伊勢谷容疑者逮捕で“大麻論争”再燃 日本は本当に時代遅れ? 危険な「酒より安全」「海外の研究では…」の議論
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 大麻取締法違反の疑いで逮捕された俳優の伊勢谷友介容疑者が10日朝、送検された。昨日の取り調べで伊勢谷容疑者は「この大麻は自分が吸うために持っていたものです。大麻についての認識は、日本では法に触れることは理解しています」と容疑を認めたという。

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 その後の関係者への取材で、3つの箱に入ったたばこの巻紙およそ500枚が、乾燥大麻の保管されていたテーブルの上から見つかっていたこともわかった。また、今年の早い段階で「伊勢谷容疑者が大麻を持っている」という情報が関係者から寄せられ、本格的な捜査が始まっていたという。

 実力派俳優の逮捕に驚きの声が上がる中、最近は大麻の所持で著名人が逮捕されると毎回議論される話題がある。「大麻はそんなに悪なのか」と、インターネット上では大麻に関わる法律や世間の目を疑問視する声が相次いでいるのだ。

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「大麻、酒なんかよりも安全」

「医療用大麻があることを考えれば、大麻をやる人=極悪人みたいに煽るのはおかしい」

 “大麻には害がない”と主張し、そしてそれを根拠に合法化を訴える声も。海外での研究などの情報もネットで出回っており、覚せい剤などと一緒に「ダメ、絶対」と言われていたが、大麻への印象が若者を中心に徐々に変わりつつあるのが現状だ。

 大麻は安全なのか、それともやはり危険なものなのか。元麻薬取締官の高濱良次氏に聞いた。

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 「大麻は六十数種類くらいの成分が入っている。主成分のTHC以外に六十数種類。その大部分の成分が脳や体にどういう働きをするかわかってない。だから危険だということで日本は禁止している」

 分かっていない部分が多いため、容易に扱ってはいけない――。厚生労働省も大麻を実際に使用した人の影響として、「話したことをすぐに忘れてしまう」「テレビゲーム世界に入り込み、痛みを感じた」など様々な例を紹介し、大麻の危険性を指摘している。

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 また、解禁の動きが進む海外と今の日本の現状を比較する声があがることについて、「外国では扱うマフィアの資金源にならないように、認めることで財政が増える。財政が増えた金を教育に使えるなどということで、海外では解禁が進んでいる」と、あくまでも健康面よりも財政面を重視した結果の解禁ではないかとみている高濱氏。

 そして、今の若者の現状について次のように警鐘を鳴らした。

 「若者は遵法精神が弱く、知りたいという意欲が人一倍強い。人から勧められて『大麻いいよ、吸ってみなよ』と言われると興味を示す。若者は学校教育だけでなく、インターネットを見れば“イエス”も“ノー”もあるわけだから、あとは自分の責任で選択するしかない。そこで、興味のあるイエスの方に傾いてしまう。『1回だけならいいだろう』『やってみよう』『どんなものかな』と思ったら1回で済まなくなるから、こういった薬物問題が起きてくる」

 “大麻論争”の再燃について、メディア企業を運営するニュース解説YouTuberの石田健氏は「過剰な報道の結果としての社会的制裁」「大麻の安全性・危険性」を分けて考えるべきだと指摘する。

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 「専門家や国際機関のガイドラインが出ているように、何度も繰り返し報道したり、『あの人がまさか』といった声、あるいはなぜ薬物を使ったのかといった憶測を報道するのはよくない。むしろ、医療機関や周囲の人の助けによって、依存症を脱することができるといったメッセージが大事だとされているので、まずこの部分を認識する必要がある。

 ネットでは特に『アルコールやたばこより安全だから大麻を解禁しよう』『日本は遅れている』といった議論が先行しがちだが、そもそも国全体として大麻を解禁しているのは2カ国しかない。州・自治体レベルで議論が進んでいるところはあるが、日本が遅れているとまでは言えないというのが1つ目の誤解。加えて、安全だから解禁されたと誤解する人は多いが、そうではない。ブラックマーケットで流通したりギャングやマフィアの資金源になったりと様々な要因を勘案して政策が決まる。大麻は安全だから解禁しようと言うのは、こういった細かい議論に目を配っていないという意味で、一足飛びの話になっている」

 また、安全性の証明として、1つの論文などを信用するのは危険だという。エビデンスレベルという科学的根拠の信頼性を見た時、最も低いのが著名人のコメントで、事例研究やコホート研究(要因と発症の関連を調べるための観察的研究手法)、RCT分析(ランダム化比較試験)と信頼性が上がっていく。最も高いのが、複数の研究結果を結合しより高い見地から分析するメタアナリシスで、根拠に基づく医療において“最も高い根拠”とされる。

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 石田氏は「メタアナリシスやシステマティックレビューと呼ばれるような研究手法に基づいた議論なのかを丁寧に見る必要がある」とした上で、「特に著名な人のコメントで、言い切っているところを見ると『そうなんだ』と直感的に思ってしまう。一方で、医学的、社会的な政策が決まっていくプロセスは複雑で、結論は当たり障りがないことが多い。そういうものよりもなんとなく新規性があるもの、インパクトがあるような発言の方が広まりやすいというのは、非常に問題視されていることだが注意してみないといけない」と述べた。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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