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 「メジャーデビューは4回くらい」「20年間順風満帆に音楽をやってきたわけではないんです」そう話すのは、アニメ『けものフレンズ』のオープニングテーマ「ようこそジャパリパークへ」の作詞・作曲で知られるシンガーソングライター・大石昌良だ。

 2019年3月、平成アニソン大賞において「ようこそジャパリパークへ」が作詞賞、「君じゃなきゃダメみたい」(テレビ東京系アニメ『月刊少女野崎くん』のオープニングテーマ)が作曲賞を受賞するなど話題を集め、プライベートでは2020年7月31日に一般女性との結婚を発表するなど、一見、順風満帆そうに見えるが、実はかなりの苦労人。そんな大石が音楽業界に足を踏み入れる若者たちに伝えたいこととは。

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ーー大石昌良さんが、音楽業界に入ったきっかけと、その後、アニソンの世界でも活躍するようになった経緯を教えてください。

大石:もう20年くらい前なのですが、大学時代からSound Scheduleというバンドをやっていて、レコード会社から「一緒に仕事をしませんか」と言われてメジャーデビューに至ったことが、音楽業界に入ったきっかけです。それが21歳の頃なんですけど、そこからバンドやソロ活動をしていく中で、アニメ音楽と出会い、アニソンアーティストのオーイシマサヨシとしてデビューしたのが35歳くらい(2014年)だったので、結構周りからは遅咲きと言われたりしましたね。

 それと僕はメジャーデビューを4回くらいしているんですけど、仮にメジャーデビュー協会というのがあったとしたら「お前、怒られるぞ」と言われたりもしているんですよ(笑)。そのくらい音楽業界に食らいついて、20年間生きてきたと思っています。

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ーーデビューから培ってきたものが、アニソンの世界ですごく花開いている印象もあります。

大石:確かにそうですね(笑)。音楽活動をやりながら貯蓄してきた技術だったり、音楽の作り方だったりを、アニメ音楽の世界で発揮させてもらっているので、それらが日の目を見た瞬間だったのかもしれないです(笑)。

ーー大石さんは『歌カツ!~歌うま中高生応援プロジェクト~』という番組でも講師として参加されています。それも、これまで培ってきたものを活かせる場なのかもしれませんね。

大石:いやぁ……それはそうなんですけど、実はこのオファーをいただいたときに、二つ返事でオッケーをしたわけではなく、少し考えさせていただいたんですよ。というのも自分が教える立場になるということがなかったし、ずっとチャレンジャーでいたからこそ遅咲きできたので、いざ人の上に立って教える立場になったとき、実際に役に立つことができるのかな?と考えたんですよね。ずっと「僕みたいな者が……」という気持ちでいたから、教えられることなんてないんじゃないのかなと。

 でも、自分も40歳になって、これはいい機会なのかな、いい経験になるかなとも思えたので、受けさせていただきました。だから、最初の収録はドキドキしていましたね(笑)。

ーー今回は、シンガーソングライターを目指す、5人の才能ある若者が集まりましたが、収録をしていかがでしたか?

大石:たまたま集まったのが女の子ばかりだったんですけど、これから音楽で成功するためにはどうしたらいいかを考えている子たちばかりなので、そこで多少なりとも自分が道標になれたらいいなという気持ちだったんです。でも、シンガーソングライターとなると、今はギターだけではなく、歌詞だったり、佇まいだったり、自分の見せ方や動画の撮り方に至るまで、多角的に教えなければならなかったので、そこは難しかったです。

シンガーソングライター・大石昌良「認められない才能はないと信じてる」 音楽業界に食らいついてきた20年
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▲新番組『歌カツ!~歌うま中高生応援プロジェクト~』

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ーーでも、すごく的確にアドバイスをされていましたね。

大石:僕も言ってしまえば苦労人で、20年間順風満帆に音楽をやってきたわけではないですし、メジャーデビューがゴールでないことも重々分かっている立場なので、この短い1カ月というクールの中で、彼女たちにとって実りのあることを教えられるのかを考えに考えた末に、いま一生懸命カウンセリングをしている感じなんです。それと、この番組の中だけで終わらせたくないという思いも、実はあるんですよね。

ーー番組的に、オーディションというスタイルを取っていますが、それがすべてではないですよね。「その才能をどうやって輝かせてあげようか」という大石さんの思いは伝わってきました。

大石:だって、歌を聴いて泣きましたからね(笑)。あきらかに僕には書けない曲を、彼女たちは書いているんですよ。それはゴールデンエイジじゃないと感じられない感性だったり、そのときにしか落ちてこない言葉やメロディーだったり、それに彼女たちは真っ当に向き合って音楽を作っているんです。今の僕にはその曲は書けないわけだから、それに関しては彼女たちのほうが僕より長けているので、そこで何かのきっかけになるようなことを教えることができたのは、とても楽しかったです。

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ーー収録も残りわずかだそうですが、音楽業界を生きてきた大石さんが参加者に伝えたいことは、音楽を続ける上で大事なことは、どんなことですか?

