任命を拒否された岡田正則教授「“選べない任命”もある」「政府から完全に独立した組織を作るのは難しい」 日本学術会議問題
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 日本学術会議が推薦した6人の会員候補の任命を菅義偉総理が拒否した問題。

 8日の参議院内閣委員会では、野党が1983年の「政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております」との中曽根康弘総理(当時)の答弁を根拠に政府を批判。

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 これに対し、内閣府の大塚幸寛官房長が「推薦の通りに任命しなければならないというわけではない、という考え方も、任命制の導入以来一貫しているところでございまして」、内閣法制局の木村陽一第1部長も「このことが学問の自由を制約することにはならないというふうに考えている」と答弁した。

 総理の「任命権」はどうあるべきなのか。8日の『ABEMA Prime』では、任命を拒否された6人の1人、岡田正則・早稲田大学法学部教授(行政法)に話を聞いた。

■「手当ても2、3万円くらいだし、みんなボランティア精神でやっている」

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 日本学術会議の会員について、“6年間のおつとめ”と表現する岡田教授。

 「会員になることで、“優れた研究業績がある人だ”と少しは認めてもらえる部分はあるが、手当ても2、3万円くらいだし、みんなボランティア精神でやっているというのが実情だ。全国の学会を支え、政府に対して自分の専門研究領域とは違う分野、例えば遺伝子技術やAI技術の利用や政策はこうあるべきだ、といった提言について考えるのは時間と手間がかかる。ただ、そのために自然科学の人、哲学の人、歴史の人、法律の人などが一緒になって真剣に議論をする。そういう場が得られるということは研究者にとってのメリットだと思う」。

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 そのため、自身の任命が拒否されたと聞いた時は「それが免除されるわけだから、あ、行かなくていいんだ」とも思ったと明かす。同時に、「ただ、それは私個人の問題であって、自分が楽をすることで、しわ寄せは他の研究者に行く。必要な提言はまとめられるべきだし、私たち6人が欠けたことで、本来作られるべきだった分科会が作られなくなってしまう可能性もあると感じた」話した。

 また、任命拒否の理由については「分からないが、それが狙いだと思う。つまり、“胸に手を当てて考えてみろ、何か思い当たるところがあるだろう”と。私たち6人を晒し者にすることで、学者の皆さんに、“思い当たるところがあるのであれば、そういうことをやめなさいよ、政府を批判するようなことをすると、補助金がもらえなくなるかもしれない、国の施設やサービスを受けられなくなるかもしれない”といった疑心暗鬼を呼び込もうということなのではないか。そして学者というのは大人しい人たちだから、すっと引いていてしまう。これは非常に良くないことで、政治を預かっている者として、最低限の責任は果たしてほしい」と訴えた。

■「政府から完全に独立した形で、日本学術会議のような学者の連合体が作れるだろうか」

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 日本学術会議法では「日本学術会議は内閣総理大臣の所轄とする」と定められており、総理に推薦された人事案を拒否する権利はないというのであれば、「任命権」はないのではないか、との指摘もある。

 岡田教授は「選んできたものをその通りに任命しなければならない、“選べない任命”というのもあるということだ。例えば内閣総理大臣を任命するのは天皇だが、選ぶのは国会であって、拒否する権限はない。内閣総理大臣が所轄する、というのは、内閣総理大臣のところで事務を扱うというだけで、実際は独立した機関である日本学術会議という組織が担っている。だから形式的に任命するということはあるけれども、誰を会員にするか、どうやって運営するかというのは学者の代表の会員が自分たちで決める。それが日本学術会議法という法律で決められていることだ」と説明。

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 また、「裁判官は内閣が任命するが、選ぶのは最高裁判所であって、内閣に拒否する権限はない。現実には“この人はいい、この人は悪い”と選べるような場合が多いのでそう理解されるかもしれないが、内閣が“この裁判官はいいが、この裁判官は嫌だ”というようなことを言っていたら、日本の裁判所は大変なことになってしまう」と説明した。

 こうした議論の中には、年間およそ10億円の予算も念頭に「日本学術会議の独立性をより高めるべきだ」との指摘もある。2015年に設置された「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」では、「安定的な運営を行うためには国の予算措置により財政基盤が確保されることが必要」としつつも、「財政的な独立性、政治的な独立性といった観点も重要ではないか」との意見が出されている。

 岡田教授は「研究者だけで完全に独立した組織を作るというのも一つの考え方だと思う。しかし今の日本で、日本学術会議のような学者の連合体が作れるか、ただでさえボランティアでやっている状況なので、そこが問題だと思う」とコメント。お笑いタレントのパックンは「政府が自らの中に“ブレーキ役”を抱え、政策に対する反論を出してもらうことに意味があると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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