「何をしたって日本人扱いされない…」“ドレッドヘア”で職務質問は差別? 動画に波紋
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 警察官から職務質問を受ける様子を撮影した動画SNSで公開され、波紋が広がっている。職務質問を受けた男性は、日本人の母とバハマ人の父の間に生まれたZoさん(仮名)。横浜で生まれ育ち、国籍も日本だ。

 Zoさんがなぜ自分に職務質問をするのか聞いたところ、警察官は「言っていい? 言っていい? 私が『あっ』と思ったのは経験上ですよ」と回答。続けて「別にドレッドヘアが悪いわけではない。悪いわけではないですけど、そういうドレッドヘア、おしゃれな方、結構薬物を持っている方が私の経験上、今まで多かった」とZoさんに声をかけた理由を明かした。

【映像】Zoさんが職務質問を受ける様子(実際の動画)

 警察官が男性に職質する判断となったのが「ドレッドヘア」。また「警察官を気にしている様子も感じとれたから」だという。

Zoさん「経験上、髪型が似てるだけで……要は『だいたいこういう奴って持ってる』っていいたいんでしょ?」

警察官「持ってる可能性がある。お兄さん悪くないんですよ、悪くはないんだよ。私の経験則で一部の方でそういうものを持っている方がいた」

Zoさん「要は『こいつこんな髪してるからどうせ(薬物を)持ってるんだろうな』って思ったんでしょ」

 突然呼び止められた理由を尋ねたZoさんと警察官のやりとり。この後、警察官はZoさんのカバンをチェックしたが、何も見つからなかった。東京駅構内で撮影された職務質問の様子。動画は1月下旬に撮影されたものだが、Zoさんはによると「ここ半年で3回の職務質問を受けた」という。

■“ドレッドヘアで職質”は差別か? 男性の思い

「何をしたって日本人扱いされない…」“ドレッドヘア”で職務質問は差別? 動画に波紋
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 職質を受けている現状について、Zoさんは「気持ちよくはありませんよね。もともと自分は生まれ育ちも日本で、つい最近になってこう何度も止められて。止められたときも毎回警察官の答えもあやふやというか」と思いを吐露する。

 Zoさんは撮影した動画を人種差別の問題に取り組む団体「Japan for Black Lives」に提供。
Twitterで公開されると大きな反響を呼び、25万回以上も再生されている(※数字は2月16日時点のもの)。映像を見た人からは「見た目で判断するのは差別的である」と警察の対応について批判の声がある一方、「仕方ないのでは」という反応も寄せられている。

「見た目で判断してるのは当たり前だろ 他にどこで判断すんだよ」
「経験則で根拠があってやってんでしょ」
「後ろめたい事がないなら協力してやんなよ。すぐ終わるでしょ」

 警察官の経験を元に、挙動や見た目で判断するのは犯罪を未然に防ぐためには仕方がない、何もないなら協力すべきという意見。しかし、Zoさん本人にしてみれば許容できない事情もある。

「合計で職質されたのは4~5回なんですが、ここ半年で止められたのは3回。半年間で職質を3回。周囲の人の目も気になる職質が、身の潔白を証明しても何度も繰り返されている」

「見た目で止められてるって、本当は思いたくないんですけど、そういうのを経験すると無意識に警官がいたらジャケット脱いだり、これだとちょっと止められそうだなとか、もうちょっとちゃんとしとこうかなって(意識する)。それはそれでちょっとおかしくありませんか」

「何をしたって日本人扱いされない…」“ドレッドヘア”で職務質問は差別? 動画に波紋
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「なんで何もしていない自分がこんなに気にしないといけないのか。最近、警察官の前通るとすごい睨まれるので、避けようとしています」

 今回の件について、ネットでは「職質を受けたくなければドレッドヘアをやめるなど、身なりに気を付けるべきでは」という声も寄せられているが、Zoさんの動画を公開した「Japan for Black Lives」の代表を務める川原直実さんは「ドレッドヘアはカルチャーのひとつ」と指摘する。

「アフリカ系の人たちは、日本人と髪質が全然違う。髪質によくあった髪形っていうのが、ああいう風にまとめたり、ドレッドロックス、ブレイズで髪をまとめないと、どんどんアフロみたいに広がったりする。彼らの髪形はカルチャー、彼らの長年の生きてきた文化そのもの。それに対して『髪形そういうのしてるからいけないんだ』と言うのは、ものすごく失礼なこと」

「日本人がさらさらの髪に、無理やりおしゃれでドレッドにしているのと意味が違う。『その髪形をやめたらいい』というのは、日本人に置き換えたら着物を着て職務質問されたら『着物なんて着なきゃいい』と言うくらい、本当に失礼なことなので、言うべきじゃないと思います。カルチャーを否定することは絶対にいけない」

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 カルチャーのひとつである髪形が、日本で生きる上で息苦しくなる要因に――Zoさんはそんな葛藤を抱えて生きている。

「生まれも育ちも日本なので、逆に自分も日本人で、自分の国でこんなに緊張しなきゃいけないのかと思う。毎日毎日今後もこうなるんだろうなって心配はありますよ。今後、結婚してもじゃあ妻・子供の前で止められたりするのか」

 「好きでやっているファッションや髪形を変えなきゃいけないと思うか?」と聞くと、Zoさんは「考えたりしますけど、絶対しません」と断言した。

「もしこれで自分が髪を切ったら、逆に自分の人権をその警察官に明け渡しているという感じがする。人として、みんなの表現の仕方は誰だって自由なはずですよね」

 一方、Zoさん自身は日本の警察を信頼していて「バッシングしたいわけではない」と話す。動画について「ネガティブに見てほしいわけではない」とした上で、今回の問題を解決できれば、自分のような立場の人や外国人からも、さらに信頼を得られるのではないかと考えているのだ。

 「日本は好きか?」という質問には「前までははっきりと『はい』と言えましたけど、今は今後の状況によりますね」と答える。

「誰でもこういう経験が増えれば、純粋に『はい』と言いにくいんじゃないですか。けっこうはっきりとイメージがわきますもん、今後自分の人生がこの国でどうであるか。何をしたって結局自分は完全に日本人扱いされない。『そういう人は髪を切ればいい』『もっと々しい格好すればいい』と言う。それだけで本当に変わるんですかねって言いたい」

■ 見た目や属性ではなく「挙動や動作で判断を」

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 このニュースにBuzzFeed Japan副編集長の神庭亮介氏は「見た目や属性で職務質問をかけるのは間違っている」と話す。

「日本ではドレッドヘアが珍しいからかもしれないが、『髪型がドレッドだから職務質問した』というのは不当だ。警察官が『詐欺師はスーツを着ていることが多いので、スーツを着ているあなたに職務質問をしました』と言ったら、普通は『は?』と思うだろう。また『国会議員に公選法違反や贈収賄が多いから、議員会館の前で職務質問をします』と言われたら、国会議員も『何言ってんだ!』と怒ると思う。見た目や属性で狙い撃ちにして職務質問をするのはおかしい」

 あくまでも犯罪の抑止として「明らかに挙動不審な人や、様子がおかしい人に職務質問するのは理解できる。だが、公権力が個人の価値観や見た目にまで立ち入るべきではない」とした神庭氏。「ドレッドだろうが、ツーブロックだろうが、七三分けだろうが、髪型だけで人を判断するのは合理性に欠ける」と述べた。

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

【映像】ドレッドヘアで職質は差別? 男性の思い
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