大石:どこまで行っても自己責任ということですね。自分で開拓していくしかない。それが今、音楽をやる上で一番大事になってきていると思います。だから自発的に動くことの大切さは彼女たちに分かってほしいなと思っています。僕はヒントは出しますが、次にこれをしてきてねということは言わないようにしているんです。宿題は与えていますけど。たとえば動画の撮り方ひとつとっても、アドバイスをしすぎず、相談するというスタンスは崩さないでいました。

 それは、僕が教えたいことがセルフプロデュース能力だったからです。実はギターのスキルより、メロディーセンスより、歌詞を書く手法よりも、いちばん大事なことは、自分をどう見せるかに、自分が自然に気づけているかどうかなんです。そこに早く気づいてほしいなと感じています。

ーー今はそれができる人がたくさんいて、実際にそういう人が成功しているんですよね。

大石:結局、自分で自分をプロデュースできたなら、いくらでも音楽で成功する道筋があるんですよ。何ならメジャーデビューをしなくても音楽で成功できる時代になってきているので、この番組をひとつのきっかけにして、そこから派生していければいいんじゃないかなと思っています。

 ひとつ、僕の人生観というか、人生の指標としていることで、「認められない才能はない」というのがあるんです。才能を扱う人間として、そこは信じているんですよね。だから認められなかったときは、自分の歯車がおかしいとか、うまくいってないんだと自覚できる。それもひとつのセルフプロデュースなので、残る時間で、そういったところを彼女たちに叩き込めたらなとは思います。

ーー少し、大石さん自身のことをうかがいます。大石さんが音楽をしてきて、これは感慨深かったなというエピソードはありますか?

大石:一番脚光を浴びたのはTVアニメ『けものフレンズ』の「ようこそジャパリパークへ」(どうぶつビスケッツ×PPP)だったと思いますし、実際にプラチナディスクもいただけたんですけど、感慨深かったのは、この曲が、運動会のBGMとして使われていたり、吹奏楽部に演奏されたりしていたことです。僕の音楽人生のひとつの目標が、“みんなのうたを作る”だったんですけど、老若男女に愛される楽曲という意味では、作品の力を借りてはいますけど、一番近い楽曲が作れたんじゃないかなという自信にもつながりました。

 一部の人に局地的に受ける楽曲を作るというのも正解ですけど、僕の音楽人として、そしてシンガーソングライターとしてのスタンスは、みんなに歌われる楽曲を作ることなので、この1曲だけではなく、これからもそういう楽曲を作っていけたらいいなと、今も煌々とエネルギーをたいている状態です。

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ーー今度はプロデューサーとしての目線になるかもしれません。サブスク時代とも言われていますが、今後の音楽はどうなっていきそうですか?

大石:よりコラボ色が強くなっていくのかなと思います。たくさんの方々が手軽に音楽を聴ける時代になったので、たとえば音楽×映像とか、アーティスト×アーティストとか、掛け合わせや組み合わせを楽しむような時代になっていくのではないかなと。そして、やっぱりそこでも大事になってくるのはセルフプロデュース能力で、自分をしっかり持っていることが大事になると思います。

ーー自分の個性や武器は何なのかを自分で知っていることは大事になりますね。

大石:実力があって当たり前、曲が作れて、ギターが弾けて、歌えて当たり前の時代になってきているので、ひとりで会社を作って、他の会社と一緒に何をするかっていう時代になって来ているんですよね。

ーーますます大変な時代になってきていますね……。では、番組の視聴者やシンガーソングライターを目指す人たちにメッセージをお願いします。

大石:シンガーソングライターは、何でもできてしまう職業で、『ファイナルファンタジー』で言えば、パラディンみたいな職業なんです(笑)。でも、何でもできてしまうがゆえに、楽曲提供など、仕事の幅もどんどん広がっていくから、自分を見失ってしまいがちというデメリットもあるんです。そこのバランス感覚というのはすごく難しいので、いつでも学ぶ姿勢を崩さないことが大事だと思っています。本当に覚えることが多い業種なので、いろいろなことを学んでいった上で、バランスが取れるようにならないと、シンガーソングライターとしては成り立たないと思います。

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(撮影:You Ishii)

(取材・文:塚越淳一)

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