8日、東京・池袋で車を暴走させ、母子をはねて死亡させた罪などに問われている飯塚幸三被告の初公判が開かれた。公判後、遺族らが会見を行った。
旧通産省・工業技術院の元院長飯塚幸三被告(89)は昨年4月、豊島区で車を暴走させ、松永真菜さん(当時31)と娘の莉子ちゃん(当時3)をはねて死亡させたほか、9人に重軽傷を負わせた罪で起訴された。
遺族である松永拓也さんは会見で「事故から1年半経ち、ようやく第1回公判を迎えることができた。この1年半のあいだ、私たち遺族は本当に悲しみと苦しみと向き合いながら生きてきた」とコメント。
【会見映像】池袋母子死亡の遺族ら「これだけ大きな事故が、軽い罪で終わってはいけない」
初公判の冒頭で飯塚被告は遺族らに謝罪したうえで「アクセルを踏み続けたことはなく、車に何らかの異常が発生して加速したと思っています」と述べ無罪を主張。松永さんは飯塚被告のこの主張に「調書を見て、予め否認されるだろうなということは予想していた」と話す。
「改めて加害者の口から『アクセルを踏み続けた』ではなく、あくまで『車の不具合』だと、罪状認否を聞いた。(車の)暴走を止められなかったことは申し訳ないが、あくまで『車の不具合』ということを言っていた。最初にこちらに対して申し訳なかったという言葉を述べられていたが、車の不具合を主張するのであれば、私は謝って欲しくはない。謝るならしっかりと罪を認めて、判決が出た後に、本当に申し訳ないと思うのであれば、(謝るのは)そのときでいいと、私は思っています」
「予想していたこととはいえ、残念でならない。本当に妻と娘の命に向き合っているのか、私たち遺族は無念でなりません。加害者の心の中は読めませんが、取材で答えている言動と、あくまで私が受けた今日の印象では、とても二人の命と遺族の無念に向き合っているとは思えませんでした。真実が明らかになることによって、この先このような事故が起こらないためにはどうしたらいいんだろうという議論にもつながりますし、これだけ大きな事故が、軽い罪で終わってはいけない、前例を作ってはいけないと私は思います。しっかりと真実を追求して、遺族としてできるかぎりのことをやっていきたいと、改めて思いました」
▲事故当時の状況
また、死亡した松永真菜さんの父親である上原義教さんは「悔しくて悔しくてなりませんでした」と無念を語った。
「こういう人に私の娘と孫を奪われたのだと思うと、とてもつらくて苦しくて。そういう思いでいっぱいでした。私たちが今どんな思いで生きて生活しているのか、彼が反省しなければしないほど、私たちと同じ苦しみを味わってほしいという思いでいっぱい。私が今ここにいて、生きていられるのもたくさんの人たちの署名活動や全国からたくさんのお手紙をいただき、その1つ1つに励まされてきたからです」
「(飯塚被告には)本当に反省いただいて、罪を償っていただきたい。私たち遺族一人一人の気持ちに向き合っていただいて、生きていってもらいたいです」