぶ」のが正しい対処だという。

 駅事務室に行ってはいけない理由について、三浦氏は「駅事務室に行ってしまうと、(痴漢を疑われた)本人は任意で自分の意思で行ったつもりでも、私人によって現行犯逮捕されていて、その身柄を警察が取ったという扱いになってしまう。そうなるリスクが非常に高い」と説明する。裁判で、袖をつかんだだけで逮捕と認定された事例もあるという。

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 さらに、「平穏に立ち去ればいいと言ったが、現実問題、囲まれて立ち去らせてもらえないケースがよくある。その場合は、どこかに連れていかれそうになっても拒んで、駅のホームならそこを動かずに、弁護士を呼ぶ」と次の対応について解説した。

 面識がある弁護士がいないという人は、時間外の電話受付をしている弁護士事務所を調べておき、そこに電話をするのがお勧めだ。また、「弁護士トーク」というアプリもあり、弁護士に24時間問合せが可能だという。ほかにも痴漢冤罪のための保険もあり、月額590円で接見などの費用を賄える。

 最後に三浦氏は、「それでも逮捕されたら、必ずすぐに当番弁護士を呼んでください。無料なので」と補足した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

AbemaPrime "痴漢疑いで逃げろ"はフェイクニュース!?弁護士が徹底解説 | AbemaTV
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