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 仮想通貨取引所「Coincheck(コインチェック)」から580億円相当の仮想通貨NEMが流出した事件。金融庁は29日、同取引所を運営するコインチェック株式会社に対し業務改善命令を出し、流出に関する原因究明や内部監査からセキュリティチェックを受けることなど再発防止策の策定を指示している。

 仮想通貨の中でも代表的なのがビットコインだが、それ以外の仮想通貨(オルトコイン)の人気も高まってきており、流出したNEMもそのひとつだ。コインマーケットキャップのまとめによると、ビットコインの20兆円を筆頭に、仮想通貨全体の市場規模は時価総額で62兆円にも上る。そのうち、NEMは9000億円に達していた。

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 マネーロンダリングへの対策などが不十分として金融庁の仮想通貨交換業者には認められていなかったコインチェック。みなし業者として営業する中で、今回安全管理の不備を突かれた形となった。

 「若いメンバーが頑張ってらっしゃって、業界の発展にも貢献していた会社。アグレッシブなのは若さゆえのいい面であるとも言えるが、事業者として、あれだけの額をホットウォレットに放置していたのは言い訳ができないレベルだと思う」。

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 30日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したビットバンク株式会社代表取締役CEOの廣末紀之氏はそう話す。

 2012年に設立されたコインチェック社は、ビットコインをはじめ、NEM、イーサリアムなど、業界内でも最多の13種類の仮想通貨を取り扱っていた。しかし現在、日本国内でNEMを取り扱っている仮想通貨取引所は32社のうち3社のみだ。

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 NEM人気の背景について廣末氏は「日本のとある仮想通貨の会社さんが非常に深くNEMに絡んでいて、プロモーションも行われていた。それによって関心を持たれる方が増えた。また、技術的にも先進的なチャレンジをやっていたようなので、そういうところが評価されたのでは」と説明。

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 また、自社が運営する仮想通貨取引所でNEMを扱って来なかった理由について廣末氏は「お客様に提供するためには、これは絶対大丈夫だという確信がないといけないと考えている。仮想通貨によってはプロトコルの中身がブラックボックスになっているものもあり、取り扱うのは危険だ」と指摘、「もちろん体制が整っていて、それぞれの仮想通貨のプロトコルを熟知し、セキュリティ上の問題にも対応できるメンバーいるのであれば問題ないだろう。コインチェック社が、それぞれの仮想通貨に対して、どこまで確信を持ってやられていたのかはわからない」とした。

■463億円、「自己資金で払える目処があるのでは」

 取引高が4兆円を超える月もあったというコインチェック。ユーザーが仮想通貨を売買した際などの手数料が収益源で、海外の取引所で安く仕入れた仮想通貨を高値の時に利益を載せて販売することでも巨額の利益を上げていたという。今回、流出通貨の保有者26万人に対し約463億円を現預金などで補償すると発表しているが、資本金9200万円の同社にとって、500倍にも上る補償金の支払いは可能なのだろうか。

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 廣末氏は「おそらく自己資金で払える目処をもってらっしゃるのではないか。コインチェックは販売所形式で、安く持っている在庫を言い値で売ることもできたし、手数料も高かったので、支払いのための原資を得られていた可能性はある」と話した。

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 今回の流出事件を受けて、他の仮想通貨取引所も対策を強化している。bitFlyer(ビットフライヤー)はコールドウォレットで管理する仮想通貨を全6種類にまで広げ、ビットバンク社も、外部からの不正アクセスをいち早く検知する仕組みを整えるという。

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 それでも、当局の規制強化は避けられなさそうだ。

 麻生太郎金融担当相は30日午前、記者団に対し「仮想通貨の交換業者のシステムに関する管理体制を強化する必要があると考えている。緊急の自己点検の要請を行い、必要に応じて立入検査の実施を検討している」と述べた。29日の衆院予算委員会でも「基本的知識というか常識に欠けておるかなという感じがしますな」などと今回の事件について言及している。

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 廣末氏は「金融庁はこれまで比較的フレンドリーな扱いを受けていて、イノベーションを促進させるためにも頑張ってくださいという姿勢だったが、今回のことで利用者保護の面を強化せざるを得ないと思う。利便性とセキュリティはトレードオフの関係にあるので、運営コストが上がり、結果的に手数料という形でお客様の負担になることも否めない」との見方を示した。

■「仮想通貨の先は明るいと思う」

 慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授は「ITベンチャーの成功といえば10億円くらいだったのが、仮想通貨ビジネスでは出来てすぐの会社が数百億、1000億の規模と、誰でも知っている企業のようなレベルに達している」と驚きを隠せない様子で、「しかし、株価の裏付けには企業の業績があったり、為替の裏付けにも国の実態や信頼があるが、仮想通貨は何かに基づく価値というよりも、"可能性"だけが独り歩きして、

 単に売り買いだけで激しく値段が変わっている。それを現金の価値に置き換えて大丈夫なのか」と疑問を呈する。

 元経産官僚でコンサルタントの宇佐美典也氏は「定義と実態が離れてきている。全体の量が決まっているものを採掘していくので、通貨というよりも、金などの貴金属に近いイメージだ。それが法定通貨に交換できるところに価値を見出しているので、仮想通貨というよりも、"仮想資産"のようになっている。これはこれで定着していくと思う」と話す。

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 廣末氏は「仮想通貨のフェアバリューを考える理論的根拠がないので難しい。構造や仕組みを知らず、ただ"値段が上がりそうだから買うんだ"というお客さんが多いのもバブルの兆候だと思う」としながらも、「例えるなら、"お金版のインターネット"だと思う。インターネットそのものに値段が付けられないように、仮想通貨にネットワークインフラとしての価値があるとすれば、ビットコインの20兆円という時価総額も安いくらいだと思う。人間だけが使うお金ではなく、ソフトウェアやロボットが使うお金になるかもしれない。そういう未来を想像している。将来どうなるか保証はできないが、世界中の開発者が進化させようとしているし、叡智が結集されているものなので、先は明るいと思う」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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