22日、新型コロナウイルスによる全国死者数が累計3000人を超えた。累計感染者数は全国で20万人を超えるなど、年末を前に収束の糸口がつかめないままだ(データはANNまとめ ※感染者数は8月1日以降の空港検疫を含む)。

 また同日イギリスでも、1日の感染者数が3万6840人を超え、過去最多を記録。新型コロナウイルスの変異種も見つかった。イギリス政府の諮問機関の報告によると、既存の種類に比べ変異種は1.7倍の感染力を持つという。BBCは、イギリスからの入国を禁じている国は40カ国以上に増加したと報道。23日にはイギリスとフランスの国境封鎖が解除されたが、簡易検査の影響などがあり、物流でも混乱が続いている。

「感染者責めない対策を」新型コロナ、なぜ収束しない? 自粛警察、感染者いじめ…石戸諭氏が日本社会に警鐘
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 東京都港区の「みなと保健所」の松本加代所長は「封じ込め期ではない。感染の流行期に入っている」と話す。「流行期にあった重症化対策にシフトする時期だと思う」と方針の変更を訴えた。

 「ABEMAヒルズ」のコメンテーターで記者・ノンフィクションライターの石戸諭氏も「時期に応じて、対策を変えていかないといけない」とみなと保健所の松本所長に同意を示す。

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「先ほどのイギリスの数字と比べると、日本の感染者数はまだ少ないとも言えるし、現にそうした主張をする人もいる。しかし、今の日本の体制では限界がきているのは明らか。保健所も3月、4月に『この時期を乗り越えよう』と緊急時の仕事に切り替わったが、収まることなく、保健所のスタッフが何カ月も全力疾走している状況だ。どの仕事も、何ヶ月も緊急事態が続けば。人員的に限界がやってくる。みなと保健所の松本さんがおっしゃっていた“感染の流行期に見合った対策をすべき”はまったくその通り。時期に応じて、対策を変えていかないといけない」(以下、石戸諭氏)

 新型コロナ関連の取材も手がけている石戸氏。中でも“自粛警察”(※行政による自粛要請に応じない個人や店舗に、私的に取り締まりや一方的な攻撃を行う市民のこと)のYouTuberを取材した記事が印象に残っているという。

「感染者責めない対策を」新型コロナ、なぜ収束しない? 自粛警察、感染者いじめ…石戸諭氏が日本社会に警鐘
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「(取材した“自粛警察”のYouTuberは)礼儀正しい、おそらく会社でもしっかり仕事ができる人で、多くの人が『この人となら一緒に仕事がしたい』『会社の後輩にいたらいいな』と思うようなタイプの若者だった。YouTuberは非常に真面目で、だから不真面目な人たちが許せない。自分も感染症対策をこんなにやっているのに、やっていない人たちがいる現実が許せないのだと思った」

 “自粛警察”の活動を支持する人も存在する。石戸氏によると、取材したYouTuberのコメント欄には活動を応援する声が一定数あったと話す。

「実際に声をかけて、応援する人もいた。そのYouTuberは、(自粛要請に応じなかった)パチンコ屋の前に立ち、罵声を浴びせたが、あのときメディアでパチンコ屋に並ぶ人たちを見てむかっときた人、苛立ちを持った人は少なくない。むしろ多数派ではないかと思う。自粛警察は過激だが、言っていることはわからなくもないと感じている層がいる。その空気が“自粛警察”を支えているのだと思う」

 新型コロナ感染拡大が広がり、1年に近づいている今、社会も疲弊している。今後、どのような意識を持って対策していくべきなのだろうか。

「日本社会は感染することが悪だと思っている。(感染者に)『遊んでいるか、飲み会やっているんじゃないの?』『夜の街に行っているでしょ?』みたいな気持ちを持つ人は今でも多い。現実に飲み会は感染経路の一つだけど、そんな視線を投げかけられるとなれば、検査を受けにくいという人も出てくる。先日、新宿・歌舞伎町に取材に行った。ホストクラブの経営者と話したが、今の歌舞伎町では第二波の大流行は起きていないという。歌舞伎町が第二波の一つの起点になったことは間違いないが第三波では、第二波の繰り返しは起きていない。それはなぜか。ホストクラブの経営者は『歌舞伎町は感染者を責めない街だ。感染したら2週間休んで、また帰ってきてと声をかける。クビにもしないし、責めもしない。検査態勢も確立していて、ホストたちも自分の体調が悪いなと思ったら素直に検査を受ける』と言っていた。これなら自分がもし陽性だとしても、戻れる安心感がある」

「感染者責めない対策を」新型コロナ、なぜ収束しない? 自粛警察、感染者いじめ…石戸諭氏が日本社会に警鐘
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 また、日本ではコロナ感染者のいじめも問題になっている。感染した人が責められる空気感に石戸氏は警鐘を鳴らす。

「感染者いじめは、会社でも病院でも起きている。医療機関でさえも、感染した看護師を責めるといった、事例がないわけじゃない。これは悲しい現実で、こういうことが起きている限り『感染しても言いたくない』『検査を受けたくない』と思う人たちが増えてしまうのではないか。こんな社会では感染者は増えるばかりだと思う。私たちは例年流行していたインフルエンザはかかっても仕方ない、休んで戻ってきてと思ってきたはずだ。新型コロナはmだワクチンの効果も未知数で、特効薬がないといった未知の部分があるとはいえ、現状はただ感染者を過剰に責め立てている社会だろう。これでは積極的に検査をして一時的に隔離をする、という感染症対策の基本が機能しなくなってしまう」

 「感染者を責めない対策」を提示した石戸氏。今後、国がどのようなメッセージを発信していくか、対策が急がれている。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

【映像】コロナ禍 “自粛警察”YouTuberの素顔
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