豊富な将棋コレクション 常磐ホテル・営業部長の“口捌き”が半端ない「引き出し多い」「盛り上げ上手」と話題に
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 溢れる将棋愛と、営業部長の肩書通りの絶妙トーク。約20分間に渡る“口捌き”で、目も耳も肥えた将棋ファンたちをうならせ、笑わせた。10月14日に行われた将棋の王座戦五番勝負第5局の会場となったのが、山梨県甲府市にある「常磐ホテル」。政府登録国際観光旅館で、“甲府の迎賓館”とも呼ばれる名宿だが、ここの執行役員営業部長を務める小沢行広さんのトークも絶品だった。同日、中継していたABEMAに生出演を果たすと、約20分間に渡り、宿で集めた豊富な将棋コレクションの魅力、さらには自らの将棋愛をこれでもかとばかりに語り倒した。この様子がファンの間では「引き出し多い」「盛り上げ上手」「営業うまい」と話題になった。

【動画】将棋愛溢れる営業部長の熱いトーク

 常磐ホテルは創業1929年、来年で90周年を迎える歴史ある宿。名作家たちが定宿にしていたほか、将棋・囲碁のタイトル戦を行う場所として知られる場所だ。番勝負では、必ず行われる第1局、第2局ではなく終盤に入ることも多いことから、開催されない年もあるが、一方で14日の王座戦第5局のように注目の決定局になることも多い。今年は、永瀬拓矢王座(28)の初防衛&九段昇段が決まる場となったが、対局の合間に登場した小沢営業部長の語りぶりは、決定局の気分を盛り上げるには最高のものだった。

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 コロナ禍で一時は大きく客足が減ったこともあったが、今ではコロナ禍以前と同等にまで回復しているという小沢営業部長。玄関先での指先の消毒、検温などを徹底しているという、このご時世としてはお決まりとも言えるところから約20分間のトークはスタートした。将棋・囲碁のタイトル戦は「一番古いもので1954年、今から66年前です」という宿と将棋の関わりを紹介するのも“定跡”だが、ここで一工夫入れた。「はるか昔のことで。こう見えても私は生まれておりませんで、従業員の誰も記憶にありません」と突然、自分の年齢についての一手を繰り出した(小沢営業部長の年齢は明かされないままだった)。2008年以降、毎年将棋のタイトル戦が行われ、全11局中、王座戦が5局で最多とのことだが、ここでも「(主催の)日経新聞さん、ありがとうございます」と、次の一手。このあたりから視聴者たちも「日経www」「日経ヨイショw」と、何かに勘付き始めた。

 永瀬王座が昼食に頼んだ「海鮮丼・和小箱ランチ」、挑戦者の久保利明九段(45)が注文した「シェフ特選ビーフシチュー」についての説明では「何でもおいしいと『勝手に』思っております」と、言葉の端々に何かひねりを入れてくるあたりが、小沢営業部長の棋風だろうか。宿近辺のおすすめスポットについて聞かれても「まずは『建前上』、一番の名所は常磐ホテル。『将棋の伝統・常磐ホテル』ということになっておるんですが…」と、またひねる。次々と繰り出される妙手に、スタジオで聞き手を務めていた山口恵梨子女流二段(29)も堪えきれずに吹き出し、視聴者のテンションもさらにアップ。「建前きた」「小沢さんトークいけるぞ!」と、形勢は完全に優勢になった。

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 そんな小沢営業部長が胸を張って紹介したのが、豊富なコレクションが並ぶ将棋の展示コーナー。数々のタイトル戦を記録した記事や写真、多くの棋士の揮毫が記された色紙などが、大量に並べられている。かの天才棋士・藤井聡太二冠(18)が、七段時代に書いたものも飾られていた。「金庫の奥や棚の奥、手の届かないところに飾っておくのではなくて、本当に間近で見ていただけるところにディスプレイしております」と、自ら顔を近づけてみせると、「本当に『手に取っちゃう』といろいろな問題が発生するんですが、私どものお客様には、そのような方はいらっしゃらないという風に思っております」と、盗難の不安については顧客を信じる姿勢を、ユーモア含みで伝えてみせた。

 満を持して紹介したのは、斎藤慎太郎八段(27)に関するエピソード。2年前に行われた王座戦五番勝負で、斎藤八段は初タイトルをこの宿で獲得した。「勝った直後の斎藤先生の笑顔が非常に印象的でした。携わるみんなが、いい笑顔だったねとおっしゃっていた」と目を細めたが、寄せの一手はこれではない。当時、タイトル保持者だった中村太地七段(32)の揮毫入り色紙はあったものの、斎藤八段のものがなかった。両者が雌雄を決する場において、片方の棋士だけ色紙が置いてあるのは不公平じゃないか。そんなことを考えた。

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 ここで小沢営業部長が「勝手に考えてひらめいた」のが、斎藤八段の師匠・畠山鎮八段(51)の色紙を置くこと。「代わりというわけではないですが、畠山先生の揮毫にお出ましいただいて」、中村VS斎藤という構図を作り上げたという。この気配り、当の斎藤八段も気がついたことが、後に将棋専門誌に取り上げられることになる。先述のとおり、タイトルを獲得した斎藤八段は対局翌日、王座として初の揮毫をこの場で書き、それは今も展示コーナーに師匠の色紙と並んでいる。

 ここでエピソードとしては、きれいな“即詰み”だが、対局同様に“感想戦”もあった。色紙とともに並んでいた斎藤八段の対局時の写真らしきもの。「5局目に勝った直後に、連盟の方が撮った写真です」と話したことから、開催会場にと贈られたものかと思いきや、「連盟(東京将棋会館)の1階に売店があるじゃないですか。そこで売っているのを、私が買ってきました」クリアファイルだと明かした。これには山口女流二段も「さては、かなりの将棋好きですね」とニヤリ。小沢営業部長は「売店が好きでして、いろいろ購入させていただいております。時々は、先生方ともすれ違っている風に思っておりますので、ぜひお見知りおきをお願いします」と語ると、このガチ勢ぶりに視聴者からも「この人、一晩でも話せる人」「趣味の世界」「本当に好きなのね将棋」と、共感する声が殺到した。

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 旅館の関係者が出演することは多数あれど、ここまでの完勝ぶりはめったにないこと。なお、このコレクションが並んだ展示コーナー、「掃除の担当は私になっております。出社して朝一で、掃除と消毒をしております」と、最後もまた決めた。もしこの場所で小沢営業部長を見かけたら、どの観光地にも引けを取らない濃厚な楽しい将棋談義を聞かせてもらえることだろう。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

将棋愛たっぷりの展示スペースを紹介
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