「“せん妄”が起きる患者さんも」「お看取りの場面で涙を流すことも」現役看護師が訴える医療現場の疲弊
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 病床はあっても人手が足りない…。医療崩壊への懸念が強まる中、北海道旭川市の病院に陸上自衛隊の医療支援チームが派遣されることになった。

 旭川赤十字病院の牧野憲一院長は「例えば(187人の感染者を出した)吉田病院であれば、通常の半分かそれ以下のスタッフしか残っていないのではないか。そういったところに応援が入るというのは大変心強いことだ」と話している。

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 各地で深刻度を増す医療現場。9日の『ABEMA Prime』では、大阪医労連看護師闘争委員長代理を務める看護師の米村晴美氏と、関東地方の専門病棟で重症呼吸器疾患の患者、ECMO使用患者の対応にあたる看護師の鈴木さん(仮名)に厳しい現実を聞いた。

■「看護師を集めるのは簡単なことではない」

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 米村さんのいる大阪府では、来週15日から重症者を受け入れる大阪コロナ重症センターの運用を開始する予定だ。ただ、看護師の数が足りなくなったことから、吉村知事が自衛隊派遣の要請を行っている。

 米村さんは「私の病院の場合、患者1人に対して看護師7人の体制を取っていたが、コロナの重症者の場合、1人に対して2名ということになるので、かなり増員が必要だ。そもそも日本は100床あたりの看護師数や医師数が海外に比べ非常に少ないので、新たに施設を作ったとしても、看護師を集めるのは簡単なことではない」と話す。

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 「特に今回は呼吸器を装着した患者のケアができる熟練のスキルを持った看護師が求められている。そういう方は5年目以上とか、中堅クラスといった、院内でも力のある看護師になってくるので、引き抜いてくるわけにもいかない。看護協会としても府全体の看護師養成には取り組んでいるが、そもそも人数が少ないところにこういう事態が起こったので、余力は全くないと思う」。

 すでに現場の看護師たちの疲労は限界に達しているようだ。最初の専門病棟ということで患者が集中した十三市民病院では、すでに30人以上の職員が退職したことも報じられている。

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 「マニュアルも無い中、各科に分かれていた看護師たちが手探りの状態で対応しなければならないことに困惑したと聞いている。ストレスはもちろん、ご家族が“コロナ差別”を受けることもあり、大変だったのではないか。また、他の医療機関でも会食は家族だけに限られている。8月、9月の落ち着いた時期には少しホッとできたのではないかと思うが、やはり10月以降は再び患者が増えているし、しばらくは長期の休みをとって旅行に、ということもできないのではないか。これまで私たちも組合として運動をしてきたが、やはり看護師そのものの数を増やすことが大切だと思う。今回のことで、医療の充実の必要性を皆さんも感じたのではないか」。

■「時には一緒に涙を流すこともある」

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 一方、鈴木さんは、「呼吸器やECMOの管理をさせていただいている時には、深く眠る鎮静剤を使っているので、患者さんは回復して呼吸器の管を抜き、しっかり覚醒された時に現実と向き合うことになる。とても衝撃を受けるし、ガウンやマスクをした状態の我々を見て、“宇宙人が入ってきた”と思い込んでしまう“せん妄”が起きたり、そこまででなくても不安が強くなったり、眠れなくなったりする。そうした患者さんをケアする大変さもある」と話す。

 さらに鈴木さんは、“看取り”の現実についても明かした。

 「我々の施設であれば、ご本人に加えてスマートフォンを通してご家族にも状況を見てもらいながら病状の説明をしている。ただ、最期のお看取りに関しては、手袋、ガウン、マスク、帽子をしていただいた上で我々が勤務するエリアに入っていただき、ガラス越しに面会をしていただいている。入院後、初めてのご面会がお看取り、というケースも少なくないので、非常な衝撃を受けているご家族に対応しつつ、時には一緒に涙を流すこともある」。

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 そんな中、手袋やガウンなど、国から支給されてきた物資も枯渇してきており、価格が上昇しつつある備品を医療機関が購入しなければいけない状況になってきているという。そして、やはり看護師たちの苦悩もピークに達しているようだ。

 「私の施設でも冠婚葬祭に参加することは基本的に禁止だし、親が手術をするというような場合でも面会に行くのを制限している。また、子どもさんの体調が優れない場合は休まざるを得ないが、復帰するためにはPCR検査を受けなければならない。家庭のことでも様々な苦悩があるのが現実だ。定期的にローテーションをしているし、精神的な負担に関してもフォローはしているが、長い人は4月から関わっている。実際にはストレス発散はなかなかできていないと思う。基本的には外出もできないし、買い物に行っても極力短時間で済ませている。私の場合も、定額給付金でペットを買い、家族の一員として楽しんでいる程度だ」。

■ケンコバ「我々にできることは、感染しないこと」

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「日本人は他国にくらべて自国の医療体制がどんなに整っているかを知らない。しかもこれだけ丁寧で親切なお医者さんや看護師さんがいる国はそうそうないと思う。それを当たり前になりすぎて、こういう時にもちゃんと感謝できないという問題があると思う。医療機関は仕事が増える一方、経営状況は悪化して、ボーナスが出なかったりするケースも出てきている。まず、いかに給料を増やすかというところにかかっているのではないか。実態経済が疲弊して、経済成長も難しくなっている一方で、金融経済は肥大している。エッセンシャルワーカーの重要性も指摘されているにも関わらず、そういう現場の人たちにはお金が回ってこないという異常な状況に陥っている。今後もコロナに限らずパンデミックや災害などが起きる中で、どこかで歯止めをかけ、逆回転させないと、社会が成立しなくなってしまう」とコメント。

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 また、大阪府出身のケンドーコバヤシは「お産に携わりたくて十三の病院に入ったのに…という方の話も聞いた。今の我々にできることは、感染しないこと。しつこいよ、わかってるよ、とおっしゃる方もいると思うが、感染防止のための努力をさらに徹底しなければならないと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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