ひろゆき氏「日本の価値観の方がズレている」森会長辞任、一連の騒動で見えてきた問題点
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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が12日、自身の発言の責任をとり、辞任を表明した。問題視された発言については「そういう(女性蔑視の)意図でものを言ったわけではない」とした上で、「多少意図的な報道があったと思う。私はこの組織委員会に入ってから、女性の皆さんをできるだけ支えてきた」と組織委員会での女性登用の実績を強調した。

【映像】正義感と叩く文化、ひろゆき氏の見解は

 今回の森氏の辞任は正解だったのだろうか。『ABEMA Prime』では、森氏の発言から辞任まで、一連の騒動で見えてきたものを考えた。

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■森氏の発言に波紋 日本の価値観は外国とずれている?


 今回の森氏の発言をめぐって離婚、男女問題、企業法務が専門の弁護士・倉持麟太郎氏は「問題のフェーズは3つある」と指摘する。

「1つ目は森さん自身の属人的な問題で、2つ目は組織の問題。僕も定款を見たが、オリンピック組織委員会では『首相が(後任を)任命できる』とは書いていないし、(現会長の)森さんが後継を指名できるとも書いていない。普通に『理事会で選ぶ』というルールがあるのに、それを無視してやっている組織に問題がある。3つ目は、日本社会自体の問題。“森的なるもの”の背後にある問題に対して、Twitterのハッシュタグでリベラル(自由主義者)の人たちが攻撃し合って、(森会長の辞任と)全然噛み合わない形ですれ違って戦い合っている。非常に社会を映し出している」

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 今回の発言をめぐっては「孫娘にもしかられた」と明かしている森氏。平石アナウンサーは「おおよそみんながそう(発言がNGだと)思っている中で言えば、批判しやすい状況にある。それを寄ってたかって批判したメディアの責任もある」と考えを示した。

 また、リディラバ代表の安部敏樹氏は自身のTwitterで森氏の後任の話題に触れた際、「いろいろな人から指摘や批判をいただいた。その中に『年齢差別をしているのではないか』という意見があった」という。「年齢差別と女性差別は、差別の構造として本質的に同じに並べられないものだと思う」と述べた上で、「差別は、本人の自己責任の範囲の外側で決まっている領域が、どれくらい大きいかで決まると思う。例えば障害者自立支援法でいえば、障害を持った人たちは自己責任で障害を持っているわけではない。むしろ社会が変わらなくてはいけない中で生まれているものが差別。女性に対する差別の話は歴史的に明らかで、年齢の差別は少し違う話だと思う」と語った。

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 前述の倉持氏も「日本は、先進民主主義国家で自由と平等があると思われているが、一皮むけば学校だって会社だってJOCのような組織構造になっているところはたくさんある。それをみんなわかっている」とコメント。「オリンピックも人種を越えると言っている(※五輪憲章では『差別禁止』『男女平等』が謳われている)が、ものすごい利権構造でできている。それをわかっていながら、なんとなくやっていた」と指摘し、番組にリモートで出演したひろゆき氏に「ぜひ聞きたいこと」として、日本が世界からどのように思われているのか見解を求めた。

 ひろゆき氏は「オリンピックは200以上の国と地域も参加するので、世界の人たちがどう考えるかが重要。決めるのはIOC(国際オリンピック委員会)の外国人たちが作っている委員会なので、外国の意見が重要になるのは当然」と話す。

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「(森氏の発言を)日本の論理で押し通すことができる、と思っていたのが間違い。それを知るいい機会だった。ただ、欧米の新聞やニュースでも事件によっては日本に関してひどい偏見で書くことも多い。尖ったものだけを持ってきて叩くことはよくないが、今回の件に関して見ると、英語圏やフランス語圏で流れているニュースは至極真っ当。日本の価値観の方が他の国からズレている」

■森氏の後任人事はどうなる? 組織委員会の“会長選出” 決め方の問題点


 当初、森氏は明確に辞任を否定していたが、IOCが9日になって森会長による女性をめぐる発言について「IOCの取り組みに反している」とコメント。4日には、森会長自身による謝罪会見を受け「問題は終わった」と声明を出していたが、後追いで森会長を突き放した形となった。

 後任候補としては11日、元Jリーグチェアマンの川淵三郎氏が浮上し、川淵氏も引き受ける意向を示していたが、12日に急遽辞退し、会長人事は白紙に。

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 平石アナウンサーは「(価値観が)ズレていることが判明したから、ズレていない人を据える。それが『女性や若い人だけでいいのか?』という疑問もあるような気がする」と指摘。

「本当にオリンピックを開催するかどうか、ギリギリの判断のすごく大事なところで、この役割をできる人は相当限られてくる。継続性があって適した人を選ぶこと、人事としてのメッセージの両方を加味して考えないといけない。開催までの残り(期間が)少ししかない中で、考えるところもあると思う」

「決め方も透明性がなければいけないが、足を引っ張って『簡単に決めさせるな』というのは少しやりすぎている。全くオリンピックに関わっていなかった外の人に任せるのは、あり得ないと思う。オリンピックを全く知らない人が一番上に出てきたところで、話ができない。そういう観点を全く無視してやっている感じが非常にズレている」

 平石アナウンサーの話を聞いたひろゆき氏は「その観点でいくと、森さんはむしろ向いていない」と断言。

「WHO(世界保健機関)は『事実に即して(開催を)判断してほしい』と言っている。アメリカのバイデン大統領も同じことを言っていて、アメリカは東京オリンピックに選手を派遣するかどうかすら、まだ決めていない。でも、森会長は事実に即してではなく『やるかやらないかじゃない、やるんだ』と、事実を無視していた。そんな人が会長だったら『選手に危険がない』と自分の国にも言えない。『こういう対処をしていて、安全だから来てくださいね』と言える人なら『じゃあうちの選手を送ります』になる。『事実なんて関係ない、俺はやるんだ』という国だと『いやいや、あの国まずいじゃん』となってしまう。外から見ると、むしろ森さんは実務に向いていなかったと思う」

■ハッシュタグ『#わきまえない女たち』が流行 ジェンダー平等を推進するためには?


 川淵氏後任を白紙に戻したのは官邸だという報道もあり、今までの日本とは違うオープンなやり方を菅総理が提案したのではないかとの見方もある。今後、日本におけるジェンダー平等はどのように推進されていくのだろうか。

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 倉持氏は「Twitterで声を挙げた『#わきまえない女たち』というハッシュタグが流行ったが、これが政治と連動しているのも問題だと思う」と語る。


「女性たちが声を挙げた次の日に、野党の女性議員たちが白い服で国会に行った。その行動を否定するわけではないが、自分たちのある種の支持者、要は上顧客になってしまっている。そういう人たちに対するメッセージにしかなっていない。本来の政治家は、本当に女性の地位を向上したい、権利へのアクセスを増やしたいと思うのであれば『法律でこういうものを作りましょう』『憲法でこれを規定しましょう』という話をしなければいけない。なのに、まずは白い服を着て『あなたたちを私はケアをしている、配慮している』というメッセージを送るだけ。真に女性の権利を制度として向上させたいのであれば、そういう行動にはならないのではないか。特定層の人たちを少しスカッとさせるような行動で終わってしまっている。そうなってしまうと、(ジェンダー平等の問題が)一般化しないのではないかと危惧している」

 森会長の辞任を機に事態は収束に向かうのだろうか。ジェンダー平等への理解の難しさや複雑性に流されずに、しっかりと丁寧に議論を重ねていく必要がありそうだ。
 
ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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